はじめまして。 福岡県柳川市の水門メーカー乗富鉄工所の後継ぎムスコ、ノリドミケンゾウです。鉄工所のムスコとして生まれ、工学系の大学院を卒業し、製造業を経験した後、家業に戻ってモノづくりを核とした事業をつくっています。 経歴だけ見れば生まれたときからずっとものづくり一直線の理系男子、というかんじですがまったくそんなことはなく。私自身はどちらかというと本や漫画が好きな文化系で、家業に興味がないどころかものづくりそのものに対しても特別な思い入れはありませんでした。インターネット
はじめに Hallo!オランダに行ってきました。 オランダかぶれですみません。福岡県で乗富鉄工所という水門メーカーを経営している乘冨です。このたびオランダに本社をもつエヌエヌ生命さんによる中小企業支援事業「オランダスタディツアー」のメンバーに選出して頂きオランダに行ってきました。このプログラムは中小企業経営者にサスティナビリティ先進国として知られるオランダの循環型経済の事例やサービス、テクノロジーを学んでもらい、それぞれの事業、ひいては地域社会に還元することを目的として実
突然ですが、柳川市って知ってますか? 福岡県の南側に位置する人口6万人程度の町で地方都市の例にもれず高齢化と若い世代の転出による人口減に悩まされていますが、福岡県民の間では観光のまちとして知られています。そんな柳川市で一番人気の観光コンテンツが川下りです。川下りを目当てに来た観光客がうなぎを食べたり旧柳川藩主立花家の別邸や城下町を散策する…というのが柳川観光の王道コース。 コロナの影響で落ち込んだ観光客も最近はインバウンド観光客を中心に回復しているもの、柳川の観光業
2週間の海外出張を終え帰国したある日、久しぶりに自分の車を運転して近所のココイチに行った帰り道で大通りから自宅に至る丁字路をうっかり通り過ぎてしまった。 (疲れているのかな) 迂回して別の道から家に帰った翌日、目印にしていた大きな石造りの鳥居がなくなっていることに気が付いた。いつも渋滞している道路の拡張工事のために撤去されたようだ。 それは不思議な鳥居だった。近所にある神社の参道の入り口として作られたたのだろうそれは、参道が住宅街の生活道になった後もポツンと残され
モノと情報があふれる現代で、なにをやるにも大事になるのがアイデアだ。 「アイデアの作り方」、「思考の整理学」、「考具」、「進化思考」…アイデアに関する本は昔からたくさんあるし、定期的にヒットする。読むだけでアイデアが湧いてくる気がするから私も大好きだ。だけど、インターネットで世界中の人のアイデアが可視化されてもなお、オリジナルで、顧客から必要とされて、誰もがアッと驚くような、そんなアイデアがどれだけあるのだろうか。いや、そんなことを考えてる場合じゃない。とにかく資料を漁り
鉄工所。それは鉄を使ってなにかを作るところ。では、何を作るか? それが問題だ。 超ニッチな業界の鉄工所こんにちは。福岡県の水門メーカー(!)の後継ぎムスコ、乗富鉄工所の乘冨賢蔵です。私の家業である乗富鉄工所は、鉄を使ってオーダーメイドの「水門」を作る会社でした。水門と言われてピンとくる方がどれくらいいるでしょうか。河川や水路でたまに見かけるアレです。「そんなニッチな商売が成り立つのか」と思われる方もいるかもしれませんが、山が高く国土が細長い日本では昔から治水が発達しており
「水門屋がキャンプ用品って…寄り道してないで本業に集中したほうがいいんじゃない?」 会社を経営しているといろんな人と会うもので、たまにそんなことを言われることがある。言いたいことは分かるし正論だなと思う。それでもあえて言わせて頂きたい。寄り道せずに本業できるか。 水門メーカーがアウトドア市場に参入 こんにちは。福岡県の水門メーカー後継ぎムスコ、乗富鉄工所の乘冨賢蔵です。発注が減りつつある水門事業の穴を埋める新規事業として、職人技を生かしたプロダクトブランド「ノリノリライフ
中小企業の後継ぎには悩みが多い。 先代が事業を立ち上げて数十年が経過したビジネスモデルには寿命が見えていることが多いけれど、新しいことを始めようにも社員からの理解が得られなかったり、お金も人も足りなかったり。事業承継問題だとかステークホルダーとの人間関係だとか、身近な人には相談できないアレコレが起こることだってある。 だから、後継ぎは同じ境遇の人間を求めて業界を越えて集まる。集まって悩みを共有したりビジネスの相談をしたりする。昔からある青年会議所がそうだし、最近は企業後継
2022年秋、乗富鉄工所は2年の歳月をかけて開発した新商品「アップダウングリル」のクラウドファンディングに挑戦中だった。10万円を超える高額商品であったことで最初は苦戦したものの、これまでにない商品ということで目標を大きく超える支援金額が積みあがっていた。 アップダウングリルの引き出しはオーブンになっていて、内部は350℃以上の高温になり様々な料理ができるのが特徴だ。その日は、プロモーション用の動画撮影のために冷凍のラザニアを焼いていた。 (あれ、引き出しが固い…?)
