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#音楽 記事まとめ

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楽曲のレビューやおすすめのミュージシャン、音楽業界の考察など、音楽にまつわる記事をまとめていきます。
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2023年6月の記事一覧

書籍『女性ジャズミュージシャンの社会学』を読んで

「5月のいろいろ(2023年)」に書きましたが、追記していくとかなり長くなってきたので、別記事でポストします。 こちらの書籍です。 『女性ジャズミュージシャンの社会学』 まずは、「5月のいろいろ(2023年)」に書いたものです。 ディスクユニオンで物色していた時に、たまたま見つけた本。 当事者として読んでおこうと思い、買いました。 フランスのジャズ界での社会学調査。 ただし、調査して書いた著者がジャズシンガーなので、第一部のジャズシンガーをめぐる状況の項目は主観的な目

橋本徹の2023年上半期ベスト・アルバム50枚

(1)Speakers Corner Quartet『Further Out Than The Edge』 (2)Scott Orr『Horizon』 (3)Julia Sarr『Njaboot』 (4)Gia Margaret『Romantic Piano』 (5)Lionmilk『Intergalactic Warp Terminal 222』 (6)ANOHNI And The Johnsons『My Back Was A Bridge For You To Cross

アシッドジャズ前夜 英国に漂うジャズの気配【前半】

あいも変わらずレコードを買っているが、あの頃レコードは中古レコードを掘るというより届くものだった。そう新譜のそれは遥々英国から。ラフ・トレード、チエリィ・レッド、クレプスキュール、コンパクト、エルなどのインディーレーベルたち。かって小西康陽さんが黄金時代と語ったニューウェーブの時代。 思えば、1980年代、あの頃、音楽マニアは何を基準にしてこれらレコードを買っていたのだろうか。もちろんネット情報などない時代。雑誌、もちろんそういった雑誌もあることにはあった。だが、それら新譜の

【プライド月間】ボサノヴァ、人種と同性愛 ジョニー・アルフの生涯

6月28日の国際LGBT+プライドデーの合わせて、6月はプライド月間。 ブラジルでも6月11日、パウリスタ大通りにてLGBT+プライドパレード(旧ゲイパレード)が開催されました。 世界最大規模である同パレードには、LGBT+界で最も影響力のあるドラァグクイーンであるパブロ・ヴィタールや、バイセクシュアルを公表しているベテラン歌手ダニエラ・メルクリらが登場しました。 セクシャルマイノリティのアーティストは、現代のブラジル音楽シーンで珍しいことではありません。 今や世界的に

二つの月、プラスティックトゥリーと梅津庸一 伏見瞬

 梅津庸一の個展『緑色の太陽とレンコン状の月』を観た。絵画と陶芸の色が多彩で艶やか、かつ抽象的な形(丸や三角、あるいはサボテン型の形状など)をそれぞれの作品が共有していて、「作品数が多いのに統一感があって楽しい展示だ~」と思ってみていたら、その場にいたみそにこみおでんさんから展評の依頼を受けた。直後、立ち話でプラスティックトゥリーの話をしていた梅津さんから「プラスティックトゥリーのことを書いてもいいですよ、むしろプラについて書いてください」と言われた。望むところである。私はプ

佐野元春『VISITORS』(1984)

アルバム情報アーティスト: 佐野元春 リリース日: 1984/5/21 レーベル: EPIC(日本) 「50年の邦楽ベスト100」における順位は28位でした。 メンバーの感想The End End  この企画では初めて80年代だ!!ってなった。この音、今までの人たちは出してなかった。PCM音源の到来?フェアライトとか、シンクラヴィアとか、そういった類の音がする…例えば細野の『S-F-X』を聴くと、何のことを言ってるのか分かるはず。(私は細野晴臣の歴史しか知らないので、事あ

interview Marquis Hill "Rituals + Routine":儀式とルーティンを介したセルフケアのための瞑想的な音楽

今でこそシカゴのジャズといえば、マカヤ・マクレイヴンや彼が所属するレーベルのインターナショナル・アンセムを中心としたコミュニティのイメージが大きい。ただ、その直前の2014年、マーキス・ヒルが世界的に注目を集めていたことは現代のシカゴのジャズ・シーンを語るためには欠かせないトピックだ。 セロニアス・モンク・コンペティションのトランペット部門でマーキスが優勝したのが2014年。圧倒的なテクニックに驚きつつ、シカゴから久々に面白い才能が出てきた!とワクワクしたのもあり、強く印象

