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#音楽 記事まとめ

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楽曲のレビューやおすすめのミュージシャン、音楽業界の考察など、音楽にまつわる記事をまとめていきます。
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#ジャズ

ジャズと落語: 100年に渡る長い関係。①

レコードの歴史を私なりに考えてみた。今回はジャズレコードと落語について考えた。レコードは百年以上の歴史をもつ音楽メディアだが、令和になってなぜか復活し、現在、音楽文化の世界で新たに大きな役割を果たそうとしている。落語に関しても落語家が増えているという点で成長を続けているのではないだろうか。私は学者ではないし、レコードや音楽文化を専門に研究しているわけでもない。(そんなことは百も承知、二百も合点という声も聞かれるが)いうなれば、現役のレコード店経営者としての実体験や、少しばかり

interview Esperanza Spalding:ミルトン・ナシメント、仏教、そして、脱植民地主義

エスペランサ・スポルディングが音楽シーンにおける、というか、少なくともアメリカのカルチャーにおいて最高の才能のひとりであることは否定のしようがないだろう。そんなエスペランサがミルトン・ナシメントとの共演作を発表した際に幸運にも取材することができた。以下のRolling Stone Japanの記事でそれを読むことができる。 短い時間だったが、ミルトン・ナシメントとのエピソードだけではなく、ウェイン・ショーターとの関係、アマゾンの先住民の権利を侵害する法律の制定に反対する曲を

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来年2月初単独来日決定!ハニャ・ラニ最新作「ノスタルジア」を聴くための音源集

ポーランドの才媛ハニャ・ラニの最新作『ノスタルジア』国内盤がコアポートから発売されました。海外盤はこれまでのソロ名義作品と同じく、UKマンチェスターのGondwana Recordsから。 オラシオはライナーを担当したのですが、2つ感じたことがあります。1つは、ハニャはまだアルバム・デビューしてから9年しか経っていないということ。その短い期間に最先端レーベルの一つであるGondwanaの看板アーティストの一人へと上り詰めてしまったことに驚きを禁じ得ません。 もう1つ。『ノス

interview Kenny Garrett:about The Ancestors 僕らは全員が一枚の同じ布からできた服を着ているようなものだ

ケニー・ギャレットが現代のジャズにおける巨匠だってことは説明不要だろう。 マイルスやブレイキーと共演した云々の話だけでなく、そもそもジャズのアルトサックス奏者で彼の影響を受けていない奏者を探すのが難しいほど、大きな影響を及ぼしている。そのうえでブライアン・ブレイドやクリス・デイヴ、ジャマイア・ウィリアムス、ロナルド・ブルーナーなどを自身のバンドから輩出している意味ではモダンジャズの系譜を受け継ぐスタンスを貫いているし、その一方でQティップからGURU、ミシェル・ンデゲオチェ

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interview Thandi Ntuli:ポスト・アパルトヘイトの南アフリカを癒すピアノの響き

南アフリカは世界屈指のジャズ大国だった。アフリカのジャズと言えば、ダラー・ブランドやヒュー・マセケラをはじめとした南アフリカのレジェンドの名が浮かぶという人も少なくないだろう。 そんな南アフリカのジャズはUKのBrownswood recordingsが『Indaba is』という編集盤がリリースしたこと、名門ブルーノートがンドゥドゥゾ・マカティニと契約したことなどにより、2010年代末、何度目かの脚光を浴びることになった。 何人かの名前がその中心人物として知られることに

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interview Davi Fonseca:ミナスで生まれた"脱植民地化を目指すブラジル独自の音楽"

ブラジルのミナス地方を核にした音楽コミュニティはアントニオ・ロウレイロやハファエル・マルチニらの登場により21世紀に入っても面白い場所であり続けている。 彼らの面白さはクラシック音楽を基盤にした高い水準の演奏技術や作編曲能力に加え、現代のジャズをはじめとしたグローバルなサウンドをも消化していること、そして、ブラジル由来の音楽要素を丁寧に織り込んでいること。世界的な流れとも共振しつつ、同時にブラジルでしか生まれえない側面も強く感じさせる。そのあり方はまさに彼らの先人でもあるミ

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interview Jharis Yokley:ホセ・ジェイムズが発掘し、BIGYUKIを魅了する新世代ドラマー

ジャリス・ヨークリーの登場は鮮烈だった。 クリス・デイヴ、ネイト・スミス、リチャード・スペイヴン。現代を代表するドラマーを自身の作品に次々に起用してきたホセ・ジェイムズが突如無名の若者をレギュラードラマーに抜擢したからだ。 ホセのライブを観れば、彼のバンドにおけるドラマーの重要度は一目瞭然。ホセの音楽は誰をドラマーにするかでそのクオリティが決まってしまう、と言っても過言ではない。そんな責任重大な席に座ったのがジャリスだった。 ジャリスはそんな期待と不安が混ざり合った状況

