歳時記を旅する48〔雛(二)〕前*昼も灯をともし駅舎の土雛
土生 重次
(昭和五十五年作、『歴巡』)
土雛の起源は京都伏見にある。
伏見人形は江戸時代後期に最盛期を迎えた最も古い郷土玩具。全国で九十種類以上もある土人形のなかで、伏見人形の系統をひかないものはないと言われるほどの土人形の元祖である。当時、伏見街道沿いには、約六十軒もの窯元が軒を連ねたが、現在では寛延年間(一七五〇年頃)創業の窯元、「丹嘉」のみが残る。(「丹嘉」HP)。
丹色に染め抜いた暖簾をくぐると、並べられた人形の中に、雄雛と雌雛が一体となった藤の花柄の着物の色鮮やかな立雛を見つけることができる。
句は山間の小駅だろうか。人影のない駅舎の明かりは、土雛のために灯されているようだ。
(岡田 耕)
(俳句雑誌『風友』令和六年三月号「風の軌跡ー重次俳句の系譜ー」)
☆トップの写真は、クリエイターさんによると「新潟市中央区の旧小澤家住宅」の土人形だそうです。
本記事でご紹介した「丹嘉」さんの土人形の土雛はこちらです。