佐野 聰
川の流れを眺めながらも対象物との間に時間の流れを置いて笛吹川を透かし見ている。
笛吹川、なんとも美しく一度聞いたら忘れられない名前である。
その名前の由来は悲しく、六百年ほど前、父を追って住みついた笛の名手の権太郎と母が秋の長雨による洪水で流されて…という悲話が言い伝えられている。
悲しい気持ちのときほど空や風の美しさが身にしみる。
(岡田 耕)
(俳句雑誌「風友」平成二十四年一月号 「風友」五周年記念大会吟行記「笛吹川の風美しく」)
☆笛吹川は、甲府盆地の南西部をながれて富士川に合流する。その名の由来の悲話は、権三郎を葬ったとされる長慶寺に案内板があったので、引用します。
写真/長慶寺(岡田 耕)