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【感想】『フォース・ウィングー第四騎竜団の戦姫ー』上下 ※ネタバレ有
Amazonでとんでもないレビュー数でその上高評価すぎるファンタジー小説が日本語訳される。そんな感じのツイートを見かけた時から、ウキウキで日本語訳が発売されるのを心待ちにしていた。海外で覇権というジャンル「ロマンタジー」の触れ込みも、いや、それ既知ジャンルでは?という確認するため我々は密林の奥地へと向かった精神を掻き立て……思わず買ってしまった。(普段アニメ化映画化される作品気になったらすぐ図書館へGOしてしまうけれど、英語できぬ故日本語訳を待つしか無く……そりゃ出たら買っちゃうよね)
発売された当初上下巻(NOTハードカバー)のお値段にチキり倒し、様子見で上だけ買うか。いやこの初回配本限定のキラキラホログラムカバーとやらを確保するために下まで買って積んでおくかと悩んだ末、もう今年はこれで買う本は最後と決めえいやっと購入。あの時の私、グッジョブ。
クリスマスプレゼントで図書カードを貰った、これからお年玉を貰う、まだ自分へのクリスマスプレゼント、1年お疲れのご褒美を買っていないそこの貴方。このnoteを開いてここまで読んでしまったのが運の尽きです。買いなさい。『フォース・ウィング』を!!!!!!!
お値段を前に、とりあえず上巻だけ買ってみようかなという気持ちになるのは分かるけれど、上下巻一気読みを強く推奨します。
分厚さに負けないで!!
ロマンタジーって既知ジャンルでは?
乙女ゲームとか、女性向けの恋愛小説か、ラノベの人外×系の恋愛ものとか。そういうやつが海外に知られてないから「ロマンタジー」とかいうジャンルが海外で出来上がってるだけじゃないの?海外読書好きニキ達の間にジャパンのオタク作品があんまり浸透してないから新たなジャンルみたいになってるだけで、実際読んでみたらしってるやつじゃないの??そう思っていた。
でも実際読んでみると、違う。
ジャンル名だけみると明らかに既知ジャンルの香りがするんだけれど、読んでみると全然違う。
恋愛はある。ファンタジーもある。
乙女ゲームや恋愛小説・少女漫画と比べると政治面というか世界観がシリアス・厳しすぎ、厳しいファンタジー・SFと比べると恋愛要素がありすぎる。これは確かに新ジャンル……。
ゲームオブスローンズを日本人向けにエログロ描写をああだこうだしたらこうなる、じゃないけれど。
スパダリ上司がどうのこうのとか、そういう系の恋愛小説の要素はあるし、なんなら海外ものらしくえっつぃいシーンがあるけれど、全体として恋愛恋愛!という感じではない。んだけれど恋愛要素があり。
厳しめの、幼女戦記とかロード・オブ・ザ・リングとかみたいなシリアスな命軽めの世界観のファンタジーもある。
Twitterでいわれていた「厳しいハリー・ポッター」とかが説明として本当に的を得ているとうか……。
大人も楽しめる児童文学ハリー・ポッターから、児童文学を抜いて(「フォース・ウィング」面白いけど絶対に児童に読ませてはいけない。ゲームのレーティング的に言ったら確実にZ)、世界観に厳しさを盛り盛りにして、魔法学校から魔法軍事学校に変換したらフォース・ウィングになる。多分。(これは個人のイメージであり、実際とは異なる場合があります)
恋愛要素はあるのだが、ストーリー全体はかなり暗い。厳しめのガンダムくらい暗い。
現状『フォース・ウィング』しか読んでないから断言はできないけれども、PSYCHO-PASSくらいの無慈悲さと複雑シナリオでファンタジーして恋愛をがっつりやるのが「ロマンタジー」なんだろうな。とぼんやり思っている(FFとニーア混ぜたらロマンタジーなのでは、と書いてて思ったり(FFはにわかなのでイメージで混ぜています。すみません))。
