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#音楽 記事まとめ

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楽曲のレビューやおすすめのミュージシャン、音楽業界の考察など、音楽にまつわる記事をまとめていきます。
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2019年4月の記事一覧

現地メディアが実際に認める、ブラジル音楽の名盤25選 (前編)

どうも。 今回は、こういう企画をやります。 ちょっと小耳に、日本のミュージック・マガジン誌が「ブラジル音楽の100枚」という企画をやると聞きました。それを聞いた時に どんなの選ぶんだろう??と、ちょっと、「う〜ん」と気になってしまったんですね。 というのも、日本でブラジル音楽といった場合に、「一部のボサノバとMPB好きの人が、それ以外にあまり目もくれず、偏った情報だけでブラジル音楽を決めつけている」という印象が昔から拭えないからなんですね。まあ、無理もないです。僕が日

現地メディアが実際に認める、ブラジル音楽の名盤25選 (後編)

どうも。 では、現地メディアが実際に認める、ブラジル音楽の名盤25選、後編に行きましょう。 改めて25枚。こんな感じです。 では、今日はこの中から、14枚目以降。真ん中の段の右から2番目から行きましょう。前回と同じく、ブラジル・メディアのオールタイム・リストに何位で載ったかを、ローリング・ストーン・ブラジルをR、MTVブラジルをM、エスタードをEで表すことにします。 Fruto Proibido/Rita Lee(1975)R#16 M#17 E#21 まずはブラジ

アリアナ・グランデと平塚らいてう/女性は月から宇宙になった

私は文学部で日本文学を専攻していました。卒業論文は文学家/きものデザイナー・宇野千代の文学とモードの比較研究。 もともと宇野さんはとっても考え方がギャル的で、着物や髪型もデコレイションしがちでした。ところがフランス帰りの東郷青児と恋仲になると、いきなりシックな洋装になり、化粧も油をぬるだけのすっぴん風になるのです。それとともに、まるで東郷の絵のように文章までミニマル、抽象化。例えば人物の名前を「A」としたり、文章量もショートショート並みになります。この服と作品の相互作用が戦

袋小路にはまる現代音楽と、花開く映画音楽

先月、John Williams の指揮によるコンサートを観て以来、映画音楽に関して色々と思うことがあったのですが、今回、日本行きの飛行機の中で観た「Score:A Film Music Documentary」というドキュメンタリーを観て、その思いがはっきりとした形になったので書いてみたいと思います。 「クラシック音楽」の定義は様々なものがありますが、多くの人たちにとっては、ベートーベンやモーツアルトが作った古典的な音楽のことです。Wikipedia の定義によると、17

痛みをメロディーに変えたシカゴの音楽シーン

全米で3番目に人口の多い都市であるシカゴ。4大スポーツ、オヘア空港、金融、シカゴピザ、カニエウェスト、銀色のでかいやつ... などなど、シカゴといったら多くのものがイメージできます。経済や文化の発達に、貢献しているのはみなさんご存知のことでしょう。 ヒップホップにおいても多くの才能が生まれた場所でもあります。Kanye WestやLupe Fiasco、Commonなど例をあげたらキリがないほどのスターが誕生しました。今回はドリルに少し触れつつ、アンダーグラウンドから抜け出

ジャズリスナーのためのビヨンセ『HOMECOMING:THE LIVE ALBUM』

ビヨンセが2018年に音楽フェスのコーチェラでやったライブ音源が『Homecoming:The Live Album』としてリリースされた。世界が最も注目するフェスのためにビヨンセとそのチームがこのショーを #beychella と名付けて、特別に作り上げてきたプログラムは音楽史に残る偉大な記録になった。 その特別さに関しては、衣装とかメッセージとかゲストとか検索すれば詳しいものがいくらでも出てくるので、それらをググって参照してほしい。例えば、若林恵のこれとか必読。 ここ

¥500

【寄稿】Solange / WHEN I GET HOME | ソランジュ | (The Sign Magazine)

ソランジュ『When I Get Home』レビューを書きました(記事中1つ目)。フランク・オーシャン等が代表する「ムードな音楽」の新境地であること、その郷愁エモディティの中には、ファッション界やLilNasX『OldTownRoad』も連なるYeeHaw Agenda…実在した「ブラック・カウボーイ」をメインストリームに蘇らせる文化運動が内在しているetc  

