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建築ビジュアル CG 360度パノラマ制作~D5 Render~ バーチャルツアー

こんにちは。STUDIO55技術統括の入江です。
これまで、ジェネレーティブAI を活用した 360度パノラマ画像生成 について、特にゲームや建築ビジュアル制作における環境設定手法としての可能性を探求してきました。また、具体的なAIプラットフォームの紹介を交えながら、その実用性についても解説しました。

今回は、いったん AI から CG へ目を向け、本業であるCG制作のVRに焦点を当てます。特に、360°バーチャルツアーとしての活用例を通じ、その可能性を紹介します。


🔶クリエイティブソフトの進化

オンラインAIツール に限らず、クリエイティブソフトに搭載されたAI機能の進化も目覚ましいものがあります。これまでにない "時短制作" を可能にする近年のソフトウェアのアップデートは、まるで魔法のような驚きを生み出し、世界中の注目を集めています。

CG制作の進化は、新機能のアップデートや特定の作業に特化したプラグイン、新しいソフトの登場によって支えられています。常にリサーチを重ねることで、従来の "できない" を解消し、作業をより簡潔にすることが重要です。

CG制作における "時短" の要素は様々ですが、その本質は、主にレンダリングに要する物理的な時間とコストの削減にあります。
特に建築ビジュアルの制作では、ガラスなどの透過素材や反射素材が多用され、GI(Global Illumination)の設定が標準となるため、高負荷なレンダリング計算が避けられません。その結果、過去にあっては、1枚の高画質画像のレンダリングに半日を費やすことも珍しくない状況がありました。
この課題に対応するため、分散レンダリングやネットワークレンダリング、レンダーファーム、クラウドレンダリング等を駆使する手法もありますが、建築ビジュアライズ制作者向けに、より簡潔に、より使い勝手のある 時短制作と費用対効果の最適化 を常に追求してきました。

🔶D5 Render

STUDIO55 は、D5 Render の国内販売代理店としてソフトウェアを提供するだけでなく、受託制作をいち早く手掛け、メーカーである Dimension 5 と連携しながら、国内における D5 Render の普及と魅力の紹介に努めています。

D5 Render を最初に目にしたのは、私がベトナムの制作子会社に駐在していた 2020年のことです(2020年1月6日)。
その当時、建築向け動画制作ソフトの主流は Lumion(ルミオン)でしたが、より高い費用対効果が期待できるソフトとして、D5 Render に着目し、同年5月27日に駐在先のベトナムから D5 Render を社内に共有しました。
これは、D5 Renderの正式リリース版である「D5 Render 1.6」が公開される前日(2020年5月28日)のことです。

その翌年(2021年)の5月25日、パーペチュアルライセンスの最終版となった「D5 Render 1.9.0」 のリリースに際して、テスト動画を作成してそのポテンシャルを示すと共に、日本へ帰国後、改めて社内勉強会を開催。LumionTwinmotionEnsicape の3つのソフトとの比較を通じて、その活用方法を詳しく伝えました。

社内勉強会用 PPT 画面

その際に作成した デモビデオ の一部です。

D5 Render の機能

D5 Render の活用は、建築ビジュアライゼーションの新たな可能性を切り拓くものです。従来の建築向けソフトウェアは、建築特化型である一方で、CG技術への理解が十分とは言えず、機能面で物足りなさを感じることがありました。

しかし、D5 Render は建築に特化しながらも、CGへの深い理解が反映されており、その完成度には当初から驚かされてきました。今後の本格的な建築ビジュアル制作において、この視点は欠かせない要素となるでしょう。

最新のアップデート 2.9 では、Terrain(地形)モデリングやPhasing Animation(フェージングアニメーション)テンプレートの追加、アセットの拡充、AI搭載機能の向上に加え、新たにBlenderとの同期機能も実装されました。

D5 Render 2.9 新機能

1. 地形
2. フェージングアニメーション
3. Post-Ai
4. ランダム配置
5. アセット情報ページ
6. 複雑なジオメトリの FPS ブースター
7.「テキストから 3D」にボクセル スタイルを追加

👉 2024年11月15日 アップデート 2.9.1 で、レンダリング出力の複雑なジオメトリの FPS ブースターは無効になっています。

D5 Render 360度VR制作

D5 Render を使った パノラマVR について話しをします。

これまでの パノラマVR制作 は、3dsMax をベースに V-Ray レンダラー を使用して画像書き出しを行ってきました。それが、D5 Render を使用することで、更なる 時短ワークフロー の作業が可能です。

D5 Render は、V-Ray など CG制作 における ハイスペック な レンダリングソフト の要点を ピックアップ する形で、必要な機能要素だけを取り入れ、直感的に操作できる仕様 となっているのが特徴です。

例えば、3dsMax 制作 で 360度パノラマレンダリング を行う際は、レンダリング設定 の カメラ をデフォルトから スフィリカル に切り替え、FOVの上書き をアクティブにして 360.0 に入力。出力を アスペクト比 2:1の解像度 で手動入力します。

3dsMax パノラマ書き出し設定

それに対し、D5 Renderのパノラマレンダリング では、静止画出力の ”Mode” 切替ボタン をクリックするだけです。
また、サイズ設定 もプリセット化されています。(下画像参照)
わずか 2ステップ程度 で、簡単にパノラマ書き出しができるように設計されています。

