タナトスの喪失

タナトスは、巣食い始めた。
お前の細胞に。
細胞によって観せられた意識に。

お前は段々と、
睡眠薬を噛み締めながら
右手に取ったナイフを首の左側に
突き立てずにはいられない衝動に
駆られ始める。

お前の右腕は躊躇しているが、
タナトスは容赦なく『死』をお前の首に
刻みつけようとする。

やがて、お前の首の左から赤い淀みが流れ始めた。
お前が自身のタナトスを喪失する様を感じながら。

おしまい。
"自死"という現象・モチーフは、細胞からヒトの集団まで様々なスケールで発生しているけれど、個体以上のスケールで、その発生にどんな意味があるのかは不思議ですよね。

生物はなんらかの生存に適した形質を後代に遺伝させることで生き残ってきたはずなんだけど、"タナトス"というのは個体の生存そのものを脅かす形質です。

直感的に、タナトス自体が選択圧となって、希死念慮を持ちやすい遺伝的特徴が集団から淘汰されるのかなって思うけれど、実社会を見るとそうでも無さそうだよね。(もっとも、自殺者の割合はヒトという種の保存の観点から言えば十分に小さいはずなのだけれど。また、遺伝的特徴だけでは形質は決まらない。)

もしかして、タナトスが個体集団を最適化するための仕組みだったりするのかな??
もしそうだとしたら、恐ろしいよね。

今日も、健やかな1日を‼️

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