起業と言葉vol.001 / Facebook(現Meta)
「今食べたい」が、すぐに見つかる。(株)NOBU PlanningのCEO兼ビジョンライターで、縦型グルメSNS「Popdish」のCEO(Chief Eating Officer)をしています、起業家のノブです。元電通のコピーライターとして、今回は「起業と言葉」について触れていきます。
スタートアップ起業家に必要な言葉のチカラ
スタートアップ起業の成功には、起業する分野などの先見性や時代感を含めたビジネスアイデアやビジネスモデル、創業者の想いや創業チームや組織カルチャーの強さ、ロジカルやファイナンスの強さなど様々な点が議論されるものの、意外と軽視されがちな言葉のチカラについて触れていきたいと思います。
ピッチの中でのコピーのチカラ
ビジョンミッションバリューが大事だ!という点は何度も耳にしているものの、スタートアップが避けて通れない、ピッチの中で言語化力、コピーのチカラについては、なかなか触れられることはありません。
審査をするVCの方は誤解を恐れずにいうとビジネスや投資のプロですが、言葉のプロではありませんし(#ごめんなさい)、起業家もある分野における情熱や知識や能力においては飛び抜けたものを持っていても、言葉のプロであることは少ないと思います。(#すごい人もいる)
しかし、本当に成功している起業家は、仲間集めや資金調達、そして何より目の前にいる顧客を動かすという点において、言葉のチカラを大いに活用し、未来を、世界をアップデートしていることに気がつきました。
私は、元電通のコピーライター/ビジョンライターであり、起業家として、起業家の生み出す言葉のチカラについて、分析していきたいと思います。
Facebookのピッチデッキ
今回は、今や使ったことのない人はほとんどいないと思われる、Facebook(現Meta)の事例です。Facebookは使っていても、初期のピッチデッキを見たことがあるというスタートアップやベンチャーの起業家は、意外と少ないのではないでしょうか。
2004年の春に、マーク・ザッカーバーグは、このピッチデッキで、ピーター・ティールより50万ドルの投資を受けています。表紙とアジェンダの後の3枚目。このスライドがまずかっこいい。事実をありのまま書いただけですが、スタンフォードの学生がコンピューターにかじりついてFacebookをする情景が目に浮かび、何かの物語がここから始まる、その期待感を抱かせる、先が見たくなる映画の入りのようなスライドになっています。
Facebookのキースライド
そして特にこのピッチデッキのキーとなっているスライドは、以下のページだと思います。
そうです。今はすっかり当たり前になっている、「SNS」という言葉がありますが、Facebookは2004年に自己のビジネスを「Social Networking(Intra-School Networking)」と名付けているのです。世の中にまだない概念を言語化し、自己のビジネスドメインにしっかりと旗を立てる言葉は、ビジネスを大きくドライブさせ、世の中を変えていく。そのわかりやすい例だと思います。
ピッチスライドはエモーショナルとロジカルのバランス
そのほかにも、Facebookのピッチデッキは、非常に示唆に富んだ言葉にあふれています。後半の畳み掛けるようなトラクション数値や、全米への広がりの速さが素晴らしく、このピッチデッキに迫力と説得力を与えています。
トラフィック数字を具体化したスライドは、否定がしづらい。そして何よりも納得感があります。前半は右脳でエモーショナルに、後半は左脳でロジカルに。そのお手本のようなピッチデッキだと思います。今はまだ世の中に概念がない事業を作ることを目材しているスタートアップ・ベンチャーの人にこそ、古いと思わずに真似してほしいデッキですね。
言葉の手法=新しい概念を生み出す
Facebookは新しい概念を生み出す言葉を使って世界を変えていきました。ここでは、同じように企業が新しい概念を生み出した広告事例を紹介します。
新しい概念を生み出した広告コピー①味の素株式会社
広告コピーの世界でも同じように、新しい概念を生み出した名ネーミングがあります。
なんか知らんけど体に悪い説で、禁止されている家庭もあると聞きますが、うま味調味料の味の素は、みなさんも一度は口にしたことがあるのではないでしょうか。味の素は、研究をもとにグルタミン酸から生まれる「うま味」という今までになかった新しい味の概念を言語化し、「うま味」を事業ドメインとして商品を開発しています。今では世界中に「UMAMI」という概念も広がっており、他社には真似のできない事業ドメインになっていると思います。
新しい概念を生み出した広告コピー②ホクト株式会社
その他にも、下記のように新しい概念を生み出し、広告賞なども受賞している例があります。
「菌活」という言葉は2013年ごろからホクトがPRキャンペーンとして生み出した言葉です。身体にいい菌を積極的に食事で取り入れることで、健康な生活を送ろう。といった文脈で、当時からブームになっていた、朝活や終活などの〇活ブームにも乗って、新しい概念を生み出しています。この言葉の凄いところは、今までマイナスイメージの強かった「菌」という言葉を、ポジティブに変換したところ。マイナスイメージをプラスに変換しつつ、事業ドメインをキノコ=菌活の会社である、と変換してしまったところにあると思います。菌類に属しているキノコ類は「菌活」の王様であり、キノコ類といえばホクトという方程式を生活者の中に自然と刷り込んでいった言葉のチカラ、あっぱれです。
今回は、コピーライターの視点で、スタートアップやベンチャーの起業家向けに言葉のチカラについてまとめてみましたが、起業をしていなくても、すべての会社の新規事業や、広告やマーケティング活動、企業の広報やPR活動においても、これからの時代に言葉のチカラは必須だと思います。
ビジョンライティングやブランドを規定する言葉を作りたい方は、ぜひお気軽にご連絡ください!
NOBU Planning CEO / ビジョンライター
縦型グルメSNS「Popdish」CEO(Chief Eating Officer)
nobu@nobuplanning.com
https://twitter.com/meshiran_nobu
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