先達の読書
この本も、本棚の奥の方から引っ張り出したものです。
初版は1960年、私が読んだのは1979年版第25刷ですから、大学生のとき買ったものです。
雑誌「図書」に連載されたものをそのまま再録しているのですが、著者陣は錚々たる方々です。加藤周一氏ですら one of them という感じです。
その加藤氏の「読書の楽しみ」という章で興味を惹いた「本居宣長とモンテーニュとの比較評価」についてのフレーズです。
次は、評論家蔵原惟人氏が言う「批判的読書」の方法です。
自分の考えをしっかり持ちつつも、それを読書により得られる外部の智慧でさらに磨いていこうとする姿勢、これは、まさに読書に対する構えとしては王道ですね。
さらに、プラトンの著作の訳出等で有名な哲学者田中美知太郎氏の「読書の配合」についてのくだりです。
このあたりの「意識していろいろなジャンルの本を混ぜるという方法」は、(恐れ多い言い様ではありますが、)私の読書傾向とも似たところがあるように思いました。
読書の個性
本書は、それぞれの学問領域における大御所の方々が、「私の読書法」という同一のテーマで書かれたエッセイ集です。ひと昔前とはいえ、これだけのビッグネームの方々が次々に登場するとういうのも、岩波書店の「図書」の力でしょうか。
さて、おひとりおひとり個性的で多種多様な執筆者が一同に会すると新たな楽しみも生まれてきます。
たとえば、「タイトル」と「最初の1文」を眺めるだけでも結構面白いものです。
ご参考までに、いくつか列挙引用してみると以下のような感じです。
清水幾多郎氏・宮沢俊義氏の冒頭のくだりは正に生真面目な “学者然” としていますし、開高健の書き出しもまた、“洒脱なエッセイスト” のものですね。
それぞれの書きぶりに各人の個性・人柄等が存分に滲み出ていて、非常に興味深いものがあります。
こういった如何にもという “その人らしさ” はいつまでも記憶に止めたいものです。