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令和6年/2024年1月の総括と雑感

お正月から石川県での大地震や羽田空港での日航機炎上があり、騒然とした年明けだった。

震災のような事態にこそ活躍すべき内閣危機管理監が入院中だったと聞いて驚いたけれど、その点を批判するのではなく、自民党政権の動きが遅いとか予備費が少ないとかいう幼稚な批判の筋書きに拘泥する野党やメディアはピントがズレている気がしてならない。
日頃の政権運営には批判も多い岸田総理も、こと震災対応については十二分に対応しているように思うのだが。

日航機と衝突して命を落とした海上保安庁の殉職者の死因はいずれも全身挫滅と聞いて暗澹たる思いがした。
全身挫滅あるいは全身挫砕というのは、御巣鷹山の日航機墜落事故で、犠牲者の遺体がとんでもなく損傷していて、即死したことは明白でも直接の死因を定義出来なかった群馬県警と医師たちがひねりだした新語だから。

緊急脱出に際して乗員が冷静に対応し、乗客もまたその指示に従い全員が無事だったことは心から称賛されるべきことで、もう少し時間を経れば、当事者たる乗員たちの口から語られることも出てくるのだろうと思う。
御巣鷹山から生還した、非番の客室乗務員だった落合由美さんも、長らく表に出るのを避けてきたが、近年は後輩にあたる社員たちに講演を行っていると聞く。

この事故に関して、一部のメディアが、何がなんでも日航を悪者にしたいのか、最初は機内を撮影した乗客の動画を入手して子供が「ドアを開けてー」と叫ぶシーンを流し、開けなかった乗員を批判するような論調を展開していた。
言わずもがな、火災発生時はドアを開けることで炎や煙が内部に伝わるリスクがあるので、安全が確認できるドア以外は開けてはいけないルールがある。旅客機だけでなく、デパートやオフィスビルに防火扉がある理由を考えればすぐに分かること。

その批判が的外れと気づくと今度はペットを見殺しにしたーと大騒ぎ。手を変え品を変えて人を責める立場になろうとする下衆な人種がいることだけは分かった。

ペットの搬送は、通常時でも貨物室でストレスや温度や気圧の変化から死んでしまうことも間々ある(飼い主はそのリスクを承知した旨署名したうえでエアラインに寄託する)し、積み込み/積み下ろし時にケージが何らかの理由で開いてしまい、脱走したペットが滑走路を駆けずり回るトラブルもあって、その間全ての離着陸は停止させられる。

海外の航空会社ではペットを客室に持ち込めるのに日本は遅れている云々、またぞろ出羽守が出現しているみたいたけれど、客室に持ち込めてもペットは手荷物扱いなので、緊急時には見殺しにするのがルール。

即ち、ペットを航空機に載せるのは飼い主・エアライン双方にとってきわめてリスクの高い行為であって、お気軽に一緒に旅行しようという発想が、実は動物を愛護などしていないことに気づくべきだし、殉職した5名の海保の隊員たちはシカトしてペットの話しかしない人たちは、動物を愛護しているつもりでも人間は愛護していないことに気づくべきだろう。

事故を報じるメディアがあまりにも浅薄で勉強不足なことに、ほとほと呆れる。

人気芸人の性加害スキャンダルが取り沙汰されているけれど、端的にやり方がダサいと感じている。

売れっ子でどうしようもなくファンが至るところに群がってきてその中から気に入った子をお持ち帰りしちゃいましたというのならば、有名人のやらかしとして笑ってもらえるのかもしれないけれど、報道によれば、後輩芸人をパシリにして、自分の好みの若い女性の特徴を記した指示書まで添えて街角で素人の女の子をナンパをさせて高級ホテルの密室にいざない、逃げられない状況にして…… というのは一体何なんだろう。ネクラにもほどがある。

性加害があったのか、お相手の同意があったのか、という議論以前に、お笑い界のトップに立っているはずの御仁、事件当時50代という人生のキャリアの長さにしては、ご自身の性的嗜好を満たすための思考や言動がいかにも幼いことにビックリしてしまう。

秘密にしておきたいのなら出費をケチってはいけないし、あとのフォローこそが大事なはずなんだけど、そういうことまで教えてくれる先輩なり師匠がいなかったのかなぁ、若い頃にある程度の火傷をして学ぶことがなかったのかなぁ。