D5 Render パノラマ書き出し設定

3DCGビジュアル制作に詳しくない方でも、直感的に使える分かりやすいインターフェースで、経験者であれば、操作画面を見るだけで簡単に理解することができます。


今回は、3dsMax のこちらのインテリアCGモデルを使用し、D5 Render で360度パノラマレンダリング を行うところをお見せします。

3dsMax 画面

モデルを D5 に シンクビュー した画面がこちらです。

D5 Render UI画面
DCC : 3dsMax V-Ray 

8KJPG 設定 で、静止画書き出しを行います。

書き出しされたパノラマ画像

D5 Render の「カメラ」は、一般的な DCC のようにカメラオブジェクトが別に存在するのではなく、現在表示しているビューポートそのものがカメラの役割を果たしています。これが、D5ならではのシンプルな設計です。しかし、CG制作に慣れている方ほど、この仕組みに初めは戸惑うかもしれません。

パノラマ画像をレンダリングする際には、ビューポートの位置に注意が必要です。単に画面に見えるアングルだけでなく、立ち位置から360度回転させた全景を確認します。この ビューポートの位置が360度パノラマの定点 となります。

下の GIF画像 をクリックして、別ウィンドウで、直接 360°パノラマ画像の空間をご覧ください。

画像クリックで、直接VR空間が起動します

D5 Render のパノラマレンダリングのサイズ設定には、3パターンのテンプレートが用意されています(4K、8K、16K)。
あくまで 4Kサイズ はテスト程度 の扱いになり、実務では 8K以上の解像度が必要 です。8K(8192×4096) 、16K(16384×8192)といった解像度では、当然ですが、レンダリングコストが通常よりかかります。

V-Ray のレンダリング速度は以前に比べて格段に上がってはいますが、D5 Renderのスピードよりは劣ります。※あくまでローカルレンダリングでの話しです。
したがって、このような制作においては、特に D5 Render が重宝されます。


⌛レンダリング時間比較

V-Ray for 3dsMax で 8K パノラマレンダリング にかかる時間がどの程度なものか 知っておきたい方もいると思います。

参考までに、今回のパノラマレンダリングにかかった時間を、D5 Render と 3dsMax (V-ray) で対比して記載しておきます。

( 使用マシーン )
CPU(Core i9)
GPU(RTX4090)
メモリ(64GB)

( 設定 )
・D5 Render 2.8 : 8K (8192×4096)
・3dsMax 2024 : Image Sampler(Bucket)、MSR(6)
・V-Ray 6 : GI(BrutoForce + LightChash 1000、0.01)

( タイム )
D5 Render 2.8  :  約 2分30秒 
V-ray 6 for 3dsMax : 約 6時間オーバー

ギョエ~! の1カット半日クラス
さすがにBrutoForceではキツイ…

非推奨の V-ray イラディアンス マップ では プレパス だけで30分以上かかります。こちらも参考までに挙げておきます。

V-Ray 設定
GI(Irradiance Map 4pass Hight 50,20 + LightChash 1000、0.01)
( タイム )
V-ray 6 for 3dsMax : 約30時間

まさかの24時間超え! でっど

ちなみに、D5 render 2.8 で 16K(16384×8192)パノラマレンダリングにかかる時間は、1カット 約10分40秒 (132 MB)目安です。

東京 - 大阪間は、昔の 飛脚で 最短3日 だったと言います。
今は新幹線(のぞみ)で 2時間30分。
なんとなく、そんなことが頭をよぎります(苦笑)


~D5 Render 制作例~

D5 Render を使用したパノラマ書き出し は、主に 定点ていてんVR(静止画VR)として活用することが想定されます。従来のCG制作におけるレンダリングコストと比較して、D5 Render の高速なレンダリング性能は、単なる静止画 や 動画の定番制作にとどまらず、より インタラクティブ な『バーチャルツアー』を手軽に提供する可能性を広げます。

空間は “見渡す” ものです。内覧の際、誰もが自然に空間を見渡します。その本能的衝動に応えた より印象的で没入感のあるビジュアル表現が、D5 Renderによって 時短制作として実現します。

🔷バーチャル ツアー

先ほどのモデルデータを使った バーチャルツアーを サンプルとして共有します。

< 画面・操作解説 >

直観的な画面操作が可能ですが、念のため解説をしておきます。
参考にしてください。


起動画面中央の再生ボタンをクリックしてください。

起動画面の中央にある再生ボタンをクリックしてください

バックグラウンドミュージックを流すかどうかを選択してください。
※後から音楽の有無を設定することも可能です。

バックグラウンドミュージックを流すかどうか選択してください
※後から音楽の有無を選択することも可能です

矢印のアイコンで次の位置へ進みます。
画面右端のグローブアイコンで全体マップが表示/非表示されます。

矢印のアイコンで次の場面へ進みます
画面右端のグローブアイコンで全体マップが表示/非表示されます

全体マップを表示した画面になります。
マップ上の位置アイコンをクリックしての位置移動も可能です。

全体マップを表示した画面
マップ上の位置アイコンをクリックで位置移動も可能です

左右視差の2画面表示になります。
HMD視聴用の設定になります。

左右視差の2画面表示になります
HMD視聴の際に利用します

右上の「・・・」のドロップダウンから、"Sounds" クリックで曲の有無や、その他設定を行う事ができます。

右上の「・・・」のドロップダウンから
"Sounds" で曲の有無や、その他設定を行う事ができます

VR(Virtual Reality)は、ゲーム制作を超え、建築空間のビジュアル制作においても、その可能性を広げ続けています。仮想空間を活用することで、遠隔地でもリアルに近い体験が可能となり、内覧やデザイン確認など、これまでの常識を超えた利便性を提供します。

技術の進化に伴い、VRは単なるツールを超えて、私たちの創造力を次のステージへ導く鍵となるでしょう。

来週も、VRに関しての内容をお伝えします。
お楽しみに!


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