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interview Melissa Aldana:タロットと内なる教師、そして、ウェイン・ショーター

ティグラン・ハマシアンやアンブローズ・アキンムシーレ、セシル・マクロリン・サルヴァントらを輩出したセロニアス・モンク・コンペティションのサックス部門で優勝したサックス奏者であり、現代屈指のサックス奏者のひとりとして名を馳せるメリッサ・アルダナは常に高いクオリティの作品を発表し、高い評価を得てきた。 ただ、ブルーノートとの契約後、これまでとは少し異なる音楽性に変わっていた。プロデューサーにギタリストのLage Lundを迎え、ベースにPablo Menares、ドラムのKus

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ショーン・マーティンを追悼するプレイリスト10。 Best works of Shaun Martin 

Shaun Martin(ショーン・マーティン)がこの8月に45歳の若さで亡くなった。Snarky Puppyの鍵盤奏者やプロデューサーとして活躍し、7度もグラミー賞を獲得した。ショーンを偲んで、知られざる彼の功績とベスト・プレイを紹介したい。 現存するグループにおいて自分が最も敬愛するグループと言っても差し支えないSnarky Puppy(スナーキー・パピー)。 何と言っても、昨年の7月オランダのNorth Sea Jazz Festivalまで、観に行ってしまったくらい

伊藤悠美という、今月スイスから来日ツアー中の壮大且つ謙虚なアーティストを知っているか!!(知ってくれ

8月、とても逢うことを楽しみにしていたアーティストが来日している。 Yumi Itoこと、伊藤悠美。彼女の歌声や演奏からは音楽家の両親の存在と、育ってきた土地の風土をしっかりと感じさせる。 ポーランド人の母親は声楽、そして日本人の父は鍵盤ハーモニカ兼ピアノ奏者。クラシックをバックボーンに持つ彼女はコンテンポラリージャズ系のシンガーソングライターで、私と同い年ながら世界各国をツアーで回り、様々な著名ジャズ奏者と共演しながら素晴らしいパフォーマンスを繰り広げている。 現代ジ

interview Antonio Loureiro:エレクトロニカ、アマゾン先住民、北東部のダンス音楽などの影響を反映する初期2作

2010年ごろ、アントニオ・ロウレイロという才能が発見されたときのことはよく覚えている。2010年に1stを高橋健太郎が紹介したことで彼のことが日本でも知られるようになったのだが、僕が聴き始めたのはセカンドアルバムの『So』からだった。 ブラジルのミルトン・ナシメント周辺コミュニティのサウンドに通じるもの、もしくは当時日本で話題になっていたアルゼンチンの新しい世代によるフォルクローレの作品群とも共通するものを感じただけでなく、2000年以降のアメリカのジャズを思わせる作編曲

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interview Àbáse "Awakening":ベーシストが僕を見て「Sun Ra!」とだけ言ったんだ

ハンガリー人のアバセはずっと旅をしているようなアーティストだ。ハンガリーでの活動を経て、ブラジルに渡り、アフリカ系ブラジル人のコミュニティに入り込んで音楽を作ったと思ったら、ベルリンに移住し、また新たな音楽を模索し始めた。 当初、彼の名前が局地的に話題になり始めたころ、『Invocation』のアフロビートの印象があった。 ヨーロッパから現代ジャズを経由した謎のアフロビート・プロジェクトが出てきたと思っていたら、オーストラリアのドラマーのZiggu Zeitgeistとの

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瀬川昌久『ジャズで踊って 舶来音楽芸能史 完全版』

便乗商法、というとあまり良いイメージがありませんが、こうした便乗商法なら大歓迎。NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の放送にあやかって、戦前の日本のポップスの歩みを活写した名著が、新原稿を加えて「完全版」として文庫化されたのですから。 著者の瀬川昌久は1924年生まれ。富士銀行に勤務しながら、戦前のジャズの紹介を積極的に行った人物です。また、1950年代に渡米した際には、カーネギーホールでチャーリー・パーカーやビリー・ホリディの実演に接したこともあるという、まさに“ジャズの

interview Ambrose Akinmusire:自分自身のブルース、2020年代のブルース

2010年代後半に入ってから、アンブローズ・アキンムシーレの影響力を徐々に感じるようになっていた。数多くのインタビューを行う中で実際に名前を出されることも少なくなかったし、若手の作品を聴いたときにそのサウンドから感じることも何度もあった。日本のジャズミュージシャンと話していても彼の名前が出ることがあった。いつしか確信に変わった。 そもそもアンブローズがリリースする作品がいちいちすごかった。2011年の『When the Heart Emerges Glistening』以降

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