【続編⑥〜第三章 「4.【K:呼吸】横隔膜呼吸」、「5.【A:歩く(歩行)】肩甲骨歩行】 これならできる!運動指導初心者の指南書〜特定保健指導、介護予防指導などで必ず役立つ!
4.【K:呼吸】横隔膜呼吸
みなさん、深呼吸してみて下さい。吸った時に胸、あるいはお腹が膨らみましたでしょうか?今更ですが、呼吸は肺臓の働きによるものですが、肺臓は心臓のように独自の力で動いているのでしょうか?
そうではないのですね。肺臓には心臓のように筋肉が備わっていないので、自らの力で動くことはできません。肺を動かしてくれているのは呼吸筋、あるいは呼吸補助筋と呼ばれる筋肉です。
息を吸う時に働く代表となる筋肉は「横隔膜」です。しゃっくりはこの横隔膜の痙攣のこと。しゃっくりはお腹あたりがヒクヒクするわけですよね。横隔膜の場所がイメージできますでしょうか。肋骨の下端に付いていてドームのように上に広がった形になっています。このドームが収縮して下に下がると肺臓が広がります。
この横隔膜と一緒に働いて呼吸に関わる筋肉が「肋間筋」です。肋間筋は二重構造になっていて、「外肋間筋」と「内肋間筋」があります。横隔膜と一緒に動いて息を吸う時(吸気)に関わるのが「外肋間筋」になります。
息を吐く時(呼気)は、横隔膜と外肋間筋などの吸気に関わる筋肉が緩むことで胸郭が元に戻ろうとして息を吐きます。息を完全に吐き切ろうとする時には「内肋間筋」が収縮して胸郭が小さくなります。
基本、呼吸に関わる筋肉は横隔膜が代表となります。そして、この横隔膜を意識的にしっかり使った呼吸がみなさんもよくお聞きになる「腹式呼吸」と呼ばれる呼吸法です。
腹式呼吸というとお腹を膨らます呼吸になるわけですが、前段での説明の通り、息は肺臓で出入りするのであって、お腹(胃袋)に空気が入るわけではなく、横隔膜が下に広がり腹腔が圧迫されてお腹が膨らむということです。
腹式呼吸は気持ちを落ち着かせたい時などのリラックス場面でよく用いられますよね。これは、呼吸が自律神経と深い関わりがあるからなんですね。
自律神経は、闘うか逃げるかのような興奮状態の時に体をコントロールする「交感神経」と、休息あるいは消化吸収時に体をコントロールする「副交感神経」があります。
横隔膜は吸気時に筋肉を収縮させて下に下がり胸郭を広げて息を吸い、その緊張を解いて力を緩めて息を吐きます。しっかり腹式呼吸で息を吸い、細く長く息を吐き、横隔膜の緩んでいる時間を長くしていくと徐々に「副交感神経」支配となり、心身ともに落ち着いてきます。
ですので、この横隔膜をしっかり使った呼吸法を繰り返すことは横隔膜をはじめとする呼吸筋の筋トレにもなり、肺臓もしっかり稼働させることになります。
肺炎で亡くなる方の97.9%(厚労省 人口動態統計 2021年)は65歳以上の高齢者です。その予防対策の一つは免疫を下げないように適度に運動を実施すること。この横隔膜呼吸はいつでもどこでも誰でもできる筋トレ運動です。ぜひ活用していただきたいです。
<実践>
①椅子に腰掛けて、両手をお腹に置いてお腹が膨らむように息を吸う。上手くいかないようであれば、仰向けに寝て両膝を立てて、両手をお腹に置いてお腹が膨らんだり凹んだり、上下に動いているか確認しながら呼吸する。
②呼吸とお腹の動きの連動が確認できるようになったら、鼻から3秒で吸って、2秒ほど保持して、口から細く長く10秒で吐く。
③まずは3セット(1分間)から始めてみる。朝、午後、寝る前に、1日の中で何度かやってみる。慣れてくれば、1日に15分(分けても良い)を目標とする。
④慣れてきたら、呼吸をしながら「冷たい空気が鼻から入ってきて、温かい空気が出ていく」ことに意識を向ける。
*注意*
・最初はたくさん吸おうとせず、まずは呼吸とお腹の動きが連動しているか
を確認する。
・肩や首に力が入っていないか時々肩を上下に動かしたり首を回してみる。
・10秒で息を吐く時、力んで吐き切るところまでやらない。もし途中で息が足りなくなるようであればその段階で吸い始めても良い。徐々に10秒で吐けるようにしていく。
・冷たい吸気、温かい呼気を意識しながら呼吸を行っている時、他ごとに意識が向いた時は、「他ごとを考えてしまったな」と気付き、また意識を呼吸に戻すことを繰り返す。他ごとに意識が向いてしまったことは間違いではなく(是非の判断をしない)、大切なことは気づくこと。そしてまた意識を呼吸に戻すこと。
5.【A:歩く(歩行)】肩甲骨歩行
あなたは自転車にいつ頃から補助輪なしで乗れるようになりましたか?きっと、親、あるいは兄弟から自転車の乗り方を教わった記憶はどなたにもあるのではないでしょうか。
では、いつ頃から歩けるようになりましたか?そんな記憶はありませんね。また歩き方を教えてもらったと記憶する人もいないでしょうね。
人間としてこの世に生まれたならば、自力で立って歩くということはあらかじめ脳、体にインプットされた能力(本能)ですよね。歩けることはごく当たり前のことです。ですから「歩き方」を親からはもちろんのこと、学校で教えてもらうこともないですね。
それでは、「正しい歩き方」というものはあるのでしょうか。私が考える「正しい歩き方」は「ステージ上を颯爽と歩くモデル歩き」のことではありません。「スムーズな足運びで、楽に長く歩き続けれる歩き方」のことを指しています。
では「スムーズな足運び」にするためにはどうしたら良いでしょうか?
足をどう動かすのかと考えたいところなのですが、実は上半身の使い方にヒントが隠されています。
上半身のどこか? 「肩甲骨」です! 実はこの肩甲骨の動かし方で歩き方は変わります!
肩甲骨を意識してしっかり動かして歩く「肩甲骨歩行」を是非知っていただきたいのです。
詳細は次章で説明いたします。
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