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「イワシの埋葬 El ENTIERRO DE LA SARDINA」という曲と詩について
こんにちは。
葬送のオーケストラ「墓の魚 PEZ DE TUMBA」
の作曲家です♪
本日は
私の作曲した作品による
(「墓の魚」オケの)新作動画の紹介を
していきたいと思います♪
その新作動画はこちら
↓↓↓
【イワシの埋葬 ENTIERRO DE LA SARDINA】
さて、スペイン各地には、実際に
「イワシの埋葬 ENTIERRO DE LA SARDINA」
というお祭りがありまして、
中でもムルシア州のものが
世界的にも有名なのです。
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葬列のパロディの様な形式で行われる
この独特なお祭りは、
キリスト教の
灰の水曜日(FERIA QUARTA CINERUM)
と関連があります。
なぜ[イワシの埋葬]が生まれたか?
に関しては、
日本の納豆の起源の逸話と同様に
曖昧で諸説あり、
ハッキリしていません。
ただ、やはり[埋葬]という言葉が
キーワードで、
【過去を埋葬し、
新たに社会を生き返らせる儀式】
という意味合いを
強く含んでいる様です。
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[漁師町なので、
日頃消費している鰯達への供養である・・]
や、
[カルロス3世に仕えた大臣
Jerónimo Grimaldi
のあだ名が[イワシ]だった為である・・]
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や、
[四旬節の肉食禁止期間の為に
用意した大量の鰯が、
到着する頃には腐っていて、
埋葬したエピソードから来ている・・]
など、
とにかく、
このお祭りの起源には
様々な説があります。
いずれにせよ、
この世界の
[キリスト教的な虚しさ(VANITAS)]
を表現する時に、
[埋葬]という言葉を使うのが
文学的なスペインらしさであり、
辛辣な風刺を得意とする国らしい
お祭りだと感じます。
スペインには過去に
[トマトの葬儀 ENTIERRO DEL TOMATE]
というデモがあったり、
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スペイン・ガリシア地方には
[ムール貝の埋葬 O enterro domexilón]
というお祭りも存在しますが、
こういった表現の発想に
スペイン文学的なものを感じる訳です。
↓↓↓
https://www.apartamentosriadealdan.com/el-entierro-del-mejillon/
さらに
スペインでは、
とても有名な作家の一人である
レオポルド・アラス(クラリン)Leopoldo Alasが
「鰯の埋葬」という題名の
短編小説を書いていて、
[イワシの埋葬]の意味は、
そこでさらに文学的に洗練され、
昇華される事になりました。
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【我々が年老い、
人生の中で喪失するもの・・
サウダーデの様な疲労したあらゆるもの・・
白髪の様に老いた
銀色の魚の骸を埋葬するのが、
[鰯の埋葬]であろう・・】
とクラリンは語るのです。
また、ゴヤも
[鰯の埋葬]の祭りの様子を
絵画として描いています。
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ここでも、この祭りは不気味に描かれ、
下描きの段階では
絵の中の旗に
死(MORTUS)という文字が書かれていた・・
など、
やはり[イワシの埋葬]と
メメントモリ(MEMENTO MORI)
の関連性が示されるのです。
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チリ(スペイン語圏)の映画監督である
ホドロフスキーの作品
[リアリティのダンス La danza de la realidad]
の中にも
[イワシの埋葬]を
彷彿とさせる様な表現があります。
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この映画には
