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選評*右ひだり揺られて着くや余花の宿

右ひだり揺られて着くや余花の宿  岡田 耕

「右ひだり揺られて着く」とはどういう事か。
日光のいろは坂のようにカーブの続く山道を車で行ったのだろうか。
あるいは少々の波の荒い海を渡ったと言うのだろうか。
いずれにしてもいささかしんどい思いをして、やっと辿り着いたと言うのであろう。
しかしその甲斐があって、着いた宿は花の季節の喧騒も引いて静かな、しかしまだ余韻の残る花の宿。
咲いているのは山桜だろうか。
周りの木々は新緑が萌え初め、小鳥達の囀りも賑やかな事だろう。
 それにしても「余花の宿」とはまた何と優雅な言葉だろう。
落ち着いた雰囲気で、心のこもった持て成しに大いに癒された事であろう、とまで思われる言葉だ。
景色も思いも総て「余花」の一語に託した、つまりは季語の持つ力を全面的に信頼した一句。

俳句雑誌『風友』令和四年九月号「-風紋集・緑風集選評ー風の宿」磯村光生

☆句の生れたお宿は、奥湯河原温泉の山翠楼さんでした。
 peanuts1950 さんの記事で紹介されています。

(岡田 耕)

【スキ御礼】選評*沢百本縒りて太しや雪解川

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