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読書感想文 | 香川愛生 | 職業、女流棋士


(1) 将棋において、男性が優位なのは何故か?


 藤井聡太さんの話題で持ちきりの将棋界。私自身は将棋について詳しく分かりませんが、興味がありました。
 将棋そのものというより、スポーツと異なり、将棋という競技において、男女を分ける必要があるのかということ。

 女流棋士である香川愛生さんは、著書の中で次のように述べています。

 前者(「棋士と女流棋士、どちらが強いのか?」という問い)についても、現在に限っていえば男性のほうが実績、実力ともにはるかに優位にあると言えるでしょう。こうした差を「男女の能力差」として脳科学的な側面から分析する見方もありますが、私の見解とは異なるので本著では割愛いたします。

香川愛生「職業、女流棋士」
マイナビ新書、p16

  脳科学的に男性が優位だという意見に対して香川さんは触れていませんが、おそらく、脳科学的に男性が優位だとは考えていないようです

 では、なぜ男性のほうが優位に立っているのか?、という疑問に対して、香川さんは脳とカラダの能力差以外の要因を2つ挙げています。

 まず1つ目は、歴史の違い。棋士が400年前に発足したのにたいして、"女流棋士"の発足は1974年、つまり、まだ40数年の歴史があるに過ぎないこと。
 2つ目は、競技人口の男女差が著しいこと。現役棋士が224名いるのに対して、女流棋士はわずか60名しかいない。国内の将棋競技人口は700万人だが、女性の比率はその1%にも満たない(前掲書p20)。

 現在の棋士(男性)の優位は、歴史と競技人口に占める女性の割合の低さに依るところが大きいと、香川さんは考えています。


(2) 教養・趣味


 この本の中で私が最も関心をもったのは、第7章の「教養・趣味」という章。
将棋が強い人は、当然将棋の研究に力を注ぎますが、将棋以外では、どのようなことに興味を持っているのか?

 いくつか書かれていますが、面白いのは、棋士は凝り性の人が多く、ゲーム全般をやり込む人が多いということ。
 英語やフランス語など語学に関心をもつ人もいる。
 また、棋士には読書家が多いようです。香川さん自身の愛読書は、『シャーロック・ホームズ』のシリーズ。ホームズの魅力を語らせたら、それだけで一冊の本が書けるくらいお好きだとか。

 その他には、映画鑑賞、旅行すること、着物などの日本の伝統、剣道や弓道、競技かるたなどにも関心がある。

 棋士・女流棋士という職業には、幅広い知識が必要なようです。


(3) まだ男女平等とはいかない部分もある


 その他の点で印象深かったのは、将棋界においても、男女平等が求められているということ。
 例えば、仮に、男女の区別をなくしてタイトル戦を行う場合、女流棋士ならば、出産とタイトル戦が重なる事態も起こり得ます。そのようなとき、どのような対応をするのかということは考えておかねばならない課題です。

 この本には書いていませんが、女性で藤井聡太さんのような人が現れたとしたら、タイトルをすべて防衛するには休む暇はない。出産・育児と、タイトル戦の開催時期など、事前にルールを定めておく必要があるでしょう。



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