1月20日 あたまのおかしい上司
腰が痛い。痛くて痛くてたまらない。
本日、頭がおかしいことで有名な上司が久しくバイト先にやってきた。普段は支社にいる頭のおかしい人だ。頭のおかしい上司と事務所で2人きりになってしまって、ああ、この人の頭がおかしくなければ、会話を弾むだろうなと、悲観的にもなりながら、とは言っても私はもう一端の26歳な訳で、大人というのはいかに間を埋めることが出来るか否かが全てなので、私は意を決して「ぎっくり腰になっちったっす。」と震える喉を出来るだけまっすぐに届くよう発声したのですが、こちらの気合なんてのは頭のおかしい上司には届かないのは至極当然、「普段の行いが悪いからですね笑」と冗談と皮肉の間を突くような、否、敢えて両方を兼ねたようなことを言いやがったのです。このようなことを言われた時、私は何故か、媚びたくなるのです。腹が立てば立つほど、相手をおだてたくなるのは何故なのでしょう。私は事務所飛び出して、頭のおかしい上司が好きなアメリカンコーヒーを作り、ミルクをひとついれ、彼に差し出しました。彼は一瞬驚いた後、ああ、ありがとう、なんてことを言って、ニコニコとコーヒーを飲み始めたのであります。そのあとも、悩んでもいない仕事の相談をして、コンドームよりも薄いアドバイスに深く頷いてみたり、2杯目のコーヒーを差し出したりして、彼は見る見るうちに上機嫌になっていきました。そして彼がそろそろ帰るというので、出口までお見送りをして、今日はありがとうございましたとか、また来てくださいねとか言って、そしたら彼が、僕がいなくても大丈夫でしょとかそんなことを照れ臭そうに言って、そしたら僕が、確かにそうですね。では。と言って、彼に背中を見せ、一度も振り返らずに店内へと戻るのでした。今日は一度も彼と目が合わなかったので良かったです。
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落合諒です。お笑いと文章を書きます。何卒よろしくお願いします。