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#10 驚異の野原(ラングストン・ヒューズ)/よもぎのジェノベーゼ

春になって庭にいろいろ植えたので、起きたらまず庭に出ている。
いわゆる「雑草」はこまめに抜いているのだけれど、
よもぎの生えること生えること!
来る朝ごとに「おっ?」と声をあげてしまう。



生命の驚き


あまりにも伸び伸び、気持ちよさそうに生えているので苦笑しながら、
ラングストン・ヒューズのある詩を思い出す。

銀の雨の降る時には
大地は
また 新しい生命をのばし
緑の草は萌え
花は その頭をもたげ
そして 平原のいたるところに驚異がひろがる
生命の
生命の
生命の!
                「銀の雨の降る時には」 (一部抜粋)
                        『驚異の野原』所収

ラングストン・ヒューズ (1902-1967)はアメリカ合衆国ミズーリ州生まれ。彼はアフリカン・アメリカンであり、ブルース的な叫びを感じる詩が多い。(「どっかへ走っていく汽車の75セントぶんの切手をくだせえってんだ」『75セントのブルース』)



この詩集には、その文脈からは切り離された、草笛のような素朴なきれいさがある。でもきれいさだけではない、ほんの少しの苦さがある。

別の詩にはこう。

おお 驚異の野原よ
そこから
星が生まれ
そして 月が 太陽が
そして 私までが生まれてくる         
             「誕生」より一部抜粋(『驚異の野原』所収)

「驚異の野原」は、新しい生命を噴出させる。「私までが」と言うところに地平の広がりと独特の悲哀がある。


よもぎのジェノベーゼの作りかた

きょうも「驚異の野原」こと、うちの小さな庭の手入れをする。

やわらかい新芽だけをつんで、さてどうしようかと考え、よもぎのジェノベーゼ風ソースを作ることにした。

なんともいえないほろ苦さ!そして春の生命の勢いも感じるソースだ。
材料とミキサー(ブレンダー)があればすぐにできる。




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材料
・よもぎ(ワンちゃん猫さんの通らない場所を選んでください) 
・オリーブオイル  よもぎと同量
・にんにく ひとかけ
・塩
・ナッツ類(くるみ・松の実・アーモンドなど)
※保存のため、パルメザンチーズは加えません。食べるときに加えてください

作りかた
①よもぎを丁寧に洗って葉っぱだけにする。
②よもぎをさっとゆがき、水気をしぼる。
③すべての材料をミキサーorブレンダーに入れ、撹拌する。味見して塩が足りなければ足す。

パスタにするなら、ベーコンを炒めてソースをからめたところに、パスタの茹で汁をすこし加えて乳化させ、パスタを投入。パルメザンチーズをからめる。パスタはオレキエッテとか、ファルファッレもいいかも。
じゃがいもをふかして絡めても。

よもぎ75gで、だいたい四人分のパスタソースが作れます。


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バジルのジェノベーゼよりも穏やかな味で、香り高く、おいしい。

余談。お手紙を添えてあのひとに。


ソースは一人分ずつ袋詰して、手紙とラングストン・ヒューズの詩をそえて切手を貼って送った。50g以内(ちょうど一人分)なら、92円切手で送れる。

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「身のまわりの季節のものを手紙サイズの封筒で送りあう」というアート系のオトナたちのちょっとした遊びに混ぜてもらっていて、たとえば庭の柚子の砂糖漬け(その名も『名残のピール』)などをいただく。

「驚異の野原のジェノベーゼ」、喜んでいただけたようで、

"パンに塗って食べました。パスタのために半分残そうと思ったのに、あんまりにもおいしくて我慢できず、ぜんぶパンに塗って食べちゃった"とのメッセージをちょうだいした。

そうか、パンに塗るのもありですね。

今日も元気なよもぎたち。また作ろうかな。

作者とおすすめの本

◆作者についての私的解説
ラングストン・ヒューズ (1902-1967)アメリカ合衆国ミズーリ州生れ。
『驚異の野原』訳者あとがきには「アメリカ民主主義の矛盾をその身に背負って生きるアメリカ黒人の生活体験」、「過酷な人種差別に裏打ちされた」やるせなさ、恨み、皮肉をこめたメランコリックな叙情・・・などなど、彼の人種のルーツにかこつけた詩の特徴が記されているけれども、チョットしっくりこない。もっと普遍的な「人間」が歌われている気がする。

あまりにも素朴な、だれも歌ってこなかったドライな悲しみ。草原の風。疾走する鉄道。そんな感じだ(どんな感じだ)。独特の詩情。
昼寝して、まだ明るい夕方に目がさめて、ウイスキーをなめながらこの詩集めくったりすると、なんか泣いちゃう。なぜだろう。好きな本です。

◆おすすめの本
・『驚異の野原』(斉藤忠利訳)国文社
※ごめんなさい、入手困難のようです・・・ 

・『ラングストン・ヒューズ詩集』(木島始訳)思潮社
木島始の疾走感のある訳、好き。


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