甲斐 敏幸

良書精読📖ジャズギターを弾きたい🎸ジャズピアノを弾きたい🎹旨い料理を食べたい🍴ときどきランニング🏃 ゴキブリと蜘蛛がいたらブルブルと震えて逃げます😱

甲斐 敏幸

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最近の記事

「官僚国家日本の闇」泉房穂

 2002年10月25日の朝、自宅駐車場で石井紘基衆議院議員は殺された。翌々日、右翼団体を名乗る伊藤白水は自首した。伊藤は金銭トラブルだと話した。しかし、その数年後頼まれて殺したと、或るメディアに自白を翻した。家族や周囲の話では、3日後の国会質問で「日本がひっくり返るだろう」と話していた。鞄に入れた提出書類と議員手帳は無かった。  その後東京地裁で伊藤は無期懲役の判決となり、全容は解明されなかった。当時の民主党も1回だけの記者会見を行い、1回だけの会議が設けられた。出席した紀

    • 「美しい土地」

       若い頃、27のバケットリストを考えた。 それらは楽しみであり、挑戦であり、学習でもあったが、その一つにアイオワへ行くということを書いた。 アイオワという名称は、ネイティブアメリカンの言葉で美しい土地という言葉に由来する。 「フィールド・オブ・ドリームス」は、美しいアイオワを舞台にし、「シューレス・ジョーを題材にしつつ、人間にとって理想の生活とは何か、真の幸福とは何か、家族とは、親子とはといった、現代人が方向を見失いがちになっているテーマを追っている」映画だ。 映画が

      • 「フレンチ」

         お店の料理を食するのはそれぞれに特別な時間であり、喜びを享受したいと考える。総合的に自己の基準に達したとき、心からの賛辞を惜しまない。帰り際に「美味しかった。また来ます」と。そうは言っても心の中では、ここに来ることはないだろうと思うときもある。マルクスはこれを疎外と言った。これは資本主義が成長するための機能で、淘汰は市場法則の第一義なのは言うまでもない。  開高健氏の「輝ける闇」に「匂いの中に本質がある」という下りがある。文学の使命は時間がたつと解釈が変わるが、匂いは変わ

        • 「あした死ぬ幸福の王子」飲茶

          ⁡  面白かった。哲学はこんなに面白いものだったのか。死の先駆的覚悟は武士道そのものかもしれない。鍋島藩の葉隠に酒でしくじった男の話がある。酒で一度失敗すると世間は冷たい。しかし、そうではなく、過ちを犯した者は必ず後悔し、仕事の役に立つと説く。上役が保証することは、自分の命をかけて保証することである。武士道とは死ぬことと見つけたりとは、そういう意味でもある。  死を意識すること、つまりこの瞬間に死が訪れるかもしれないという感覚は、今の日本にはない。死は身近なものであり、忌むべ

          「人生生涯小僧の心」塩沼亮潤

           仙台市の秋保(あきう)温泉に、かって宿泊し学生時代の仲間と旧交を温めたことがある。その秋保町に慈眼寺を建立したのが筆者であり、吉野の金峯山寺(きんぷせんじ)で千日回峰行を達成された大阿闍梨である。  もう何度も読んでいる。今回は何回目だろうか。それだけ心を惹かれるものがある。理屈ではなく、死に際の体験から出た言葉の強さは真実であり、僕のひ弱な体験に照らしてみると塩沼氏は例えようもなく神々しい。  千日回峰行のコースは、吉野山の金峯山寺蔵王堂をスタートし、24キロ先にある大峯

          「人生生涯小僧の心」塩沼亮潤

          「草の根のファシズム」吉見義明

           祭祀中心の天皇の生活を変更させた明治政府は、五箇条の御誓文を掲げ、王政復古を宣言した。キリスト教の代わりに天皇を中心とした社会を目指したのだ。 「明治政府がやろうとしたのは、キリスト教の代替物としての宗教を作ることにありました。神の前の平等ならぬ、天皇の前の平等です。この観念を普及させることによって、日本人に近代精神を植え付けようと考えた。伊藤博文はこう述べている。"我が国にありて機軸となすべきは、ひとり皇室あるのみ"」。(日本人のための憲法原論・小室直樹)そして、キリスト

          「草の根のファシズム」吉見義明

          「九年前の祈り」小野正嗣

              芥川賞受賞後に読んだときは、海辺の町のありふれた家庭の日常風景という印象だった。ただ、そのときも今回の再読も「引きちぎられたミミズ」という独特な言葉の形容と登場人物の感情が交錯した。     このような純文学は芥川賞らしさを感じるし、退屈な日常描写はあっていい。なぜなら我々の現実は多くの平凡な選択の連続だし、決してドラマチックではないからである。     蒲江町の白砂青松の美しい海岸線が続く入り江。海辺の町の荒々しい方言と静かな日常。母と子が織りなす寡黙な希望

          「九年前の祈り」小野正嗣

          「若きサムライのために」

           先日、マッサージを受けながら、パソコン通信という言葉が口をついて出た。懐かしさを覚えた。振り返ってみると、NECの8801を駆使しながらBASICを学習し、パソコン通信、HTML、アップルのパソコンへと形を変えていった。パソコン通信のフォーラムで、さまざまな会話をしながら調べたり、思考したり、ときにはお会いすることができた。やがてインターネットが始まり、これで何ができるのだろうと仲間と話していた。 ⁡  音作りに興味があったので、画面の楽譜に音符を打ち込み、交響曲に仕立て、

