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#建築 記事まとめ

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建築系の記事を収集してまとめるマガジン。主にハッシュタグ #建築 のついた記事などをチェックしています。
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2020年9月の記事一覧

バーチャル空間で建築見学!─メタボリズム・クオンタイズド ~旧都城市民会館3D Digital Archive~ワークショップレポート

菊竹建築設計事務所が設計し、1966年に竣工した旧都城市民会館。 老朽化などを理由に、惜しむらくは昨年解体されてしまった本建物ですが、有志によって実測が行われデジタルアーカイブとして残されています(経緯は下記のnoteに詳しく書きました)。 本プロジェクトは第23回文化庁メディア芸術祭(以下、メ芸)のエンターテインメント部門審査で委員会推薦作品に選ばれるなど一定の評価も得た、これからのデジタルアーカイブ活用において先見的なプロジェクトと言えるでしょう。 この度、デジタルア

A night in CINE-MA IV 【後編】想像力の労働、その話の続き

中山英之(建築家)+濱口竜介(映画監督) TOTOギャラリー・間「中山英之展 , and then」 ギャラリートーク「a night in CINE-MA」4 表紙写真=© TOTO GALLERY・MA 前編はこちら CINE-間についてはこちら 偶然を撮る濱口竜介──ここまで、自分が観た映画についてばかり話してきましたけれども、最後に自分がつくっている映画のことを少しお話しします。僕が今やってるのは、今まで挙げた誰よりもベタなことです。つまり、偶然を直接的に撮

A night in CINE-MA IV 【前編】想像力の労働、その話の続き

中山英之(建築家)+濱口竜介(映画監督) TOTOギャラリー・間「中山英之展 , and then」 ギャラリートーク「a night in CINE-MA」4 表紙写真=© TOTO GALLERY・MA CINE-間についてはこちら 想像力の労働とは 中山英之──まず、「想像力の労働、その話の続き」という今日のタイトルについて簡単に。このa night in CINE-MAでは、第2夜目に建築家の藤原徹平さんにお越しいただきました(記事はこちら→[前編][後編])

聖蹟ひばりヶ丘団地の「御ベランダ」にはためいた「オムツの旗」

ちょうど60年前の1960年9月、皇太子明仁親王(現・上皇さま)と美智子妃ご夫妻は、東京・田無町(現・西東京市)に建つ公団ひばりヶ丘団地をご訪問しました。住民・マスコミから熱烈な歓迎を受けつつ74号棟に住む横井さん宅(2DKの住戸)のベランダから皆に手を振る写真が今に残ります。雑誌『国際文化画報』1960年11月号の表紙もそのうちの一つ(図1)。 図1 ベランダに立つ皇太子ご夫妻(*1) そんな一枚の写真にうつる皇太子ご夫妻、ダンチ、ベランダ、洗濯物から、当時の社会をのぞ

坂静雄の「戦ふ住宅」|鉄が足りない戦時下、シェル構造を木造でつくる

建築構造学者として戦後日本の鉄筋コンクリート構造研究を牽引した坂静雄(1896-1989年)は、戦前、東京帝国大学で佐野利器や内田祥三に師事したのち海外へ留学。ところが不測の事態により京都帝国大学に呼ばれ、そこで鉄筋コンクリート構造の研究に従事することになります。「不測の事態」とは、前任者の三浦耀の急逝。ちなみに三浦もまた前任者・荒木源次、そして荒木もまた前任者・日比忠彦が亡くなったことから呼び寄せられたのだそう。 坂は京都帝大着任前に、スイスとドイツに留学。そこで鉄筋コン

手触りを大事にしながらバックオフィスはクラウドで効率化 建築設計事務所 山田紗子さん

2013年に独立し、建築設計事務所を立ち上げた山田紗子さん。大学ではランドスケープデザインを専攻し、建築設計事務所に勤めたあと、建築の勉強をするために大学院に通うことを決意。独立後は住まいの設計を中心に、リノベーションなどにも携わっています。そんな山田さんに、一級建築士になるまでの道のりや働く環境などについてお話を伺いました。 一級建築士資格のために大学院で学び直し ーーまずは簡単にこれまでの経歴を教えてください。 大学卒業後、設計事務所に4年勤めました。そのあと、芸術系の

