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日本霊異記(平凡社ライブラリー)


日本霊異記(平凡社ライブラリー)

 日本最古の説話集です。題名は、「にほんりょういき」と読みます。平安時代初期に、景戒【きょうかい】という僧侶によって編纂されたと考えられています。
 けれども、話の舞台は、奈良時代以前のものがほとんどです。

 日本史や、日本の仏教、日本の民話に興味がある方に、強くお勧めします(^o^)/
 奈良時代以前の人々の暮らしぶりや、仏教の広がり方について、これほど具体的に示してくれる資料は、少ないからです。

 また、本書は、後の時代の日本の説話や民話に、大きな影響を与えています。本書を抜きに、日本の民話を語ることは、できません。
 鬼や化け狐など、日本の妖怪についても、その起源を探るのに、本書は重要です。奈良時代以前の妖怪たちの諸相が、本書に現われているからです。

 本書は、現代語訳なので、古文が読めない方でも、大丈夫です(^^)
 逆に、そこがもの足りない方も、いるでしょう。

 一話一話は、とても短いです。筋も単純で、あっさり終わってしまいます。このために、飽きさえしなければ、どんどん読み進められます。

 基本的に、どの話も、仏教説話です。仏教の徳をほめたたえて、終わっています。その点が、鼻につく方も、いるでしょう。
 仏教が日本に来たばかりの頃、仏教徒が、苦心して、教えを広めようとしていたことが、わかります。大衆に受けがいいのは、やはり、平易な「お話」なのでしょう。

 以下に、本書の目次を書いておきますね。

日本国現報善悪霊異記 上巻
 雷を捕えた話 第一
 狐を妻として子を産ませた話 第二
 雷の好意で授けてもらった強力の子の話 第三
 聖徳太子が不思議なありさまを示された話 第四
 仏法を尊信して現世の報いを得た話 第五
 観音菩薩にすがって現世に報いを得た話 第六
 亀を買って助け放し、現世で報いを得て亀に助けられた話 第七
 聾者【ろうしゃ】が大乗経典に帰依して、現世に報いを得、両耳が聞こえた話 第八
 幼児が鷲にさらわれ、他国で父に会えた話 第九
 子供の物を盗んで用い、牛となって使われ、不思議なことが現われた話 第十
 など

日本国現報善悪霊異記 中巻
 自分の高位を笠に着て、みなりいやしい沙弥【しゃみ】を打って現世の報いで悪い死に方をした話 第一
 烏【からす】の邪淫を見て、世を厭【いと】い、仏法を修行した話 第二
 極悪の子が妻を愛し、母を殺そうと謀【はか】って、たちどころに悪い死に方をした話 第三
 力もちの女が力くらべをした話 第四
 異国の神のたたりで、牛七頭を殺して祭り、また生き物を放してやった善行で、現世に善悪二つの報いを得た話 第五
 真心をこめて写した法華経が不思議なしるしを見せた話 第六
 知恵のある人が変化【へんげ】の聖人【しょうにん】の悪口をいい、閻魔の庁に行って苦【くるしみ】を受けた話 第七
 蟹【かに】と蛙【かえる】を買って放ち、現に報いを得た話 第八
 自分で寺を造り、その寺の物を使い、牛となって使われた話 第九
 いつも鳥の卵を煮て食い、たちどころに悪い死に方をした話 第十
 など

日本国現報善悪霊異記 下巻
 法華経を読誦【どくじゅ】する者の舌が、されこうべについて腐らなかった話 第一
 生き物を殺して恨みの心を持ち、狐と犬になって互いに恨みを報いた話 第二
 十一面観音像にたより願った僧が現世で報いを得た話 第三
 方広経を誦した僧が海に沈んで溺れなかった話 第四
 妙見菩薩が形を変えて、盗人を人に知らせた話 第五
 僧が食べようとした魚が法華経に変じて、俗人の非難をとどめた話 第六
 観音の木像の助けによって、国王から受ける災難をまぬかれた話 第七
 弥勒菩薩が願いに応じて現われた話 第八
 閻魔王が不思議な様子を示して、人にすすめて、修善【しゅぜん】させた話 第九
 法にしたがって写した法華経が火に焼けなかった話 第十
 など

解説  原田敏明・高橋貢



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