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ぽっぷさん
2022年2月18日 14:35
『い書』を書いて、学習机の引き出しにしまった。もう『ひなたくん』には心がときめがなくなったけど、さいごのお別れを言ってきた。もちろん、それと気付かれないように。わたしは10年前にこの世界に生まれ落ちてきたらしいけれど、『わたし』はわたしの知らないところで『始まった』らしいけれど、わたしはわたしの思いとは関わりなくわたしを『続けていかなくちゃいけない』。どこまでもどこまでも『続けていか
2022年2月12日 23:26
日盛りの草原のただなかで、1つのミームが形成された。そのミームは、若く孤独だった。『救い』という幻日の代わりに、仲間を求めた。ミームは、コトバを持たなかった。ロジックを持たなかった。レトリックを凝らした音楽だけを持っていた。その音楽は新たな仲間に『救い』を与えた。彼らにとって、それは真実めいていた。結局のところ、彼らが本当に望んでいたことは、『救い』ではなく、どんな意
2022年2月11日 10:23
どこかへの旅行の帰り道、朝方、バスに乗って、四国のどこかに帰っていった。それは少し狭いマイクロバスだった。四国の奥地に入るごとに、乗客はまた1人減っていった。気がつけば、そのマイクロバスに乗っていたのは女の子と老人と、僕だけになっていた。僕の家の前に着いたが、隣の街の運動公園でテニスをしたかったので、そのままバスに乗っていることにした。眠った。長いあいだ眠った。気が
2022年2月2日 23:32
鉛玉が放たれた。それは地を這う鳥にすら殆ど当たらなかった。そのため射手たちは『魔弾』を望んだ。そうして『弾丸』は創られた。弾丸が放たれた。それはオーストリアの王子様を撃ち抜いた。それは何かの意思表示だった。それは同時に侵略の口実となった。弾丸が放たれた。それも数多くの銃口から放たれた。それは銃口を指揮する者の情熱だった。その情熱は握り締められた何かを量産した。弾丸が放
2022年1月28日 21:35
ある晴れた日の朝に、女の子が眠い目を擦りながら牛乳と卵が溶け合った名前のない液体に、昨日のセックスで消費したカロリーと同じ量の砂糖を加えている。彼女はボールを湯煎にかけた後、男という生き物の身勝手さに苛立ちながら腕をシャカシャカさせている。カラメルをこれ以上ない強火で煮立てたら、甘ったるい液体の底に流し込む。入れ忘れていたバニラエッセンスを垂らしてから、全く当てにならな
2022年1月6日 00:36
コインランドリーにあるドラム式洗濯機の中で女の衣服が乾いていくシンプルなデザインのネグリジェが濃厚なタバコの匂いをとどめながら春の草原のような手触りを取り戻しているイタリア製のまだ新しいパンティがベッドの上のまどろみの様な赤色から締められた子ヒツジから流れる赤色へ変わりつつある着古したココ・シャネルのワンピースから無数の毛玉ができていくもうじき華美な服として破綻するのだ
2021年12月22日 22:47
春にだけ現れる沼に足をすくわれた足掻いてはみたものの、冷たく、そしてどこか温かな闇の中に引き摺り込まれていく気がつけば、辺りは白い景色になっていた。この白さの中で私は、私という意識とともにいつか朽ち果てるだろう。私という意味が分からなくなってしまうまでに私は連れ去られたいどこか冷たく、そして温かな闇の中に。おしまい。機械学習の分野では新しいアルゴリズムの開発が盛んに行
2021年12月8日 01:23
タナトスは、巣食い始めた。お前の細胞に。細胞によって観せられた意識に。お前は段々と、睡眠薬を噛み締めながら右手に取ったナイフを首の左側に突き立てずにはいられない衝動に駆られ始める。お前の右腕は躊躇しているが、タナトスは容赦なく『死』をお前の首に刻みつけようとする。やがて、お前の首の左から赤い淀みが流れ始めた。お前が自身のタナトスを喪失する様を感じながら。おしまい。
2021年12月1日 00:47
ヒトが暗闇の中を壁に沿って歩き始めたが、壁の中の『扉』は決して使われることがない暗闇の中で育ったヒトの性欲が高まったが、入るべき『穴』や、入れるべき『棒』を知らないヒトは仕方なく地の続く限り歩いていたが、そのうち『崖』から落ちて、死んだおしまい。パンダの雄には、一年のうちで発情期が36時間くらいしかない。貴重な発情期間を活かすため、『パンダ用のポルノ』を雄のパンダに見せることで
2021年11月19日 21:58
球体が現れたその球体は、数ある球体の1つとしてヒトのカタチをなした球体だった"それ"は、少しずつ母乳を取り込みながら少しずつ破綻しながら3ヶ月ごとにすっかり別の粒子で構成された"それ"になる"それ"は次第に"私"という意識を持ち始めた私という意識は、私でなくなりながら、別の私が形成されていくそんな自己組織化された私の中で私という現象が破綻しはじめるおしまい。
2021年11月15日 23:29
眼の奥から、網膜の裏側から、形而上学的な紐が出てくる。それも1本ではない。何本も複雑に絡まり合いながら、視線の先に延びていく。それらの生々しい紐のうねりは、手のひらにある平面上の形而上学的な肉体を知覚するためその平面に、びたりと張り付いた。その紐たちが平面をいくら弄ったところで、その肉体を触覚することはできない。その肉体を嗅覚することはできない。その肉体を味覚するこ
2021年11月14日 22:38
私なんていないわ。竹からヒトが、生まれてくるわけがないじゃない。私なんているわけがないのだけれど、私に言い寄ってくるオトコどもには、無理難題を言ってやったわ。どこぞの器はニセモノで、ナニかの皮は燃えてしまって、金銀で作らせた枝でダレかが破産して、あとの2人は恋煩いでカラダを病んでしまったわ。美しいオンナというだけで、見たこともないオンナというだけで、翁の妄言の中で生ま
2021年11月8日 22:28
朝霧が生まれる土の中から雨の中から夜の青から私の影から朝霧は歌う風のために雲のために春のために咎のために私の咎は、もはや、朝霧の歌を聴いていたくはないその歌から少しでも遠ざかるために私の影が1枚、また1枚と、私の咎を覆うそれを覆ったって、私がその歌から遠ざかるわけではないのだけれどおしまい。最近、キャベツがおいしくなってきましたね❣️今日も不可避
2021年10月14日 00:26
カメラが泳いでいる、エネルギーを消費しながら。大通りの人混みのなかで、ポップなTシャツたちを追いかける。ポップなTシャツたちは言う「あたしなんてポップとは程遠いわ/おれの夢はポップスターになることだっんだ」やがてTシャツたちは燃えることになる、皮肉にもポップに。カメラはその姿を切り取りながら思案する、自分にはあと「何ポップ」あるのだろうかと。カメラは泳ぎながら、ポップのかけらを