『「いいね!」戦争』を読む(3) ウェブが「兵器」と化した時
▼『「いいね!」戦争 兵器化するソーシャルメディア』を読む続き。
第2章は「張りめぐらされる「神経」 インターネットはいかに世界を変えたか」。この章は、もしかしたら「世界一短くて的確なインターネット小史」かもしれない。
冒頭(43頁)は、アメリカNBCのキャスターが、生放送中に「ところで、インターネットって何だ?」と尋ねる場面から始まる。
1994年のことだ。
▼本書では、20世紀中盤から21世紀まで、たった半世紀ちょっとでインターネットが大発展する歴史を、たった40頁ほどの分量で、大急ぎで一望する。その手際は見事なものだ。
あっという間に「スマホ」が誕生して、「プラットフォーム」の巨人が生まれ、「戦争」が変わる。適宜改行。
〈タイやフィリピンのような国では、フェイスブックはインターネットそのものだ。インターネットは独創的な無秩序状態にもかかわらず、ひと握りのデジタル王に支配されるようになっている。
その結果、インターネットは生みの親たちによって、なじみがあると同時に以前と同じものとは思えないほど様変わりし、ウェブの未来ばかりか政治と戦争の未来にも深刻な影響をおよぼしそうだ。ティム・バーナーズ=リーは次のように話す。
「何年も前に多くのユーザーが接続したウェブは、現在新たなユーザーが出合うものとは違う。かつては多種多様なブログやウェブサイトが選び放題だったのに、今は少数の有力なプラットフォームに抑えつけられている。
この権力の集中によって、新たな門番が生まれ、どのアイデアや意見が閲覧されシェアされるかをひと握りのプラットフォームが管理できる。
さらに、権力がわずかな企業に集中している結果、ウェブの大規模な[兵器化]が可能になった」〉(85頁)
▼2018年現在、インターネットを使っている人は誰か。
〈典型的なネットユーザーは以前のような白人、男性、アメリカ人でカリフォルニア州出身のコンピュータ科学者ではない。
今では全ユーザーの半数以上がアジア、15パーセントがアフリカ在住だ。
ウェブインターフェースとユーザビリティ(利便性)研究の先駆者であるヤコブ・ニールセンがかつてインターネットのユーザー構成に起きている変化について指摘したように、(典型的ユーザーは)「統計的には、上海在住の24歳の女性である可能性が高い」〉(87頁)
▼アジア、アフリカに激増するネットユーザーが、これまでの人類史に存在したどんな通信メディアよりも密接に「政治」「戦争」とリンクしているインターネットと、どんなお付き合いをしていけばいいのか。
第3章以降、「言われてみれば気づく」話と、「想像をはるかに超える」話が満載されている。(つづく)
(2019年6月26日)