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若きサムライのために (4)
(中高時代の恩師に依頼されて書いた文書をnoteでも公開しています。各話1,200字/全7回)
知識と教養について。
受験や就職活動に際して、新聞を読んでおいた方が良いですか、という質問はよく受けます。
確かに、時事問題に長けていることは必要条件のひとつかも知れませんが、闇雲に新聞に眼を通すだけでは、十分条件にはならないと考えます。
例えば、外国為替が変動して、1ドル100円だったものが120円になったとします。
新聞の見出しを眺めて
「ウーム、円安か」
と唸りながらコーヒーをすするだけならば、わざわざ新聞を買って読むだけの価値はないと思うのです。
円のドルに対する価値が2割安くなると何が起こるのか。
皆さんがアメリカに留学して、月500ドルのアパートに暮らしていたとします。今までは1ドル100円だから5万円。これが120円になると、何もしていないのに家賃が突然6万円に値上がりするということです。
親御さんからの仕送りが月10万円で固定されているとしたら、残りの生活費を切り詰めないと家賃を払えない、しかしその生活費も軒並み2割増です。
何も悪いことをしていないのにこんなことになって、どうやって生活をやりくりしたらいいんだろう…
為替変動は対岸の火事のような気がしてしまいますが、自分の生活に関係してくれば必死にならざるを得ないことがお分かりいただけるかと思います。
将来関わりたい会社、業界、研究分野が、新聞が報じる事象によってどのような影響を受けるのか、そして企業は為替のみならず、諸々の突発的な出来事にどう対策しているのか。新聞には、そうした疑問や想像に対するヒントが詰まっているはずですし、世間の事柄が自分の生活にどう影響するのかという視点を養うことにこそ、新聞を読む価値があるんじゃないかと僕は思っています。
新聞と同じく読書もまた、ファッション気分で急に読み始めても、自分の血肉になるとは思えません。付け焼き刃で読んでみても「面白かったです」「昔の人は偉いと思いました」なんていう小学生並の感想しか出てこないんじゃないでしょうか。
いくら本を読んでいたとしても、その魅力を伝えられなくては、ただの独りよがりに終わってしまうでしょう。
そして、魅力を伝えるというのは、これから先皆さんが社会に出てゆくにあたって必要なスキルのひとつかも知れません。
採用面接や、入社後の営業のプレゼンの場で、何も知らない人に向かって、ご自身や売り込む商品について、何がどう良くて、他の人や物ではダメなのかを、限られた時間で説明し、相手に同意してもらわなくてはならない場面に、少なからず遭遇するでしょうから。
知識や教養は、何となく身につくこともあるでしょうが、新聞にしても読書にしても、目的を持って接するのとそうでないのとでは、結果が全く違うということはご理解いただけるかと思います。
ゲームをクリアするアイテムのように捉えてしまうと、読むことそれ自体が目的になってしまい、何も自分の身につかないといったことになりかねません。
(1,200字)