「社内検査でほとんど指摘がないチームもあれば、そうでもないチームもあるんです。ただ、検査での指摘事項を紙で回すのもなんだかなあって」 品質管理課の社員との定例ミーティングでの話だ。社内検査は品質管理課により行われる品質検査で、ここで受けた指摘を修正後に客先立会いのもと本検査が行われる。検査記録を回覧されることが分かっていれば、より仕事が丁寧になるかもしれないし競争心が芽生えるかもしれない。いずれにしても品質は良くなりそうな気がする。 とはいえ彼が感じた違和感は間違って
かっこよさには力がある。 ブランドは信用だとも言うけれど、やっぱりビジュアルが果たす役割は小さくない。普段は行かないようなラグジュアリーなレストランでは無意識に上品に振舞おうとしてしまうものだし、建物の窓が割れている地域では犯罪率が高まるという話も有名だ。美しいものやかっこいいものに囲まれていると、人の意識が影響受けて実態もそのようになっていく。逆もしかり。 また、イメージがいい会社には人が集まる。イメージと実態が必ずしも一致しなくても、前向きな人が集まることで活気
「ピザ窯ば作らんね!」 そんな上司の無茶振りがきっかけで鉄工所がデザイナーや町工場仲間達と2年かけて開発した「木のピザ窯」アップダウングリルは、おかげさまでクラウドファンディングサービス「MAKUAKE」にて目標金額700%を超えるご支援を頂いております(アップダウングリルの開発ストーリーはこちら)。本当にありがとうございます。 一方で「機能がすごいのは分かったけど使い方がイメージできない」という声を頂くこともあったりします。現物をお見せして使っていただければ一番いいのだ
2019年の秋、家業の鉄工所で商品開発を任されていた私はとても困っていた。 地域のイベントでピザを食べてきた当時の上司にピザ窯の開発を命じられたからだ。写真を見て2秒で思った。 「もうあるやん」 と。 いいものを作れば売れるという幻想 家業の乗富鉄工所は創業70年を超える水門メーカー。売上の7割近くを水門やポンプなどの公共事業で賄うBtoGの会社です。インフラメーカーとして売上面では安定した経営をしてきましたが、水門の素材が進化したことによる高寿命化で新規発注が年々減
鉄工所の働き方って聞いて、どんなイメージをもちますか? 肉体労働、男の職場、休み少ない、給料安い…そんなところでしょうか。「製造業はオワコン」なんて言われている昨今、少なくとも労働環境の面でいいイメージを持つ人は少ないのではないかと思います。だから決めました。鉄工所の働き方をアップデートする。 時代遅れの労働環境こんにちは、株式会社乗富鉄工所の後継ぎ息子、乘冨賢蔵です。家業の乗富鉄工所は創業75年を迎える老舗の鉄工所。古き良き、といえば聞こえはいいですが私が入社した201
小学校の体育の時間、ドッヂボールの授業中の忘れられないやりとりがある。 「相手チームが優勢で、自分が外野だったらどうしますか?」 先生の質問に、小柄で運動が苦手だった私はこう答えた。 「できるだけ高くボールを投げます。取りそこなった人が当たってくれるかもしれないから」 正解は「一番近くの人を1人ずつ狙う」だったのだけど、小学生の私はどうしても納得できなかった。非力な自分が力いっぱい投げたって、運動が得意な人気者には簡単にとられてしまうと思ったから。 他愛もないこのや
「あんたはいつか会社を継ぐんだから、恥ずかしくない大人になりなさい」 そう言われて育った。 恥ずかしくない大人って、なんだろう。 アトツギという存在こんにちは、株式会社乗富鉄工所の後継ぎ息子、乘冨賢蔵です。友人からは「親が社長なんて羨ましい」と言われ、親からは「躾ができていないと思われてはいけない」と厳しく育てられました(”躾”という言葉、嫌いです)。良くも悪くも特殊な立場。周りに相談できる人も少なく、まあ宿命みたいなものだと思っていましたが、この1年はツイッター経由で