心霊の文化史---スピリチュアルな英国近代 (河出ブックス)
心霊の文化史---スピリチュアルな英国近代 (河出ブックス)
ヨーロッパの「心霊主義」について、解説した本です。
十八世紀末から、二十世紀初頭までの時代を、取り上げています。
主に扱われている時代と国は、十九世紀のイギリスです。
なぜ、この時代、この国なのかと言えば、当時のイギリスは、大オカルトブームだったからです。「心霊主義」というものが、はやりました。
心霊主義の影響は、二十一世紀の日本にまで及んでいます。
二〇一一年現在、日本は、「スピリチュアル」ブームですね。この源泉が、十九世紀のイギリスにあると、御存知でしたか?
過去のイギリスのオカルトブームの中に、現代の日本を読み解く鍵があります。
十九世紀のイギリスでは、オカルトが、必ずしも、オカルトの顔をしているとは限りませんでした。
一見、「科学的」な装いをしたオカルトが多かったのです。例えば、骨相学【こっそうがく】です。
骨相学とは、「ヒトの頭蓋骨の形で、ヒトの性格がわかる」と主張された疑似科学です。現代では、根拠がないことが証明されています。
けれども、十九世紀のイギリスでは、少なからぬ人に、「科学」として信じられていました。
現代日本の血液型占いと、似ていますね。
骨相学をはじめとして、現代の日本人には、馴染みのない事柄について、大づかみに解説されています。
神智学【しんちがく】、心霊主義と社会主義との関係、心霊主義的共同体、心霊主義と進化論との関係、都市計画に及ぼした心霊主義の影響、などです。
本書を読むと、日本の「スピリチュアル」ブームや、科学に対する目が、違ってくるでしょう。
「こういう見方もあったのか」と、膝を打ちます。
ただ、神智学の解説の部分などは、正直に言いまして、退屈です。抽象的な説明が、長く続くからです。
退屈な部分は飛ばして、興味がある部分だけ拾い読みしても、本書は、役に立つと思います。
以下に、本書の目次を書いておきますね。
はじめに
序章 心霊主義の誕生
ハイズヴィルの心霊現象●降霊会の流行●ハイズヴィル事件の社会背景
第1章 骨相学、人間観察、催眠術
骨相学の創始者たち●『人間の構成』と骨相学の体系●アメリカの骨相学●
骨相メスメリズム
第2章 心霊主義と社会改革
オーウェンの社会改革●オーウェンと骨相学●社会改革と心霊主義●
オーウェン共同体とシェーカー共同体
第3章 神智学とオカルト
神智学協会の創設●マハトマの登場●神智学の霊的進化論●
ウォレスと心霊主義●モダニズム芸術と神智学――イェイツとカンディンスキー
第4章 心理学との融合
心霊研究協会の創設●マイヤーズと心霊主義●潜在意識とテレパシー●
ユングと心霊主義
第5章 田園都市と心霊主義
ハワードの田園都市●神智学的回心と田園都市●「ショーの理想都市」●
田園都市の建設
おわりに
あとがき
参考文献