銀色に顔を塗りたくった道化(ハチョネロス)と
打ち上げられた大量のイワシの群れ(死)と
それに喜ぶ人々(生)
の場面があります。
【誰かの喜びは、誰かの悲しみであり、
世界の表裏は常に
同一(トラジ・コメディTragi comedy)
として循環する・・】
とホドロフスキーは語っています。
この様に、スペインの血統を持つ
様々な人々の中で、
この祭りの存在は消化され、
魂の中に
[澱]として沈殿しています。
この
埋葬(死)、
キリスト(純白)が
十字架の上で罪人(黒)の様に死んだ事、
[悲劇と喜劇は同じである]とする
トラジ・コメディ(Tragi comedy)、
これらは、
スペイン作品の中で
何度も繰り返されるお家芸である・・
という事を憶えておいて下さい。
さて、
私は、自分が作曲したこの歌曲に、
以下の様な短い詩
(こちらも私の自作詩です)
を添えました。
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【人生という密葬・・
灰の水曜日・・
日常の中で陳列される死んだ鰯・・
この世界の虚しさから目を覆い、
虚しさへ向かっていく私達・・
そういうフラメンコ・・
というより、
フラメンコというものが
元来はそういうものである事について・・
牛の黒い目の中に住むロデシア眼虫・・
サンタ・アナ・デ・ロス・オルノスの
墓地に転がる骨達・・
スペインが内包する乾き・・
古い疫病による死者達の埋葬・・
朽ちたギターラの奏でる
至って個人的な葬儀と供養・・】
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そして、
私がこの歌曲を作曲をした時、
私は、フラメンコの
シギリージャ(Siguiriya)という形式の旋律を
パラフレーズとして
曲中に紛れ込ませる事を思いつきました。
シギリージャは、
フラメンコの中でも重厚な曲と言われ、
ジプシー(ロマ)達の歌を起源とします。
複雑な変拍子で構成される為、
[頭の無いリズムを持つ曲]
とも言われ、
まさにそれは[鰯の埋葬]の
生と死の循環の様に
繰り返されるのです。
しかし、そのシギリージャの旋律は
私の作曲によって、
全く別のJAZZ的な肉塊に変化するのですが(笑)
という訳で、以下に、
私が書いた
「イワシの埋葬」
のテキスト(歌詞)本文を掲載します。
↓↓↓
◆◆
【イワシの埋葬 ENTIERRO DE LA SARDINA】
黒実 音子
◆◆
1
木々の騒めき、
夜と死の匂い、
孤独な夜、
棺桶の朽ちる音・・
骨の啜り泣き、
苔むした髑髏、
湿った静寂 [アルマ!!]
これが答え・・・
これが俺達の人生の答え!!
蛆共よ、傲るな!!
俺達の指が健在だった頃、
弾いていたギタラの旋律よりも
美しく動けないのならば・・
朽ちたビウエラ、
腐敗したマテ貝、
悠久の音、
土虫の囁き・・
倒れた十字架、
カビた聖書、
虚無の悲鳴・・
これが答え・・・
これが俺達の人生の答え!!
カニ共よ、傲るな!!
俺達の喉が健在だった頃、
歌っていたカンテの響きよりも
遠くに行けないのならば・・
打ち捨てられた屍達の
ああ、歌う、
墓場のシギリージャ
2
ギタラの響き、
朽ちたイワシの匂い、
古きマラガの過去の栄光・・
這い回るカラコル、
売られた女、
割れたバンドゥジャ [パサド!!]
これが答え・・・
これが栄光の人生の答え・・
犬共よ、傲るな!!
俺達の足が健在だった頃、
踊っていたパソで
優雅に踊れないのならば・・
生きる事、死ぬ事が、
全て虫の供物。
栄華も、虚栄も、優しさも
虚しい、暗い穴の中へ・・
友よ!!
虚ろで、浅ましい夜は
歌え、墓場のシギリージャ。
例え、全て幻だとしても、
ああ それでも
主の信仰に縋り付く為に!!
◆◆
いかがでしたでしょうか?
本日は、私の
新作の動画を紹介いたしました。
という訳で、
そんな作品を日本で制作していく
私や、私のオーケストラ
墓場と、博物誌の
「墓の魚」を
これからも
よろしくお願いいたします~。
【1000視聴突破ありがとうございます♪】
「墓の魚」のラテン詩と、
メメントモリ曲の融合した
配信動画
「死んだ珪藻とマキシロポーダのミサ」
こちらで公開中です↓↓↓
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