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1on1とコーチング、何が違う?

近年、注目される1on1とコーチング。皆さんはこれらの違いをどう表現しますか?

さまざまな視点や立場から違いは語れそうですが、ここでは両者の起源に立ち返ることで違いを探っていきましょう。




1on1は、1対1の個別ミーティング


1on1は、上司と部下、または同僚同士が行う、1対1で行われる定期的な個別ミーティングの形式を指します。

1on1が行われる目的は様々で、代表的なものには「業務上の問題・課題解決」「相互理解・信頼関係構築」「人材育成・成長促進」などがあります。

ミーティングで扱われるテーマも幅広く、目標の設定やパフォーマンスの評価、業務上の悩みなどの仕事に関する話題だけでなく、心身の健康状態やプライベートな出来事なども取り上げられることがあります。

「何を話すべき?」という悩みをたびたび耳にしますが、目的と状況に応じたテーマであれば、そこは拘らなくても良いでしょう。


コーチングは、個人の自己成長や目標達成を促す手法


コーチングは、個人の自己成長や目標達成を促す手法です。

現在、コーチングは様々な分野で広く活用されており、分野によってその目的やテーマも違ってきます。したがって、ここでは特に「ビジネスコーチング」に対象を絞ってみていきましょう。

ビジネスコーチングの目的は1on1と同様にさまざまですが、主には相手の能力や意欲を引き出し、主体的で自発的な行動を促すために行われます。「人材育成・成長促進」という観点では、1on1と同じです。

コーチングで扱うテーマも多岐にわたりますが、そのなかでも事業や仕事に関するものが多いようです(参考:ビジネスコーチングで扱うテーマ(主題)は?

たとえば、コーチングする相手が経営層やマネジメント層の場合、事業・組織成長、人材育成などがクローズアップされます。また、役職に関係なく共通するテーマとしては、個々のキャリアや人間関係の悩みなどが挙げられます。

こうして見ると、同じと言えば同じであり、違いを見出そうとすると、目的やアプローチにその違いがありそうです。その違いを特定するのは難しそうですが、起源をたどれば、また違った視点が明らかになるかもしれません。


ビジネスコーチが導入され始めた背景には、賃金制度の変化がある!?


それでは両者の起源から違いを探ってみましょう。

ビジネスコーチングの起源は1950年代にさかのぼります。米国の経営学者、マイルズ・メイス(Myles L Mace)氏が著書『The Growth and Development of Executives』の中で、「マネジメントにおいてコーチングは重要なスキルである」と述べたことが始まりとされています。


同時に、当時の米国における賃金制度の変化も影響を与えたと言えるでしょう。

米国企業の給与体系は、職務内容によって賃金を決定する「職務給」と、能力に応じて賃金を決定する「技能給」に二分できます(参考:アメリカの賃金制度)。

ビジネスコーチの導入が進んだ当時、米国では技能給を導入した企業が出てきており、それに伴い、管理職は部下のパフォーマンス向上が求められるようになりました。技能給は実力相応の給与を求める人材にとってはメリットの多い賃金制度ですが、そうではない人材にとっては、評価者によって判断基準が異なることがあり、モチベーションの維持・向上に難しさがあるからです。おそらく、こうした背景を受けて、ビジネスコーチングが導入され始めたとされたと考えられます。


1on1の起源は、あの著名な経営者の書籍がきっかけ!?


では、1on1の起源はどこにあるのでしょうか。

その起源は、1983年にIntel社の元CEO、アンドルー・スティーヴン・グローヴ(Andrew Stephen Grove)氏の著書『High Output Management』が始まりと考えられています。

本書を契機に、まず1on1の導入を進めたのが、シリコンバレーのIT企業です。

IT業界はとりわけ事業環境変化のスピードが速く、不確実性も高い業界と言えます。こうした環境下で、事業・組織目標の達成のためには、メンバーが持つ課題をタイムリーに把握し、それをもとに意思決定することが何より重要です。また、すべての意思決定をマネジャーが行うのは現実的ではないため、メンバー自身が自律的に判断・行動してもらうことが大切です。こうした環境を踏まえ、1on1という手法は非常に合っていたのでしょう。今ではアメリカ全体で一般的なマネジメント手法となったとされます。

日本では2012年、ヤフー株式会社が1on1を導入したことがきっかけとなり、その認知が拡大したことは記憶に新しいでしょう。現在では、日本の企業の約7割が1on1を制度として取り入れているとも言われています。


1on1は経営・組織観点、コーチングは人観点から始まった


両者の起源を考えると、次のような違いがあると言えそうです。

1on1は、VUCA(不確実性、不安定性、複雑性、曖昧性)を代表するように、現在の環境変化を踏まえて導入が進んだマネジメント手法です。経営や組織の観点から導入が進んでいます。

一方で、ビジネスコーチも同様に環境変化の要素がありますが、それ以上に人そのものに焦点を当て、能力や意欲を引き出し、パフォーマンスを向上させることがきっかけとなっています。人そのものに対する自律性と主体性を育むことが原点と言えるでしょう。

経営や組織の観点から始まったものなのか、人そのものに焦点を当てて始まったものなのかが、両者の違いと言えそうです。

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