Billie Eilish『When We All Fall Asleep, Where Do We Go ?』

 ロサンゼルス出身のシンガー・ソングライター、ビリー・アイリッシュの経歴はあまりにも出来すぎている。2001年に生まれた彼女は、8歳の時にロサンゼルス少年少女合唱団に所属し、11歳になると作曲を始めた。2015年にサウンドクラウドで“Ocean Eyes”を発表すると、いまのイメージにも繋がるダークな雰囲気と高い制作能力が注目を浴び、メジャー契約を結んだ。まさにスター街道まっしぐらである。  その後も彼女の格は上がる一方だった。ドラマ『13の理由』のサントラに曲が起用さ

てら「おはよう/おやすみ」

久しぶりにレーベルとして音源をリリースいたしました。 てらくんとは、いろいろあって繋がりました。 ってざっくりしすぎていますが、Spoon という配信ラジオでめぐり逢い そこから、なんだかんだ話をしていく中で共通な友人がいたり「縁」を感じ てらくんと「東京でイベントやろう」という決めごとをしてから なんなら、リリースをしてイベント盛り上げません?? みたいなスマートな流れから、一ヶ月あまりでリリースしました。 元々違うレーベルに所属しており、その流れとは違う流れを組もうとして

「トラッドってお年寄りがやってるような音楽でしょ?」 現代ポーランドにおけるジャズとトラッドの関係②

6月に2つ、ポーランドの音楽関係のイベントがあります。1つめは民俗舞踊合唱やジャズがいっぱい流れるポーランドの恋愛映画『COLD WAR あの歌、2つの心』の公開。もう一つは現代のトラッド・シーンを牽引するヴァイオリン奏者Janusz Prusinowski ヤヌシュ・プルシノフスキのバンドKompania コンパニャの来日公演です。 どちらもポーランドの民俗音楽(トラッド)にとても関係のあるものなのですが、ポーランドのトラッド・ミュージックってよくわかりませんよね? なの

¥100

アメリカの10代向け雑誌でPerfumeはどんな風に紹介されているのか?(コーチェラ配信リンク付き)

Teen Vogueに掲載されたPerfumeについての記事を翻訳します。 日本のポップトリオPefrumeは10代の若い頃、2000年前半から音楽を一緒に作り続けてきた。ほぼ20年間に渡る記念すべきキャリアの中で、彼らは2019年のコーチェラで、J-POPの女性グループとして初めて公演することになった。より多くより若いJ-POPグループが出てくる道筋を作るのに貢献したPerfumeだが、自分たちがスピードを緩めるつもりは毛頭ないようだ。 Perfumeにとっては、キャリ

イベイー@恵比寿リキッドルーム

2019年4月22日(火) 恵比寿リキッドルームで、IBEYI(イベイー)。 オープニングアクトは女性3人組のBlack Boboi。僕はこのグループのことも、オープニングアクトがあること自体も知らずに観たんだが、(黒で統一された)見映えも音もあり方もモダンでとってもよかった。ジャンルで言ったらエレクトロニカってことになるのかな。けど声の合わさりが幻想的で、ビョーク~ジェイムス・ブレイクとかにも通じる祈りの感覚があって、森の中で聴くのが一番ぴったりきそう。バリ島の山奥

自分が撮影したMVの中から平成のプレイリストを選んでみた。

noteのお題で「平成をかざるプレイリスト」というのがあって、思い返してみたら、ちょうど自分がミュージック・ビデオの撮影を始めたのが昭和から平成への元号の変わり目でした。こんな機会なかなか無いので、平成のはじめから自作を追いつつ思い返してみようと思います。音楽的にも、撮影技術的にも平成という時代は変動の時代でしたね。ちょっとした自分史にもなってしまっていますが、付き合ってもらえると嬉しいです。 思い起こせば平成の始まりと一緒にミュージック・ビデオの撮影を仕事にするようになっ

文学的イマジネーションにあふれる、夜の静寂のための音楽 横山起朗『SHE WAS THE SEA』に寄せて(文:オラシオ)

横山起朗の音楽について書く前にまず、個人的な思い出をつづりたい。彼とはじめて出会ったのは2014 年のこと。場所はポーランドの首都ワルシャワの郵便局だ。きっかけは全くの偶然で、小包の発送のやり方がわからず英語が話せそうな人を探したら、目の前の椅子に日本語で手紙を書く横山がいた。 礼儀正しい好青年といった感じの彼は郵便局のシステムについて丁寧に説明してくれ、自分もワルシャワのポーランド国立ショパン音楽大学に音楽留学に来たばかりなのだと言った。その時は数分ほど立ち話をしただけで