          「若きサムライのために」

          「昭和の天才 仲小路彰」 野島芳明

           当たり前のことをなぜ言えないのだろう。現在のメディアに対して、そう思う。「我等斯ク信ズ」で戦争の原因は本当のことを包み隠さず書いているに過ぎないが、それがとても新鮮に感じるのはWGIPによって歪曲され、真実を糊塗した連合国の政策の効果ゆえだろうか。山名湖畔に疎開していた仲小路を昭和20年7月に富岡定俊海軍少尉が訪ねて書かれた文書「我等斯ク信ズ」は一読の価値がある。  平凡は非凡を見抜くことはできない。天才であるが故に精神的孤高の世界に独居し、山中湖の貧しい山荘に居続けてい

          「昭和の天才 仲小路彰」 野島芳明

          「ロンドンデリー・エアーとダニーボーイ」

           北アイルランドの北西部の港町ロンドンデリーは、長い冬と北風の町。 1600年初頭まではデリーという地名で、アイリッシュと呼ばれるケルト人たちが暮らしていた。ところが、この地を植民地化したイングランド王のジェームズ1世はロンドンの名を冠にして、ロンドンデリーと呼ぶようになった。 歌の由来は作者不明で、19世紀にジミー・マッカリーという盲目のバイオリニストが弾いているのを、ジェイン・ロスという民謡収集家が採譜した。タイトルのエアーは、詠唱曲を意味する音楽用語で、詞と曲を自由に変

          「ロンドンデリー・エアーとダニーボーイ」

          「幻化」梅崎春生

           坊津を訪れる予定なので、「幻化」を再読した。読み返してみると精緻な心理小説で、筆致は小林秀雄の「人形」に似ているように思えた。大分空港の富士航空の事故から始まり、知覧、坊津、吹上浜、熊本、最後は阿蘇山の火口が舞台となる。三島由紀夫が死に際に美学を見いだしていたとするなら、梅崎はもがき苦しみながら生き存えているような印象である。 ⁡  僕が惹かれたのは、作中の人物たちの正直で率直な会話だった。現代では通用しない会話かもしれないという訝しさと同時に、それらの会話群に、温かさとい

          「幻化」梅崎春生

          「ヤクザときどきピアノ」鈴木智彦

           作者は52歳からのピアノ初挑戦。 ダンシング・クイーンだけを弾ければよい。 ピアノの先生との出会い。 学習時の疑問、理解、感覚、メソッド。 発表会の狼狽。 ⁡  意識しないよう意識するとうまくいかない。 無心とは次のような言葉。 「すなわち術は術のない術となり、射ることは射ないこと、言い換えれば弓矢なしで射ることとなる。」(弓と禅) 中島敦の「名人伝」に通じるのか。 ⁡  この本はピアノの教則本だ。啓発本だ。 壁にぶち当たったら再読必死。 ⁡ 「ピアノを学んだ多くの子どもた

          「ヤクザときどきピアノ」鈴木智彦

          「陸行水行」 松本清張

           安心院(あじむ)町の妻垣神社に参詣したとき、古事記や日本書紀に出てくる地名であること、伝説の神武天皇が立ち寄り、足一騰宮(あしひとつあがりのみや)を建てて宇佐津彦命と宇佐津姫命の兄妹が歓待したことを知った。記者時代の清張が宇佐神宮の調査で何度も訪ねてきたこと、妻垣に宿泊をしたり手紙で地元住民と交流していたことも知った。 ⁡  8年前に近くの鹿嵐山(かならせやま)に登った。奇岩がたくさんあり、スリルもあった。この辺りの岩の表出は西に位置する耶馬溪同様に海底の隆起と浸食によるも

          「陸行水行」 松本清張

          「坦々麺」

           娘たちが目黒に住んでいた頃、ときどき九州から会いに出かけた。 目黒駅近くでも、午前の遅い時間に開店していない店が多かった。 やっと見つけたところは、汁なし坦々麺しかできないけど、と言われた。 狭い店だったが、とても気持ちよく対応していただいた。 ⁡  東京のお店は新しさと伝統が混在し、安くて美味しい店が多い印象がある。 僕は屋台のような、生活臭があって誰とでも話せるような空間が好きだ。 店内を見回すと、有名人の色紙がたくさん飾られ、期待を抱かせた。 運ばれてきたどんぶりには

          「坦々麺」

          「追想 渡辺京二」

           渡辺京二さんや松下竜一さんの姿勢には、とても惹かれるものがある。 奇しくも二人にとっての共通課題は環境問題であった。  人間は間違いを起こす。 歴史を繙けば、それはすぐに分かることだ。 今を生きている私たちが、そこから学ぶべきことは何か。  私はこの学問を学んだ、専門の学者だ、そう喧伝する輩は多い。 しかし、それに対して僕は微笑を返すしかない。  人間は時に間違いを起こすのだ。 必要なことは、自信を持ち、冷静に、謙虚さも持ち、傲慢な心を抑えることではないか。

          「追想 渡辺京二」

          「世界インフレと戦争」 中野剛志

          チャットGPTに要約させてみた。下記の通りだが、概括という印象で、細部にはほど遠い。 「中野剛志氏は、経済学者であり、『世界インフレと戦争』という著書で、インフレーション(物価上昇)が国際紛争を引き起こす可能性があるという仮説を提唱しています。 中野氏によると、インフレーションは、国内の経済に悪影響を与えるだけでなく、国際間の貿易や資本移動にも影響を与えます。 物価の上昇によって、輸出品の価格が上昇し、輸出競争力が低下する可能性があります。また、インフレーションが高い国で

          「世界インフレと戦争」 中野剛志