もしかしたら、いやこれ明らかに既知ジャンル!なロマンタジーもあるのかもしれないけれど、翻訳されてないと読めないから知らんし。
これはカプ論争が起こるやつですわ
一応言っておくとここで言うカプ論争はNLである。BLではない。「カプ」というとBLを想起してしまうのは承知だけれど、分かりやすく表現するためにあえて使用させて貰う。
主人公のヴァイオレット、先輩兼仇の息子ゼイデン、年上幼なじみでヤンデレかが止まらないデインの、ゼイデン×ヴァイオレット、デイン×ヴァイオレットのカプだ。
なんとなく上記で察した方もいるかもしれないが、この作品、非常にメインのキャラクター達の関係図がややこしい。
主人公のヴァイオレットは家族全員軍人で、母:騎手(ドラゴン乗り)&司令官(ヴァイオレットと不仲)、父:書記官(多分情報本部的なやつ)、兄:騎手(故人)、姉:騎手。そんで末っ子のヴァイオレットちゃんは、身体弱すぎるあまり、関節外れやすすぎる&その他諸々脆すぎるので書記官を目指して入学前から訓練していたものの、入学前に父が亡くなってしまい、母から無理矢理騎手科に入学させられ……。と家族関係が既にややこしい。
そしてゼイデンとヴァイオレット関係がさらにまたややこしく……。
ゼイデン父:反逆者、ヴァイオレット母に処刑される、ヴァイオレット兄を殺す。
というのがストーリー開始時点で、途中でヴァイオレットがタールン(めちゃ強ドラゴン)と絆を結んで相棒関係になるとさらに関係が複雑になり。
ドラゴン……人間の方が短命なので必然的に絆を結んできた(相棒関係の)先代、先々代の人間がいる。絆を結ぶ度に加護的な力が強力になっていき、どちらかが死んだりするとショックで立ち直れなくーー死んじゃう。番がいる場合はどちらかが死ぬと死んでしまう。
ゼイデンとヴァイオレットの相棒のドラゴン、番……。
お互い仇の子供同士で、そこに絆を結んだドラゴンとの関係が上乗せされた結果、どちらかが死ぬと自分まで死んじゃう関係になっちまっているのである。吊り橋の揺れがあまりに激しすぎる……。
ややこしい!どうやって布教しろっていうねん……。ここまでの説明を布教時にしないといけないのが一苦労じゃ……。
面白いから読めに帰結してしまう(複雑で面白い世界観の説明を放棄)。
文字で書いてるからそこまで複雑に感じられないかもしれないが、関係図を書いたら矢印があっちこっちいって大変である。
ちなみにここまで蚊帳の外にしてしまっているデインは、デイン父:ヴァイオレット母の部下、的な感じだった。確か(ゼイデン×ヴァイオレット推しなのでデイン関連の記憶が薄い)。
三人の上司部下的な力関係は、ゼイデン>デイン>ヴァイオレット。
いざという時軍規を破ってでもヴァイオレットを助けてくれるゼイデン。
いざという時軍規を破って助けてくれないデイン。
大事にするあまり奥手で外堀埋めて守りたいゼイデン。
大事なものは仕舞っておきたいタイプのデイン。
褐色黒髪ウェーブなゼイデン。
色白金髪なデイン。
行動と見た目とっても正反対の二人。
そう、この作品、海外からやってきましたなのに、オタクの急所を的確についてくるのである。
マジで堪ったもんじゃ無い。ハリポタのマルフォイが特定の村を焼き討ちにするとかそういうレベルじゃない。
メインの三人しか今のところ紹介していないけれど、サブには昨今流行の武闘派なCV石川由依が似合いそうな女の子がいたりする。(ゼイデンのお仲間)(密かに推し。名をイモジェンという)
PVに梶さん持ってくるくらい、完全にオタクを狙い撃ちにしようとしている。狙われている感が半端ない。
なんか凄い馴染みがある。翻訳文が自然すぎる(まじで読みやすい。ストーリーが簡単という意味では無く)のも相まって、下巻の途中から翻訳であることを忘れるくらい面白い。
