歌集『金魚を逃がす』(鈴木美紀子氏)を読む。
鈴木美紀子氏の第二歌集
『金魚を逃がす』を拝読しました。
感想と鑑賞
-火と水の相聞-
歌集の前半の相聞群は、
作者(作中主体)が火、
相聞の相手は水としての喩が多いように感じました。
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雨量の短歌は、前述の法則からは外れます。
自分の気持ちの高まりや積もり具合が雨量で喩えられているように読みました。
「相聞の相手が水で喩えられる」という読みを当てはめて考えますと、
水に喩えられる相手の事で頭がいっぱいな状況が、雨量になったとも受け取れます。
・空想と現実のバランスが良い。
印象的な「トゥインクル」の短歌についても言及したいと思います。
前半は浮世離れした楽しい空想で始まり、結句の「お通夜の帰り」という現実で終わる絶妙なバランスです。
そこには楽しいだけではない、
人生の苦味を感じさせるエスプリがあります。
・洗練された、静かに流れるような韻律。
「ささぶね」短歌の、下の句のサ音での流れるような韻律は音読向きだとも思います。
「フォーチュンクッキー」の短歌のような字足らずの短歌もありますが、
そのリズムが却って作者の気持ちの動揺を浮き彫りにしているように思います。
ブックデザイン
本の赤い表紙や、
短歌の中に感じる情熱があります。
それは冒頭の一首の「fire」にも通じる
「火のような情熱」です。
更に、小題は本文の短歌と違う
おしゃれなフォント「徐明」に変えてあります。
その上、装丁のデザインに隠し金魚がいるとの事です。
※作者・鈴木美紀子さまのX(旧Twitterより)
そういったデザインの工夫も、
歌集の雰囲気を作っているようにお見受けしました。
赤い装幀の「情熱」だけではない、
作者らしい「上品さ」を感じる一冊です。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
もっと面白い記事を書けるように日々頑張ります。
次回もお楽しみに!