不安の種から花は咲くか否か
その男は人の痛みを感じることがあまり得意でなかった。だから他者の痛みを想像した。そこでそれぞれに正義があることを知った。自分が思う、相手にとって最も効率的な言葉を発することで、満足し、無意識にも他人の痛みを養分としていた。
彼は言葉を信じていた。上手く使いこなそうとした結果、意味だけが通る実態のない空虚な言葉を使用するようになった。
そして直線的な力を嫌った。積み重ねてきたものが、誰かの意図やまた無意味な行動によって破壊されることを何よりも恐れていた。誰よりも力が強かったなら