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【完結】婚姻FA エピソード1

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婚姻関係円滑化法(通称:婚姻FA制度)が施行された。 結婚3年以上の既婚者に、新しいパートナーとの人生をスタートする権利を認めるこの制度。離婚時の配偶者の同意は不要だが、新パート…
注】大幅に、加筆修正がされる場合がございます。 『婚活FA』の全文を、個別で購入するよりも、割安…
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記事一覧

『婚姻FA』 第九話 (最終話)

夜の七時を過ぎ、マンションに帰宅した元妻の目に最初に入ったのは、靴箱の隙間だった。 彼の…

乙輔
2か月前

『婚姻FA』 第八話

オンライン面談から三日後の午前十時。 葛西は、五年間暮らしたマンションの前で、携帯の画面…

乙輔
2か月前

『婚姻FA』 第七話

土曜日の午前九時四十五分。 葛西は自室のデスクで、届いていたメールを再度確認していた。 …

乙輔
2か月前

『婚姻FA』 第六話

マンションの駐車場で、葛西はエンジンを切った。 上階の一室の明かりが、夜空に浮かぶように…

乙輔
2か月前

『婚姻FA』 第五話

「あまり長くは待てないわ」 その言葉に、葛西は顔を上げた。 「報告書をよく見て」 妻は再び…

乙輔
2か月前

『婚姻FA』 第四話

井上と別れてから一時間後。 空虚な足取りで、マンションのエレベーターに乗り込む。15階のボ…

乙輔
2か月前

『婚姻FA』第三話

「なぜ、今なんですか?」 井上の問いは、カフェの喧騒をかき消すように、二人の間に沈んだ。 「タイミングが悪いのは分かっています。昇進の話もあって」 「いいえ、そうじゃなくて」 井上は言葉を選ぶように、カップに手を伸ばした。 「どうして、こんなに急ぐ必要があるんですか?」 窓の外は完全な夜になっていた。オフィス街の無数の明かりが、ガラス越しに二人を見下ろしている。 「焦っているように見えます」 井上の声は、優しかった。 いつもの相談事のときのような。 だからこそ、葛西は

『婚姻FA』第二話

午後三時を過ぎた執務室。葛西は端末に映る数字の羅列から、何も読み取れなくなっていた。モニ…

乙輔
2か月前
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『婚姻FA』第一話

まだ肌寒い早朝の通勤電車内。葛西智也(37歳)は、スマートフォンに表示された全国紙の電子版…

乙輔
2か月前
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『婚姻FA』 プロローグ 可決

「賛成多数により、可決いたしました」 衆議院本会議場に議長の声が響く。傍聴席がざわめく中…

乙輔
2か月前