歴史をさわがせた女たち 日本篇 (永井 路子)
作者の永井路子さん。今から30数年前、中学時代に体育館で講演を聞いた記憶があります。本書の第1刷が1978年とありますから、講演はその少し前ですね。
本書は、ごく気楽に読める歴史エッセイです。テーマは「歴史上の女性たち」。
「愛憎にもだえた女たち」「ママゴン列伝」「強きもの―それは人妻」「女が歴史を揺さぶるとき」「ケチと浪費の美徳」「勇婦三態」「裏から見た才女たち」という7章、計33名の女性が登場します。
その中からいくつかご紹介します。
まずは、徳川13代将軍家定夫人の「天璋院」です。
彼女は、いまが旬ですね。ご存知のとおり2008年のNHK大河ドラマの主人公「篤姫」です。
(p188より引用) 勝海舟は書いている。
「薨去の折、私は老女と立会い捜索せしに、御手文庫の中に、僅かに三円あるのみ。余は少しも金円等あることなかりき」と。
永井氏は、徳川幕府の殿軍(しんがり)を見事努めたスーパーレディとして高く評価しています。
大河ドラマといえば、永井氏の作品「北条政子」は、1976年のNHK大河ドラマ「草燃える」の原作でもあります。当時はまだ大河ドラマを結構見ていたころで、主人公政子役を演じた岩下志麻さんを思い出しました。あのときの源頼朝役は石坂浩二さんでしたが、やはり岩下志麻さんの存在感は格別でしたね。本書でも北条政子は「鎌倉のやきもち夫人」として紹介されています。
その他、歴史上有名な女性として常連のメンバも登場します。
なんと言っても、「紫式部」と「清少納言」。
いずれも平安期中流官吏の娘で、一条天皇の中宮(紫式部は中宮彰子、清少納言は中宮定子)につかえるいう似たような立場にありました。紫式部は「源氏物語」、清少納言は「枕草子」という今日にも残る作品を残し、何かと比較対照されています。永井氏も、紫式部を「高慢なイジワル才女」、清少納言を「ガク振りかざす軽薄派」とそれぞれに一言キャッチコピーをつけています。
(p265より引用) 紫式部には一目一目編み物をしてゆくようなたんねんさがあるが、清少納言には、ずばりとナイフで木をえぐりとる鋭さがある。紫式部を、冷静な瞳と深い知識を備えた優等生型とするなら、清少納言は感性を武器にした天才型だ。
ちなみに、2008年は、源氏物語を記録のうえで確認されてから千年目。京都を中心に、「源氏物語千年紀」を記念したイベントが開催されていますね。
(注:本稿の初投稿は2008年です)