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2023年6月の記事一覧
獣たちの謳歌 獣の生き方その九~十一
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獣の生き方その九
「爪 その一」
堅い甲羅はないし
逃げ足だって速くない
天敵はうろうろしているし
いつ襲われるか分からない
生きる―て怖いんだよ
でも襲われたら
持っているのは長く鋭い爪ぐらいしかないから
立ち上がって戦うのさ
命を賭けてね
武器なんてそれしかなくて
爪なんてさ―誰にだってあるだろう?
そんなものを武器と呼べるか分からないけれど
それしか持ってないから
獣たちの謳歌 獣の生き方その六~八
獣の生き方その六「片足立ちの苦悩」
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足が枝みたいに細いの
だから座ってらんないのね
一度座ったらもう立つのが大変で
それに身体すぐ冷えちゃうからさ
片足で立ってんのさ
疲れたらもう片っぽの足で
鳥たちが口々に言っては飛び立っていく
「疲れないの?」
「楽しいの?」
「修行なの? それ」
いやいや 違うんですよ
片足で立つのは
ちゃんと工夫してるんです
生きていくための工夫
獣たちの謳歌 獣の生き方その五
獣の生き方その五「足か手か」
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手の方が足より長かったなら
それはもう―バランスが取れなくて
歩きにくいことだろう
しかし木の上で移動するのにこれほどの武器はない
他の動物たちがとてもやりにくそうだからさ
手の方が長ければこんなことにはならないのに…なんて思うのさ
でもこうやって生きていけるのも
木があって 林があって 森があるからなんだよね
住める場所があるから―できることな
獣たちの謳歌 獣の生き方その四
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獣の生き方その四「前足と後ろ足」
前足と後ろ足は長さが違うからさ
前に歩けないのです
だから跳ねるようしか歩けないんだよね
いや―歩いてはいないのだけれど
スキップではありません
躍っているのでもありません
ぴょんぴょんと跳んでいくしかない
ただの移動です
見る人たちは仰天していくんだけど
驚かれてもなぁ…
これまでも こうだったし
これからも こうだろうし
みんなと
獣たちの謳歌 獣の生き方その二、その三
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獣の生き方その二
「補うということ」
体が上手く動かないなら
動くところで補えばいいんだ
手が使えないなら足を使えばいいし
首が回らないなら目を回しちゃえばいいんだ
短所も長所もあるがまま
大事なことはそれをどう使うかだよ
それだけでも充分欲しいものは得られるよ
Prefatory note
普通に面白い
between
体が上手く動かないなら
獣たちの謳歌 獣の生き方その一
「―世界への問い―」
―今―
銀河が何回巡った時だろう
星が幾つ生まれた時だろう
命が生まれて呼吸を何回した時だろう
心臓が何回鼓動した時だろう
地球が生また時
大地は煌々と燃え上がり
何万年と降り注ぐ雨が大地を固め 海を創る
海から始まった一繋ぎの壮大な物語
海に生まれた命は
どこから来たのだろう
機械よりも精巧で 鉄よりも脆く
磐よりも逞しく 自然のようにうねるそれは
宇宙から訪れ
獣たちの謳歌 「世界への問い」
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「―世界への問い―」
―今―
それは銀河が何回巡った時だろう
それは星が幾つ生まれた時だろう
命が生まれて何回呼吸をした時だろう
そして何回心臓が鼓動した時だろう
今―それは―
―百数十億と地球が回った時
その時―生まれたのは地球―
地球が生またその時
それは地獄だっただろう
何故ならそこに生命は存在し得ない場所だから
大地は煌々と燃え上がり
何万年と降り注ぐ雨が大地を
大自然の詩 「神話」
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「神話」
大自然の変化はまさしく世界そのものの変化である
その移ろいに恐れ戦き あるいは畏敬崇拝し その力に神の力を見出したのかもしれない
この地球において創造主を神とするなら 確かに大自然は神かもしれない
その強大な力は気候 生態系 ありとあらゆる生命の生存条件を支配している
その力を悪魔と呼び精霊と崇め 大自然そのものと生きることを選んだのかもしれない
彼らは自然を神という
大自然の詩 「謳歌」
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「山―氷河」
大陸を走るそれは屋根
空から見たそれは巨大な稲妻の塊が奔っているかのようだ
空に聳えるがために雲を衝き雪を抱き
白き装飾は山腹を下り氷河となって斜面を削り大地を創る
海に押し寄せたそれは氷の山脈―そして大地のようだ
夕日に紅に染まる山の眼下に 朝陽に青く輝く氷を抱えて
大地は―海は―そこに広がる
海―陸―そして国の―境を―大自然は縦横無尽に駆け 横たえ聳える
そこに
大自然の詩 「胎動」ver3
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「磐」
石
その音を聞いて人は何を思い描くだろうか
ある人は灰色の何の変哲もない石ころを思い描くかもしれない
またある人はエメラルドや紅に輝く原石を夢見るかもしれない
その石が黄色に緑にそして赤の入り混じった色彩不明の景観となって
岩山となっている姿を思う人は少ないだろう
石の色を誰が一色と決めたのだろう
太陽が一つと誰が決めた
水が青色だと誰が決めた
雲が純白だと誰が
大自然の詩 「息吹」ver2
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「土地」
土地は人の生活になくてはならないもの
それを生き物が支えることがある
珊瑚礁
人々は土地のあるところで懸命に息繋ぐ
それは命の営みの尊さを思わせる
それは自然への敬意を感じるからだろうか
生きるという営みにその逞しさを見るからだろうか
それは背中で語るのだ
風のように静かに しかし雨のように雄弁に
人々の文化とは自然と共にあるということを
海底の火山の力が
大自然の詩 「大地」
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大地は常に風と水によってその姿を刻々と変え続けている
天へと貫く山ですら例外ではない
そして地下からは灼熱の奔流する力がその形を表し続けている
大地は広大な力強さを湛えているが
奥底に秘められた計り知れない力によっていとももたやすく揺らぎ 罅割れ 沈むだろう
あるいは止まったままの時の中で流れる大地のうねりがそれに流線型を描き出し
大地は時を止めて波のようにうねり 風のように流れ
大自然の詩 「神隠し」
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一面の田園が陽に金色に広がる長閑な風景は
夜になると一変して灯火無き荒野へと変貌する
光無き闇に人は恐怖して文明の力を持って抗ったのかもしれない
一度闇の中に迷い込んだが最後
帰る者無き蝉の声
それは自然への畏怖か
それとも消えた者達の怨念か
鬼火は青く光り
そして妖艶な怪談が霧のように立ち上る
得体知れ無き闇は深く
それは今もなお
日没とともに夜を舞い上がる
冷たい月のように
大自然の詩 「静けさに包まれて」
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紅葉が萌え
緑葉歌い
黄葉が彩る森に
空と森の傍らに佇む湖畔の
中を歩けば
葉と陽が手を取り合い
風を舞い上がらせ
その中に佇む樹を見るだろう
その中に立ってみる
急がなくていい
焦らなくていい
そしてじっと待っていればいい
耳を澄ませてみるといい
その中に鳥の鳴く唄と
虫の求愛する羽音の旋律と
獣の高鳴る鼓動と
そして森の静かな息遣いが
聞こえるだろう
探さなくていいの