日本の美術 No 52 お伽草子
『お伽草子』を御存知でしょうか? 中世の日本ではやった、短編の物語集です。民間に流布していた口承文芸が、それぞれ、紙の絵巻にまとめられたものと考えられています。
『お伽草子』には、「浦島太郎」や「一寸法師」や「鉢かづき(姫)」のように、現代にもよく知られる民話が含まれます。
いっぽうで、「常盤【ときわ】の嫗【うば】」や「十二類絵巻」や「貴船【きぶね】の本地」のように、現代では馴染みが薄い物語も含まれます。
馴染みのある物語でも、改めて紹介されると、発見があるものです。
馴染みのない物語であれば、なおさら、興味深いです。「なぜ、この物語が、現代では無名なのだろう?」と、考える材料も与えられます。
本書は、数ある『お伽草子』の物語の内容と、それらが描かれた絵と、その筆者とを、紹介しています。
前記のとおり、『お伽草子』の物語は、現代、馴染みのある童話となっているものが多いです。そうでなくとも、内容は素朴で、理解しやすいものがほとんどです。現代の日本人でも、読んで楽しい物語です(^^)
絵が加わることで、物語の楽しさが倍増しています。丁寧で豪奢な絵もあれば、素朴で稚気にあふれる絵もあります。どの絵を見ても、その絵の背後に物語が感じられ、想像力がかき立てられます。
絵の筆者は、判明していないものが、少なくありません。
それだけに、「このような絵を描いたのは、どんな人だろうか?」と、想像する楽しみがあります。
本書は、『お伽草子』をまとめて紹介した、貴重な資料です(^^)
以下に、本書の目次を書いておきますね。
はじめに
お伽草子の名称
お伽草子の形式
お伽草子の分類
お伽草子の内容と作例
1.童話・寓話【ぐうわ】・笑話
2.異類物
3.本地物・縁起物
4.遁世【とんせい】物
5.継子【ままこ】物
6.恋愛物
7.妬婦【とふ】談
8.武勇談・武人伝説
9.幸若【こうわか】舞曲と関連したもの
10.復讐談
11.歌物語・歌人伝説
12.源氏物語に関連したもの
13.立身出世談・祝儀物
お伽草子の画風と筆者
1.大和絵【やまとえ】の伝統的様式
2.土佐派以外の流派
3.奈良絵【ならえ】風の絵巻
4.童画的なもの
5.大型の奈良絵本
6.奈良絵本横本
結語
図版目録
参考文献
索引
お伽草子の鑑識