そういえば、堺屋太一氏の著作はほとんど読んだことがありませんでした。今回の本は、まさに今(注:最初の投稿は2009年)を扱った内容です。
堺屋氏によると、今回の世界的な大不況も、自らの従来からの主張すなわち「知価革命」の必然の流れだと言います。
まず、その主張のもととなる「知価革命」について説明しているくだりです。
この知価革命の先進国であるアメリカにおいて、世界的金融不況の口火が切られたのです。今回の金融危機発生の因果関係を辿ると、以下のような経過となります。
今回の金融危機は「新自由主義の行き過ぎの結果」だとの考え方が一般的に語られています。
これに対し堺屋氏は、今回の金融危機の最大の問題を「改革の遅れ」だと指摘しています。
4 このあたりの着眼は大いに首肯できるものです。
また、投資銀行をはじめとした金融業者に対する辛辣な言葉も堺屋流です。
さて、最終章の「今こそ『明治維新』的改革を」の章では、公務員改革・地方分権制等、私でも同意できるような提言が示されています。が、ただ、教育改革についての以下のような認識に表れる堺屋氏の立ち位置は、どうにも納得しかねるものでした。
やはり、このあたりのフレーズをみると、やはり「普通の人の感覚」とはズレているように思います。
現代日本社会の大きな問題の一つである格差社会・貧困問題の現実に関する堺屋氏の理解は、あまりにも貧弱なものと言わざるを得ません。