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二年目の幸福論。

「家に帰ればおでん」の魔法を知ったのは、去年の冬。
週末に鍋いっぱいのおでんを仕込んでおいて平日の夕食には毎日それを食べる、というルーティン生活をやってみたところ、これが想像以上に良かった。
献立に悩まなくていい、温めるだけですぐに食べられる、といったラクさはもちろんなのだが、それ以上に、精神的な安定感が高まるという予想外の効果がわかり、おかげで毎日をだいぶおだやかな気持ちで過ごすことができたのだ。

あの日々が忘れられず、さらに今年は冬まで待ちきれず、9月の終わりごろから始めてしまった。果たして2年目も、同じ魔法は通用するのか。


ベースにするのは、市販のレトルトおでん。スタンダードな鰹出汁、魚介スープ仕上げの海鮮炊き、鶏がら出汁の鶏鍋風、この3種類が基本ローテーションで、ときどき目新しいのを見つけてはお試ししている。正直、そこまで明確な味の差は感じないが、どれもおいしいし、具材が少しずつ違っているのもうれしい。ここに好きな具材を足すだけで、私のためのおでんができあがる。

大根とこんにゃくは多めに。肉は牛すじか厚切りの豚バラ、たまーにシャウエッセン。じゃがいもは小さめなら丸ごと、大きければ半分に切る。厚揚げは、去年いろいろ食べ比べて本命と決めたものを今年も。賞味期限が近い豆腐や半端に残ったキャベツの芯なんかがあれば、それも入れちゃう。セブンイレブンのだし巻き卵は、最近になって発見したスペシャル具材。最後に足す水と出汁の量は、いつも適当。

いろいろ工夫してつくってみても、できあがるのは毎回おでん。だから食べるのも毎日おでん。それなのに全然飽きないのは、どうしてだろう。
ビールもハイボールも、どっちにも合う。ひやおろしを開ければ、もう間違いなし。柚子胡椒だったり、からしだったり、味噌だれも試してみたり。横にコンビニのカップデリなんか添えると、まあ豪華。
毎晩おいしい。毎晩うれしい。そんなささやかな幸福感とともに、一日がおだやかに終わっていく。

家に帰ればおでんがある。この言葉が持つ魔法のような効果は、2年目になっても相変わらず強かった。

仕事に行きたくなくて沈んだ気分で玄関を出る朝も、「夜はおでんだ」と思えば、とりあえず一日がんばってみようと切り替えられる。筋が通らない主張で押し切ろうとしてくる人に辟易しても、「うちはおでんなんだ」と思い出せば、怒りの感情が横道へと逸れていく。
そんなことでメンタルが安定してしまう私が変わっているのか、はたまた世の中のたいていのことはおでんほど重要じゃないということなのか。この問いはくだらないようでいて意外と本質的なところである気もしているので、ゆっくりじっくり検証していきたい。

というわけで、今年も「おでん幸福論」を唱えながら、深まりゆく秋を過ごしています。


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