連載はいつか終わる件 鹿島茂氏の「稀書探訪」
▼JALかANAか選べる時は、筆者はANAを選ぶことが多い。比較的にカジュアルな雰囲気と、機内誌が好みだ。先日、羽田空港でANA機に乗り、「翼の王国」2019年3月号を開いてみて、鹿島茂氏の連載「稀書探訪」が終わったことを知った。残念。
▼12年間で、全144回。最終回の第144回は「絵入り風刺雑誌『アシエット・オ・ブール』」。この風刺雑誌も第1期の1901年から1912年まで、ちょうど12年間続いたそうだ。
▼「稀書探訪」は見開きの2頁分で完結するのだが、取り上げる本の表紙や雑誌のイラストのカラー写真が大きく、いいレイアウトで、鹿島氏の文章も、蒐集(しゅうしゅう)対象に対するのめり込みっぷりと的確な文脈解説が面白く、毎月楽しみにしていた。
ちなみに、この号の特集は〈メキシコ オアハカ、サポテカの香り〉(文・絵=塩川いづみ、写真=五十嵐真)。やはりレイアウトと写真が素晴らしく、見ていて飽きない。
▼さて、鹿島氏は連載の最終回で、雑誌や新聞のバックナンバーをすべて揃えることの難しさについて熱弁を振るっている。適宜改行。
〈一般に、雑誌や新聞のバックナンバーをコレクションするのは非常に難しい。これについては連載で何度も言及したが、中でも難易度が高いのがコレクション・コンプリートまでアイテムがあと一つに迫った場合。
もうほとんど揃ったも同然と思うのは完全な素人考えで、この「たった一つの欠号」ほど手に入れるのに苦心するものはないのだ。
インターネットの普及で検索が以前とは比較にならないくらい容易になった現在でも事態はまったく変わらない。
「たった一つの欠号」は駆逐艦に察知された潜水艦のように大海深く潜航し、行方をくらましてしまうのだ。その潜航が1年で済むか、それとも十数年に亘るのかはだれにも予想できない。〉(62頁)
▼潜水艦のたとえに笑ってしまったが、筆者も、人文系のある全集を揃えるのに苦労したことがあるので、この冒険譚のようなたとえを書く気持ちはわかる気がする。
どんな連載も、必ず終わる時がくるのだ、という当たり前のことを、あらためて実感したフライトだった。
(2019年3月15日)