カフェで見つけた素敵な「飛沫防止パーティション」3選

いつもご愛読いただき、ありがとうございます。 このnoteを読んでくださっているあなた。 あなたは、インテリアデザイナーさんでしょうか。 それとも、お店のオーナーさんでしょうか。 今日は、デザイナーさんと店舗オーナーさんに向けて書きます。 内容は、「飛沫防止パーティション」のデザインに気を使うと、お店の印象がグッと良くなりますよ、という話です。 10分で読めます。 もしあなたがデザイナーなら、以前に設計したお店のオーナーさんから、「飛沫拡散防止用のアクリル製パーテーショ

With・Afterコロナの世界に求められる「柔軟なすまい」

渋谷 篤 日建ハウジングシステム  取締役 設計監理統括部長 lid研究所所長 コロナウイルス感染症で住宅に求められる機能が一変する コロナウイルス感染症の拡大により日本中、世界中の人々の生活が一変し、この流れは決して一過性のものではなく、「ニューノーマル」として今後定着することが予想されます。それは我々が専門とする「集合住宅」のあり方そのものに大きく影響を及ぼし、今までの常識や慣習を見直す必要に迫られています。 野村総合研究所の調査によると、2020年5月時点でワーカーの

グラデーショナルな教育へ オンライン授業を経験して─倉方俊輔×杉田宗×平瀬有人×平野利樹×松川昌平

いまだ新型コロナウイルス感染症の収束は見えず,一部対面の授業の再開を予定している大学がある一方で,オンライン授業は継続して行われると聞いています. 設計課題など実習の授業もある建築系の学科ではどのような対応がされたのか.これまでオンライン授業を行ってきた中で感じたメリットやデメリット,そして,今後,オンライン授業とオフライン授業がハイブリッドになった時に大学や教育の価値はどのようになるのかなど,オンライン授業に取り組んできた先生方にお伺いします. より多くの人に読んで頂きたい

これからの暮らしをあらためて考える

2019年末からの新型コロナウイルス感染症の流行が起こり、大きな社会・経済的影響を与えています。私たちは、いままでの暮らし方・働き方とは違ったことを考えていかないとならないのかもしれません。そうはいっても悲観的にならず、必要以上に恐れず無理をしないで毎日を暮らしたいものです。 まず働き方が変わりました。今まで都会のオフィスに電車で通っていたのが、自宅でテレワークをすることになった人もいるでしょう。それによって、家で必要とされる機能も変わったかもしれません。専用のスペースや仕

生き物のための建築

1. Every Living Beings最近長らく遠ざかっていた「生き物のための建築」というテーマについて自然と考える時間が増えてきた。きっかけは、2学期のスタジオが始まって最初の課題で、マークフォスターゲージ(MFG)に課せられた「建築をやるモチベーション、どういうものを作りたいのかウケ狙いの嘘なく正直に答えろ」というエクササイズの時だ。その時に僕はポロッと "I want to make an Architecture that has room for every

¥300

建築の新しい在りようへ①  「是什麼物恁麼来」 / 「私が知るためには知っていることを知る必要がない」から

序 ; 内発的な言葉 ー 道元とスピノザの言辞から 人が生活するなかで滅多に起こらないが、内発的な言葉が生まれてくるときがある。そのときの様相を遡及して考えれば、自分が語る言葉は関係のなかで既に語られていた言葉を自分が重ねて語っていたとも、思惟自身が既になにものかに搦め取られているとも言えるという反省が、「そのとき」生じているのではないか。 内発的な言葉というものは既往の関係から免れて、自分の内から掴み取ることにおいて、発せられているのである、と思

書評 | Stephen Cairns & Jane M. Jacobs "Buildings Must Die : A Perverse View of Architecture"

「死」のクリエイティビティ  これまで多くの建築理論では建物の「生」に主眼が置かれていた。建物は竣工によって誕生し、物理的・社会的要因により変化していく。建物の経年を生物の一生に例えたとき、「死」というネガティヴな側面は実際には避けがたいことであるにも関わらず、クリエイティビティを追求する従来の建築理論からは抜け落ちてきたのである。これに対して本書『Buildings Must Die』(2014)は、建築理論への「死」の概念の導入を試みる。  著者のステファン・ケアンズ(

ウィーンを歩く.ジュリー・デルピーを探して.

彼がリチャード・リンクレイターの「Before Sunrise(1995)」を見たのはこの旅(1992)から帰って数年後だから,このタイトルは完全に時間感覚を混乱させていることになるが,これ以上ウィーンについて相応しいタイトルは付けられそうにない.もし,あの映画を先に見ていたら,この旅はどうなっていたんだろうかと,時々思わないことはない.人生は常に起こったことと,起こったかもしれないことが存在して,どこかで折り合いをつけて日々に向き合うようなものだ. 彼は夜行列車でウィーン