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大海明日香
2025年2月1日 19:45
海までは行かないことを知っている乗らないバスをそっと見送る...みじめになりたくないから点滅する信号の前で止まる、点滅が止むまではこの世でいちばん孤独になる、ぼやけた心臓のかたちを正すために孤独でなければいけないときがあって、世界をきりとる、きりとり線はわたしのために書かれていないから、乱暴なやり方を選んでいる、ハサミをうまく使えないことがこんなにもさみしいってこと、大人にな
2024年11月24日 19:52
しなやかな繊維となまぬるい水、それから君とか、わたしの身体に触れるものだけが光っていて、あとの全部が敵だということにすると、この部屋には星座が浮かぶ。宇宙に比喩すれば何を怖がっても憎んでもよくて、だから宇宙には行きたくない、だけど宇宙の香りだけ知りたい。 君に名前をつけられたかったなんて嘘で、わたしがすべてに名前をつけたい、そうすればいちばんかわいい名前をこの星座にあげられる、
2024年5月3日 23:30
発光したい、発行したい、発酵したい、ビョウインには行かない、ふくらんでいくからだを空にして、殻にして、いのち以外のすべてを詰め込みたい。波のように流れる胸に耳をつけると、いつでもわたしの誕生日を祝う歌が聴こえる、うるさい、うるさいな、耳をぎゅっとふさいだのは、君以外のほとんどと手をつなぎたくないからだった。 信号が赤になったときじゃなくて、青になったときに駄目になるんだ
2024年4月4日 22:34
終わらないで(ぜんぶ終わってしまえ) 夕暮れが嫌いなのは同族嫌悪で、カップラーメンは星になる。3分待っても消えない怒りはこのまま一生残るのかもしれないけれど、簡単にわたしの言うことを聞くような感情はこんな世界ではどうせ生きていられない、 淘汰、わたしを殺そうとする獣とわたしだけが適応する地獄、眠りたくないことと起きたくないことは少しも同じじゃないのに、紺色のカーテ
2024年3月6日 22:17
心臓にまで染み込んでいる煙草の匂いが未だにどんな匂いか分からない、わたしは獣じゃない、かといって魔女でもない、いつか魔女にあったとき、その甘い香りでそのことにきっと気づいてしまう、それがかなしい。 無花果をゆっくり食べる心臓に甘い匂いが染み込むように 指の先にまで流れている激情の炎のことを血液と言うのなら、わたしはやっぱり悪魔の子なのかもしれなかった、それならそのほうがずっとよ
2024年2月1日 20:44
ひらく とじる 心臓のあまいかおりがする血液のにがいかおりがする 記憶は血管を流れるから怪我をするたびさらさら滲み出ていくどうでもいいことから順番にどうでもいいことはわたしのことがどうでもよくて忘れたいことはわたしのことをくるしめたいからわたしが記憶をしまうとき罰として窓のない部屋に放り込んだから ひらく とじる 心臓は帰り道
2024年1月15日 21:15
幸福の重さを上手に測れない体重計は壊れていてほしいはじめていくカフェの小さなテーブルに飾られたもっと小さなシェットランドシープドッグに知らない街の写真を見せてここが故郷なのとずっと嘘の話がしたい (冬になるとあたりいちめん雪が降ってそれが溶けるまでわたしたちは眠るんだよ) 淡い異国の街で産まれたことになって優しいだけのホットケーキを食べる毎日こうしていればシ
2023年11月19日 20:38
突然、わけのわからないことで死んでしまう以外に、あたしがきみを泣かせる方法なんてあるの。 きみが死ぬことをかなしむために生きているのではなくてあたしが死ぬことをきみにかなしんでほしいから生きているだけだって、気づいてしまった日の海が穏やかに凪いでいる。 本物の灯台を見たことがないってこと、誰にも言えないまま皮膚はゆっくりと乾いていく。それなのにお腹の中の海にぽつんと建った灯台はやけに鮮
2023年10月25日 20:08
蹴らなかったガードレールはどうせわたしが蹴ったって曲がりも歪みもしないガードレールで、だから蹴らなかったわけじゃないけど、だから蹴らなくてもよかった。(怒らないで、)意味のないものを排除したとき、わたしの庭は更地になる、(焦らないで、)寝転がって部屋の隅の埃を見つけたとき、死神だけがわたしを抱きしめたがる、(祈らないで、)はつ恋のひと以外を信仰したとき、わたしはつまらない罪人になる、
2023年10月4日 23:52
死ぬタイミングを間違えなければ永遠になれるから焦らなくていいよ、永遠が君のかたちになることはないけれど、君が永遠のかたちになることはできるから焦ることないよ。 永遠は、世界一可愛くて世界一嫌いなあの子のかたちともまったく似ておらず、液体のふりをしてふくよかな土のなかに決して染み込まずに寝そべっている。金木犀の木の下に埋まっているのは死体ではなくて永遠で、だから代替できない香りがする
2023年8月13日 21:17
おばあちゃんの家にある、古い、四角いマッチ箱の中には、わたしがこわがるもの(たとえば愛とか)が入っているって知っているから開けられない、火をつけたことがない、わたしは、命を、愛を、燃やしたことがない。 息を吹きかけて蝋燭の炎を消す、ゆっくりと短くなっていく線香の香りが消えるまで離れるとどこにあるか分からないそれぞれの(ほんとうの)心臓の香りが混ざった薄いにおいがして、この火をつけた
2023年7月21日 19:32
なんかみんな乾いてない?馬鹿みたいに暑いからかい 本当はわかっているおれだけがとんでもない晴れ男で干上がった泉の底で死骸のふりをして寝そべっている本当はわかっているみんなオアシスにいるおれが水の味を忘れてしまっただけ乾ききった喉を鳴らして流行りの歌をうたうだけ シャッフル再生で流れてきた時にしか聴きたくない歌を聴くおれの砂漠はだだっ広いだけでラクダの1匹もいや
2023年6月29日 21:27
幸福は海で絶望は宇宙孤独は魚みたいに幸福の中を泳いでいて わたしは時折すべてを休んで幼馴染の死神と海や星を見に行くためのドライブをする それまであったことはみんな歌にして 死神だけがそれを聴いてくれる 死神だけがいつも わたしに歌手になったらいいと言ってくれる死神だけがいつもわたしに期待してわたしに失望もせずわたしのそばを離れない絶望は海で幸福は宇宙愛情は干上がったくらげ
2023年6月8日 19:52
ベイビー、わたしのする復讐って葬式の最中に棺桶から起き上がることだよ棺桶から起き上がったときできるだけ美しいほうがいいから水をたくさん、たくさん飲むんだよ死はいつも窓辺の安い一輪挿しの中で枯れたり咲いたりしているのに、対岸でぽつんと立っていると思ってるから君はわたしが水を毎日取り替えていることに気が付かない、1日のうち、一生のうち、良かったことと良くなかったことだけを流暢に話すけど