イラストレーター、手芸作家向け「仕事とお金の授業」#6 アイデアの価値
今日の授業内容
こんにちは金曜お昼になりました。手芸作家兼若手イラストレーターの展示をメインとしたギャラリーを運営している大図まことです。
今日は前回(#5 本を作る)の続きです。私達クリエイターが自分の創作物やアイデアを企業に売り込んだり、依頼された際の注意点を私の失敗を例にして書いて行こうと思います。
2008年に刺しゅう作家として1冊目の本「ぼくのステッチ・ブック ~シンプルでかわいいクロスステッチのおもちゃ箱~ 」が白夜書房から出ました。詳しくはこちらの記事に書いてもいるので興味がある方は是非読んでください。
本が出たのはとても嬉しかったですがそれだけで食べていくのはとても難しく当時は毎週末色んな場所で刺しゅう教室をして収入を得ていました。
私は刺しゅうの中でもクロスステッチというジャンルをメインに活動をしています。クロスステッチは通常マス目のある専用に織られた生地を用いて針と糸でバツ印(X)をいくつも作ってモチーフを完成させます。
数ある刺しゅう技法の中でもクロスステッチは名前の通りバッテンを作るだけでわかりやすいので小学校の家庭科の授業などでやったことがある人も多いかもしれません。出来上がりがカクカクしてレトロゲームのようで可愛いですよね。
布目の読めない日常使いのシャツやハンカチなどにクロスステッチをしたい場合は抜きキャンバスという副資材を使って刺しゅうをする事になります。
↓こんな感じです。
とても便利な抜きキャンバスですがデメリットとして刺し始める前に周りをベースとなる生地と密着させてズレないようにしつけないといけない点があります。このズレないようにというのが初めは難しくて中々綺麗にクロスステッチをする事が出来ません。
アイデアを企業へ売り込み
ある時手芸店へ行くと水で溶ける接着芯で尚且つシールタイプになっていて布地にぴったり貼れるものを見つけました。これにマス目が入っていたら抜きキャンバスの代わりに使えるのではないかと考え購入し家庭用プリンターでマス目を印刷し実際に刺しゅうをしました。
ズレずに上手くクロスステッチが出来ましたが水で接着芯を溶かすとベースとなる生地に印刷したインクが移ってしまいます。インクも水溶性のもので無いとだめだと思い、このアイデアを手芸材料として昔から使われている水で溶けるペン(チャコペン)を作っているCペーパー株式会社へ持ち込みます。
興味を持ってもらえ試作を繰り返し商品化に辿り着きました。発売から10年以上経った今でも手芸店などで売っています。しかしながら私の報酬は0円でした。なんででしょうか?
商品化するにあたって実用新案を取り大図さんの名前を考案者として書面にいれたいのでこの用紙にハンコを押して欲しいと言われ前回のnote同様また浮かれてしまいました。実用新案?考案者?よくわからないけど凄そうじゃないですか?内容も確認せず言われるがままハンコを押してしまいました。それが全部の権利を相手に渡す契約書だったという事を確認せずに。
▼実際に提出された資料は特許情報プラットフォームで確認出来ます。
※考案者として私の名前が確かに入っていますが権利者としては名前が載っていません。今見たらなぜか何も考案していないメーカーの担当者名も考案者として入っていました。
当時は若かったのでお金の話を先にするのは卑しいのではないかと考え延ばし延ばしにしてしまいました。そしていざ商品化するとなったときに初めて報酬を尋ねても後の祭りでした。その後もちろん抗議をしましたが納得できる回答をもらえることなく今に至ります。
アイデアの価値
ビジネスの世界ではアイデア自体には価値が無いとよく言われます。今回の商品に関して言えば元からあるもの組み合わせただけと言ってしまえばそれまでです。他に思いついた人がこれまでいたかもしれません。行動して商品化したことに価値がありました。お金に結び付けることが出来なかったのは私のミスです。
ではどうやったらこのようなことを防げたでしょうか?先に権利を全て押さえて置くことがベストだと思います。でもそれよりもっと簡単なトラブル回避方法はお金の話を早い段階ですべきだということです。自分のイラストやアイデアを企業に持ち込むときも、依頼を受けるときも卑しいと思わず報酬に関して早めに見積りを済ませメールに記載しておくことが後々トラブルを防ぎます。口頭だと言った言わないに必ずなります。お金の話が決まっていない段階で仕事を進めるは絶対やめましょう。そしてハンコは絶対にすぐ押してはダメです。その場で押してくださいと言われても持ち帰ってください。少しでも不安に思ったら第三者に相談してください。
本日の課題
お金の話が決まっていない段階で仕事を進めるはやめよう!
これまで思いついたことがあるアイデアを実際に行動して形にしてみよう!
宣伝
現在私が運営している蔵前のギャラリー「TOKYO PiXEL. shop & gallery」では2/25(日)までイラストレーターumaoさんの個展を開催中です。同時開催としてレトロな手芸作品が人気の毛玉商店さんの初個展をこちらは3/3まで開催しています。お近くの方は是非お立ち寄りください。通販もやっています!
TOKYO PiXEL. shop & gallery
〒111-0042東京都台東区寿3-14-13-1F
TEL:03-6802-8219
12:00~19:00
※展示最終日はギャラリー、ショップ共に17:00閉店となります。
▼イベント詳細などはこちらのHPでご確認ください。