¥250

和レゲエ数珠繋ぎ-第35回- ROCKDOWN

東京都 ROCKDOWN アーティスト名 アグネス・チャン 曲名 愛を告げて 発売年 1983年 ROCKDOWNと申します。 都内等で不定期にDJ、ディスコ、ハウス、ジャズ、レゲエ、和物等を好みます。 今回和レゲエを一曲ということで選びました。 「ひなげしの花」のヒットで有名な歌手、タレント、現在はユニセフ親善大使もつとめるアグネス・チャンの1983年のアルバム『Girl Friends』に収録の「愛を告げて」です。 このアルバムは「新しいFemale Soundは

cali≠gari "16"

オリジナルフルレンスとしては1年半ぶりとなる新作。 インタビューの中では「原点回帰」「(音的には)ノーコンセプト」といったキーワードがメンバー自身によって語られている。そもそもカリガリというバンドは昔から音楽性の主幹があるようなないような人達で、一番の出自である初期 BUCK-TICK や D'ERLANGER などに代表される原初的 V-ROCK から、シンセポップ、ジャズ、昭和歌謡、フォーク、パンク、メタル等々、とにかく節操のない雑多さが一番の特徴だった。その雑多さが加

サザンオールスターズ『イエローマン~星の王子様~』から考える90年代デジタル・サザン

『イエローマン~星の王子様~』との出会いまで2005年。当時中学三年生。ドラマ『大奥 〜第一章〜』がブームとなっていた。正直ドラマの内容はそれほど覚えていない(松下由樹が主演だった)のだが、そこでエンディングテーマとして使われていたのが、サザンオールスターズ50作目のシングル曲「愛と欲望の日々」であった。 『大奥』の奥深く怪しい雰囲気に合った淫靡なディスコ歌謡。今思えば、ケツメイシ「君にBUMP」トラジ・ハイジ「ファンタスティポ」のリリースも同じ2005年で、J-POPにち

mekakusheスペシャル インタビュー by am8

普遍性と新規性を融合した作風で無二の音楽を追求するam8。 今年の新曲第2弾となる楽曲「YT ft. mekakushe」(読み:ワイティー フィーチャリング メカクシー)を6月7日にリリースした。 タイトルの“YT”には、今年始め逝去された音楽家・高橋幸宏氏への想いと“Young Time(若い時代)”の衝動という意味が込められ、am8的青春アンセムとして昇華。ゲストボーカルには、サブスクリプションシーンで熱視線が注がれているmekakusheを招き、切なさとポップの交差す

Metro Boomin徹底解説 (with WooRock)

セントルイス出身でアトランタを拠点に活動するプロデューサーのMetro Boominについて、新潟のビートメイカーのWooRockと話しました。WooRockのプロフィールはこちら。 記事に登場する曲を中心にしたプレイリストも制作したので、あわせて是非。 Metro Boominの何が凄いのか?アボかど:今年はMetro Boominの年だと思う。まず「Coachella」に出た。さらに映画「Spider-Man: Across the Spider-Verse」のサウン

¥100

2023上半期ベストトラック33選(6選)

毎週欠かさずに新譜チェックを続けていたら、今年もあっという間に半分が終わってしまった。なので備忘録も兼ねて、今年聴いた中で気に入った33曲をピックアップし、Apple Music と Spotify でプレイリストにした。曲順はリリース順。お時間ある方はチェックしてもらえればこれ幸い。 また、その中から特に素晴らしいと感じた6曲を以下に選出して文章を添えたので、こちらもぜひご一読を。 NewJeans "OMG"とにもかくにも NewJeans なのである。昨年は "Di

Toleranceについて~パンク以後、屹立、モノクロームからなる断想~

1979~1981年にかけて活動し、Vanity Recordsに『Anonym』と『Divin』という2つのアルバムを残した、丹下順子(とサポートメンバーの吉川マサミ)によるプロジェクトToleranceについて、短い論考を書きました。 『Anonym』と『Divin』は今年4月にニューヨークのレーベルMESH-KEYよりリマスター盤がリリースされ、サブスクにもアップされるなど然るべきクオリティーで広く聴かれる環境が整ったため、これから様々な評価が進むと思われますが、現状で