ただし命軽い
ただしとか書いているが、鬱ゲー・鬱アニメ好きとしては大歓迎。
(つまり、鬱展開好きが歓喜するような鬱展開が恋愛と同時進行で展開されていきます)
流石厳しいハリー・ポッター。やることが違う。(ありがとう。大好きです)
ドラゴンと人間の絆関係も、これはその内どっちか死んじゃうやつだぜと、私のシックスセンスならぬヨコオセンスが告げている(ヨコオさんはニーアシリーズ(鬱ゲー)を作っている人)。
登場人物の退場頻度としてはリゼロレベルと言っても過言ではない。ただし退場するのは主人公ではなくモブ~準主役……なんならヴァイオレットちゃんは実は第1部の主人公で、第2部のここからはこの子が主人公ですと言われても不思議じゃない勢いで退場者が出てくる。
橋から落ちたり、まるでSASUKEな試験課題から落下したり、ドラゴンに焼かれたり、慈悲とかない闇の勢力にやられてしまったり。
進撃の巨人ばりに退場者続出なのだけれども、主人公としっかり関係値築いてきたキャラクターでも容赦無く退場していくので辛い……。(けどそこがいい)
しっかり厳しめファンタジー!
魔法、勿論ある!
がしかしドラゴンと絆を結んで、ドラゴンが力を媒介し始めてからでないと使えない……という制限が良き……。
しかもドラゴン達、しっかり上位存在らしく傲慢で尊大。人間と絆を結んで力を貸してくれるし、絆結びすぎると人間共々共倒れになる。んだけれど、あくまでその関係は人間からでは無くドラゴンから持ちかけられるもの。人間に選択権はない。アイツと絆を結びたい!はドラゴンにはできても人間にはできない。
そんでドラゴンがあっちに飛びたいと申せば人間はそれに従うしか無く……。
いいじゃん。馴れ合わないドラゴン、めっちゃいいじゃん。
言葉は通じてコミュニケーション取れるのに、根底ではどこまでも交われない感じめっちゃ良き。好きですそういう、ふとした瞬間に人外見せつけられるの。
しかもこの作品、ドラゴンの尻尾がモーニングスターだったり剣だったり羽根だったりと、尻尾の形状に特徴ある系ドラゴンなのだ。
シリアス展開、がっつりファンタジー設定続いてきたかと思ったら、なんかいきなりラノベ的なノリかましてくる。ビックリするけど、好き。こういうの、好きよ!!
そしてこの馴れ合わない上位存在ドラゴンがいるファンタジーの上に、ミリタリーが乗っかってきてさらにシリアスに拍車が掛かる。
ドラゴンとの力関係でただでさえままならないのに、軍の規則がどうのとかでさらにままならなくなっていく主人公達……!!
1巻の時点では、あんまり軍の内部とか、市井の様子とか、王国っぽいのに王族は具体的にどういう感じなのかとかあんまり描かれてないんだけれど。そこはかとなくただよう腐敗臭!!
あんまりにも話しが大学内で完結してるもんだから、途中王国だっていうのを忘れてた。
ファンタジー物なんだけど、あくまで人間は魔法が使えないから、人間サイドの政治というかそういうところの雰囲気はミリタリー物のハードさであんまりファンタジーっぽくない。
ファンタジー要素引いたら普通にミリタリー物になりそうな雰囲気。
王国とドラゴンのセットって王道だけど、親密な相棒の関係でも無く、ドラゴンがふらっと祝福授けたとかそういう感じでもないのが新鮮だし、好き。
しかもこの上、軍が禁書にしている「おとぎ話の絵本」に出てくる怪物が実は実在しているんです!なんて王道展開も入れてくる。
なんだこの、ファンタジーの色々全部載せなのにクドくならずに逆にめちゃめちゃ面白くなってる小説……。(ただし要素てんこ盛り過ぎて布教の文章も化け物になってしまう)
ドラゴン(四つ足)がワイバーンを蔑んでる描写とか、高まる……!!
