【詞】春の名前
軋んだ冬のブランコに名前を落としてきたらしい
そのまま遠くへ来たもので、心配そうな君
隅々まで名前のある世界にもうすぐ春の兆し
浮かない顔をする君にも、そのうち
春は来るからさ 心配しないで
道は延々と柔らかい言葉だけ映すけれど
君の中では、そういうことじゃないだろうことを分かっている
君の名前を見つけることが宿命なんだと思っている
春の兆しを見つけたときは孤独ではないと思ってほしい
今、目に入る甲高いノイズを抜け出して
空回りの街の混沌、掻き消してみせるから
君の心が映す悪夢をここで忘れられるように
光の中で望みだけを照らし出すから
おののかないで、道はそこから柔らかい方角を示すけれど
君の中では、そういうことじゃないだろうことを分かっている
君の名前はずっと昔の冬の景色を漂っている
春の兆しを見つけたときにイニシャルがふと浮き上がってくる
今、目に入る甲高いノイズを抜け出して
空回りの街の混沌、掻き消してみせるから
君の心が映す悪夢をここで忘れられるように
光の中で望みだけを照らし出すから
過去を回想する、その中に君は居るんだ
ここで記憶を書き起こしたら
見えてくるんだ、君の記憶も、
加速する夜の轟音に思い出す君の記憶は
紛れもなく僕を色めく春だったんだ
君の名前を見つけることが運命なんだと思っている
二人だけの春の日に名前を呼びあえるよう
詩集"あのひと" より
改めて、濃い文章だなと思います
少しショートショート感もありますね
"冬のブランコに名前を落としてきたらしい" という入り方もすきです
詞の世界観がアニメの中のようで、読み進めていくほどエンドロールに差し掛かっていくような、そのような感じもします
"心配しないで、道は延々と柔らかい言葉だけ映すけれど
君の中では、そういうことじゃないだろうことを分かっている"
ここもすきです、"そういうことじゃない" というのは、自分と重ねているところもあります
"紛れもなく僕を色めく春だったんだ"
ここは、この詞における到達点だと考えています
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