久しぶりに読んだ加藤周一氏の本です。
2部構成で、第1部は2000年に出版された単行本のそのもの。「いま、ここにある危機」「戦前・戦後その連続と断絶」「社会主義冷戦のかなたへ」「言葉・ナショナリズム」の4編が採録されています。後半の第2部は「加藤周一、最後のメッセージ」として「老人と学生の未来―戦争か平和か」という講演と「加藤周一・一九六八年を語る―「言葉と戦車」ふたたび」というインタビューの書き起こしです。
加藤氏にとって戦争、第二次世界大戦はとても大きなものでした。
加藤氏に絶対的な影響を与えた「戦争」を経ても、日本人のものの考え方・感じ方で変らないものがありました。そのひとつが「大勢順応主義」です。
戦争は「特殊な状況」です。その状況下で、数々の悪魔的な行為が行われました。もちろんそういった行為は正当化されるものではありません。が、他方、その行為者の本性が悪魔的だとはいえないと加藤氏は語ります。
加藤氏は、自らを「知識人」といって憚りません。また、それゆえに「知識人」たることの責任も強く意識し、その責任に対しては厳しい態度で臨みます。
知識人たる「専門家」は、戦争に対してどのような態度をとったのか。
これはまさに正鵠を得た指摘ですね。
そして、加藤氏の怒りは、こう続きます。「戦争反対」への強烈な意思です。
小林秀雄氏は、昭和の「知識人」の代表者です。その小林氏に対しても、加藤氏の批判の矛先が向けられます。
戦争に対峙しない知識人への加藤氏の不満であり非難です。こういった知識人の姿勢が、「戦争へと突入する状況」を作り出した一因だと考えているのです。
加藤氏にとっての戦争は、自らの人生を通底する巨大な現実でした。
「実生活と離れた思想」には意味を認めないとの信念です。