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読むまちづくり

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まちづくり絡みの話をまとめています。随時更新。
まちづくり絡みの記事をまとめたマガジン「読むまちづくり」。 月額課金ではなく、買い切りです。なので…
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記事一覧

まちづくりとボランティアと信仰の話

社会的弱者向けのシェルター活動をやっておられる大先輩と話したこないだ、社会的弱者向けのシェルター活動をやっておられる大先輩とお話する機会があった。 人はいろんな不運が重なって、必要な社会的資本や文化資本を蓄積できないまま大人になってしまい、社会不適合を起こすことがある。そういう人たちのためのシェルターと、社会復帰のため様々な支援をするわけだが、どうすればどういう効果が出るか、ということは、長年やっていても一概に言えないというのだ。 というのも、社会的資本や文化的資本の不

レンタル地蔵に宿るゴーストの話

「レンタル地蔵」に見る地蔵の代替不可能性以前、「レンタル地蔵」という商売があると教えてもらったことがある。地蔵盆をしたいけれど、地域にお地蔵さんがない場合、よそからお地蔵さんを借りてくるというのだ。面白い話だと思った。 ある物事について、具体から抽象へ置き換えて考えるトレーニングを受ける機会は私の場合、多い。学問でも行政でも、個別具体の話への傾倒は望ましくないとされる領域だ。 そういう場所に長く身をおいてきたせいか、「地蔵がないなら、似たような機能を担う別の何かで置き換

大家族としての地域組織と隣人愛

地域を大家族とみなす見方こないだ、とある地域で、「助け合う、◯◯(地名)の仲間は、大家族」という標語が掲示されているのを見た。しみじみと、懐かしいなあ、と思ったりした。 先日も書いたが、地域活動には、その機能面に注目すると、拡大家族としての側面がある。 隣人愛という重要キーワードこういう、地域を一つの家族とみなす考えは、昭和のまちづくりがしばしば語った「地域の者は地域で守る」という矜持によく表れている。そして、地域の者を家族とみなす見方を支えるのが、饗庭伸のいうところの

あけおめ2025〜体力の限界と個性化の話

あけおめ2025新年明けました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。 影の同盟と飛天御剣流に教わりたいのは休養術

論文を掲載していただきましたよ、のお知らせ

僭越ながら、筆者の論文を掲載していただきましたよ、というお知らせです。タニリョウジが理事を務める、コミュニティ政策学会の学会誌 第22号の特集論文として掲載されます。 Amazonを見ると、現在予約受付中で、年明け1月10日発売だそうです。 今回の特集は、社会思想家の 武井浩三さんと、株式会社エッセンス、NPO法人ミラツクの西村勇哉さん、東京都市大学の坂倉杏介先生の鼎談をもとにして、コミュニティ政策論上の示唆を述べるというものです。 書いている途中、さらに校正時に読み返

「モテるまちづくり」発売から10周年になりました

年の瀬、師走、クリスマスシーズンですね。皆様、いかがお過ごしでしょうか。 さて、12月12日といえば、拙著「モテるまちづくり-まちづくりに疲れた人へ。」(通称、モテまち)の発売日アニバーサリーだったりします。そしてなんと、2014年に発売したので、今年は10周年になります。10周年。もう10年ですか。早いですね。 ありがたいことに本作は、全国で本当に多くの皆様にご愛顧いただきました。いまだに時々、「まちづくりに関する本を探してモテまちを見つけました!」というメッセージをお

「なんであの人は、こんなこともできないんだろう?」問題

「なんであの人は、こんなこともできないんだろう?」先日、カフェで隣に座っていた、人の良さそうな人の会話が耳に入ってきた。 「なんであの人は、こんなこともできないんだろう?」 面白い発言だなと思った。 「なんであの人は、こんなこともできないんだろう?」というところの「こんなこと」こそが、その人の才能人には得手不得手というものがある。ある人が得意なことが別の人は苦手だったりするし、その逆もある。そう聞くと「そりゃそうだろう」と思うかもしれないが、じゃ自分は何が得意で、何が苦

「ついで」と「隣人愛」の話

地域活動というのは、「世帯内労働の世帯外シェアリング」としての側面がある。 例えばこども食堂なんかが典型的で、世帯内で行われる食事の用意を世帯外で済ますことができる。ある種の労働は、分散させず、統合することで、コストはもちろん増えるが、スケールメリットが効くので、提供できるベネフィットのほうが大きくなる。自治体合併が効率化につながるのと理屈は同じだ。例えば沖縄何かでは伝統的に自治会が幼児園を経営していたりする。子育てという世帯内労働を地域でシェアすることで効率化しているわけ

トラブルをトラベルに変える〜あるいは秋の雨が冷たいから説

昔、私の先生の先生である延藤安弘氏が、「トラブルをトラベルに変える」みたいなトンチを言っていたのを思い出す。

「ふれあい」とは「同地同時に多数の人を集めることで、普通にしていると生じない人同士の意図せぬ交流を生み出す」こと説~あるいは方便プロセスデザインによるイノベーション促進施策の応用例として

まちづくりの分野では、しばしば「ふれあい」という言葉が好まれる。 あまり多くの人は知らないと思うし、知らなくてもいいことだが、この独自の概念、実はWikipediaの記事があったりする言葉なのだ。 これによると「ふれあい」とは「年代層や職業などが異なる人間が情緒的につながった関係を形成することを指す」という。 「袖振り合うも多生の縁」ということわざがある。道を行くとき、見知らぬ人と袖が触れ合う程度のことも前世からの因縁によるという意味から、どんな小さな事、ちょっとした人と

マルチセクター組織のレシピ

まちづくりは参加と協働が大事だと言われて久しい。ここでいう参加と協働というのは、公共サービスを自治体が独占して担うのではなく、企業やNPO、学校や病院など、様々な異なるセクターで相互協力しあいながら担うことを意味している。そこで作られる組織体をマルチセクター組織と言ったりする。 マルチセクター組織の設立は確かに望ましいことであるが、一方でセクター間では当然、組織の事情や背景が異なる。それゆえ、マルチセクター組織の形成や維持は簡単ではない。 では、ワーカブルなマルチセクター

まちづくりにおける「見えない関係」と「あの人」の役割の話。

まちづくり活動は、うまくいくケースとうまくいかないケースがあり、その違いは、メンバーの関係性にありそうだ、ということは常々言われている。 いろんな調査を見ていても、人が会社を辞める理由のトップも人間関係だという。とりわけ、賃金の発生する労働と違い、ボランティアは気持ちが重要であるから、その傾向はより強くなりそうである。グーグルも成果を上げるチームは別に学歴が高いとか定期的な会議で合意形成をしているとかいうことはあまり関係なく、心理的に安全な関係が作れている、ということを調査

新著『まちづくりにおける「対話型市民参加」政策の見た夢と到達点 京都市2010年代の「カフェ型事業」の経験から』予約開始のお知らせ

この度、東信堂さんから本を出していただけることになりましたよ、というお知らせです。

まちづくりプラットフォーマーと「データ労働」の話

YouTubeにしろ、子ども食堂にしろ、町内会にしろ、プラットフォーマーは共通して、利用者の「情報」を欲する傾向がある。というか、ユーザーの情報をどれだけ細やかに集められているかがサービスの質に直結し、サービスの質で人々が利用するプラットフォームが選ばれてしまう以上、集められる情報の質と量の競争になるのは自然だ。 ところで、無料ないしそれに近い金額で利用できるサービスに見せかけて、我々は情報の生産と納品という「労働」をしているという見方がある。これを「data as lab