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panda1
2021年5月16日 23:54
「皆んな注目」僕の一声で数十もの人の目が一斉に僕へと向けられる。喉の中を巨大な何かがごくりと口の中までやってくる。視界がキュッと狭まってしまう。僕は人前で何かする事はきっとむいてないんだろうな。そんな僕が何で先生になんかになったのだろう。そう言えば教師塾の先生は、陰気な奴ほど目指すものって言っていた事を思い出す。心の中でせせら笑いながらハリのある声を出してみる。「皆んな、一学期の学
2021年5月10日 22:01
階段をあっという間に駆け上がった。廊下からは教室を飛び出す煩声。蝉の声より子どもの声の方が耳障りだと先生だけが知る事実。一つ深呼吸を置く。今までの僕は、ここで心が折れていた。しかし、それも当然の事であった。前の僕は全くの無防備なまま、教室へと入っていたのだから。もし動物園でライオンの檻に私服の男が入っていけば結果など目に見えていよう。教室に入るまで何も頭を働かせてこなかった自分自身が悪かった事
2021年5月8日 23:39
地天叉は朝を颯爽と駆ける。知らぬ児童の群れを飛び越え、蝉の歌声にベルを合わせる。どんどん地天叉は風に乗って速度を上げる。そのままアスファルトに咲くたんぽぽをひらりと躱し、前方の電車に向かい挨拶を交わす。僕は何一つ怖くはない目線の向こうにセブンイレブンが見えてきた。僕は目的地への到着を予感し、地天叉の二本の角を引く。静かに降り立つコンクリートの大地。集団登校十分前の静かな十字路。道の先
2021年4月28日 20:00
陽光に顔を刺され目が覚めた。微かな偏頭痛を伴う気怠い朝。土曜日だと言うのに七時前きっちりに起きてしまう体。大学時代、どれくらい寝坊するかがステータスだと思っていた頃が懐かしい。ここ数ヶ月で十分に社会人として毒されてしまったと思う。重い布団を足で捲り、顔にかかる煩わしさを遮断しようと窓辺に向かう。すると、向かう途中、光の線上に置かれた自由帳が目に入った。(そういえば、こんな事書いていた
2021年4月23日 16:55
自転車を漕ぐ足は家から最寄りのコンビニに向かう。何だか眠れない気がした僕は酒を買いに行く。すると、コンビニすぐ横の店明かりが目に入った。懐かしいな。先生になりたての頃、よく足を運んでいた文具店である。 気づけば店に吸い寄せられる様にガラス戸に手をかけていた。店の中には懐かしい教具が並ぶ。昔はこれを見るだけで何故か心が踊っていた。しかし、今の僕にはただの古臭いガラクタに感じてしまう。漫ろに歩く僕
2021年4月22日 19:02
コツンコツン 薄暗い階段。手すりだけを頼りに僕は降りてゆく。歩く足取は本館から対面にある南校舎へと向かう。あっという間の職員室。朝の逆路とは大違いだ。僕はこじんまりと職員室の扉を開く。古い材質の扉は必要以上の音を立てて僕の来訪を知らせた。 カタカタカタ 職員室では腰を曲げた先生達がパソコンに齧り付いている。煩忙な先生達は僕を横目に見るだけでまた画面に顔を移す。
2021年4月12日 21:48
溜息を一つ吐く。誰もいない静かな教室。児童が帰りきったこの時間のみが、僕が唯一落ち着ける時間帯である。やっと終わった。あの地獄の様な日々から一時的にでも開放された。僕は今という瞬間を噛み締めながら、一学期を終えた教室で急ぎではない二学期用の掲示物の制作をしていた。 ふと時計を見ると、時計の針は一七時を少し回る時間を指し示していた。授業中はあれ程時間に追われるというのに、児童が帰った後は途端に疎
2021年4月9日 12:25
或先生ノ朝 キーンコーンカーンコーン校舎一面にチャイムの音が鳴り響いていた。幾度も聞いたことのあるその無機質な音はどことなく寂寥の音を孕んでいるようにも思える音だ。チャイムの余韻が小暑の暑さに滲み溶けていく中、僕は手から伝わる手すりの冷たさを肌に這わせ教室へと向かっていた。階段を登っていく途中、低、中と順に階層から声がする。声の方向が上から下に移動していくにつれ、
2021年4月9日 11:59
ピロン、ピロン…嫌われた事により、レベルが上がりました。ピロン、ピロン…無能である事により、レベルが上がりました。ピロン、ピロン…何も努力しなくなった事により、レベルが上がりました。おめでとうございます。レベルがMAXになりました。レベルがMAXになった事であなたは転生する事ができます。 転生しますか?