誰にも叱られずにポジションだけ上がっていった結果、ガキのような危機管理しかできなかったのだとしたら、まったくもってダサい。笑えない芸人ほど惨めなものもあるまいに。

月末に、漫画家の芦原妃名子の自殺が報じられた。
自作のドラマ化に際してテレビ屋と揉めた挙句に自分が悪者にされたことを苦にしてと伝わるが、何とも痛ましい。
芦原作品は唯一『砂時計』を映画で観ただけなんだけど、その作品が主人公の母親の自殺と自身の自殺未遂、そこからの人生の再生を描いた作品だっただけに、衝撃が大きい。

同作の題名の由来になった島根県の仁摩サンドミュージアムには何度か足を運んだことがあり、彼女の作品を特集した常設コーナーには、ファンたちの記帳が絶えなかったのが印象的だった。
栃木県ではなく、この仁摩の地に来て今なお彼女の漫画を支持する多くの人たちの声に触れていたならば、彼女は自裁などという道を選ばなかったのではあるまいか……

テレビ化に際しての原作改変は、辻村深月の『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』を巡るNHKとの裁判が記憶に新しい。
NHK側が仕立てた脚本が、原作を余りにも歪めたものだった為、辻村がドラマ化を不許可。
既に長澤まさみなどのキャストも押さえていたNHKは5,982万円の損害賠償を求めて講談社を訴えた。

このケースでは、版元の講談社が前面に立って作家を守ったことが特筆されるが、恐らくは、講談社自身が経験した『キャンディ・キャンディ』事件の教訓も活かされたのであろう、一切の妥協をせず戦い、裁判所はNHK側の訴訟そのものを棄却した。
驚愕するのは、NHKと原作の権利者たる講談社との間で契約書さえ締結されておらず、にも関わらず NHKは
「紙の契約書がなくても契約は成立している!それが業界の慣例だ!」
と法廷で堂々と主張していること。
そして裁判所はそんなオレ様ルールを一蹴し、棄却なのでNHKは一銭も取れず主張の一切が認められない結果と相成った。

当今、テレビ屋の中に優れたシナリオなり物語を描ける人がいないから、漫画や小説の原作を基にしないとドラマをつくれない、のではあるまいか。
だとすると、原作者をぞんざいに扱ってよいはずがあるまいに、おそらくは、テレビ屋の世界には不思議なまでに高圧的な慣習が長く存在していて、天下のNHKが大恥をかく結果になってもなお、それを改めるような魑魅魍魎たちではなかったということなのではあるまいか。

彼女の存在と作品が忘れられないことを、そして、多くの表現者の尊厳が守られることを願ってやまない。


今年は、毎月の総括だけでなく、その月に起きたことを振り返った雑感もこうして述べてゆきたいと思う。
原稿用紙5-6枚分いけばいいかなと思っていたら、約7枚に達してしまった。

FbやXで発信していることの焼き直しになる部分もあるけれど、タイムラインは日々流れていってしまうので、月ごとに一度立ち止まることも大事かなと思っている。


【今月の総括】
(1) 読書
実に60冊読んだ。目標年間200冊/達成率38%
(2) 映画
フランス映画を2本観た。字幕を追わなくてもある程度の会話を耳で追えるのは便利だなと思った。アメリカ映画ではそうはゆかない。 目標年間12本/達成率17%
(3)  食べる
正月に実家でたらふく食べたことが該当するだろうか
(4)  友達と会う
今月はまったく友達に会う機会がなかった
(5)  旅をする
出張はあちこちに出かけた
(6)  語学の勉強
フランス語は母校のフランス語講座に参加。英語は特に何もせず。イタリア語も、単語集を図書館で借りてきたものの、ほとんど読み進めることなく返却日を迎えた……
(7)  息子と過ごす
今月はほとんど一緒にいられる時間がなかった
(8)  アウトプット
今月から、800字コラムに加えて400字コラムも始めた。文書を自分の手足のように操る技術というのは、自分にある程度の制約を課さないと鍛えられないと思うので、これから励行してゆきたい
本はたくさん読んだのに、書評が書けてないので、来月から巻き返したいところ

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