しかもしかも、この実はな展開というか、隣国とのあれそれが出てくるのは1巻の終盤も終盤なのである。つまりめっちゃ良いところ、周りの情勢が明かされ始めた所で2巻へ続く……になってしまう。く~~続き読みたいけど英語レベルが低すぎて挑戦できない(原書は2巻まで発売済みなので、英語ができると先が読める)。
早川書房の人がスペースで辞書片手に読めますよ!とか言ってたけど、早川書房の人が英語できないわけないし!作中の専門用語を察する能力が自分あるとも思えないし……。ストーリーだけじゃなく、英語ができないけど続きが気になって夜しか眠れない日本人にも厳しい。
癒やしのアンダーナ
アンダーナちゃんまじでかわいい。
(最後に推しの布教である)
アンダーナウラム、愛称アンダーナ。主人公のヴァイオレットと絆を結ぶ、タールンじゃ無い方のドラゴン。
金ぴかキラキラ金色のドラゴンにして、幼い故に無限の可能性(能力的にも)秘めたきっとこれからのキーパーソンになるフェザーテイルのドラゴン。
ノリというか明るさが完全にオタクに優しいギャル。
アンダーナちゃんが一言喋るだけで、それまでのシリアス展開で荒んだ 心が救われる。
ヴァイオレットも救われている。
かわいい、あかるい、強い。そしてかわいい。
もはやアイドル。作中のドラゴンの声は絆を結んでいる人間にしか聞こえない(あなたの脳に直接語りかけています状態)をどれだけ恨んだことか。
このアンダーナちゃんのかわいさと健気さ、全人類に伝わるべき。
暗い展開苦手勢のための救済ポイントとしか思えないかわいさ。
幼さ故に出番はタールンや他のキャラと比べると少ないんだけれど、もうね、輝きが違うからさ。たまにの一言だけで十分なんだわ。
ヴァイオレットがピンチの時には誰よりも駆けつけて力を貸してくれる。
読者の心が荒んで来たら寄り添って肩を抱いてくれる(そういう時はヴァイオレットのピンチなのですが)。
ハードな世界観だから、アンダーナちゃんの純真さがとてつもなく輝いている。光。我らの光ですよ彼女は。
きっとその内作中でアンダーナちゃんのファンクラブ的なのができる。描写が無くても見える。アンダーナちゃんのファンクラブが。できない方がどうかしている。
だって、早川さんがやってるフォース・ウィングの感想投稿キャンペーンで抽選で当たるピンバッジ、どうみてもアンダーナちゃんだもん。あの尻尾の凹凸、フェザーテイルのフェザーな感じを表しているに違いない!
オタク知ってるぞ。これ、ファンクラブが本人に隠れて作って頒布してるグッズじゃん。気がついたらタオルマフラーとか色々できてるパターンのやつじゃん。
ヴァイオレットの相手はゼイデンかデインかで論争が起きそうだけど、真の勝者はアンダーナちゃんかもしれない。
まじでそれくらい可愛いし、癒やし。
なんならアンダーナちゃんがその内、人になってヴァイオレットをさらっていくかもしれない。
「水星の魔女」みたく、「人間って遅れてるんだね」っていうアンダーナちゃんが爆誕するかもしれない。
まあ、そんなアンダーナちゃんも1巻の最後に爆弾展開落とされてるんですけどね。(フォース・ウィングの世界は厳しいぜ)
2025年の読書始めは『フォース・ウィング』で決まり!!
Amazonのリンク貼ってますけど、本屋さんに行ったらキラキラホログラムカバー(初回入荷限定?的な限定カバーらしい。値段は通常版と一緒)まだ置いてあるところは置いてあるんで、本屋さんに買いに行きましょう。
フランス語検定受けに行ったとき(11月)、博多駅の丸善でまだ売ってるの見ました。一昨日くらいに行ったゆめタウン佐賀の紀伊國屋にもまだありました!!探して……ホログラムカバーを探して……ファンタジー!って感じでテンション上がるので是非探して……そして上下巻一気買いして一気読みして……。
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