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【ショートショート】夢の中



夢の中、線のように不確かな海辺で、ルアーを付けた釣り糸を水面に垂らす
一握りの憂鬱と釣り上げたいのは、魚ではなく言葉
ふいに潮風に似た風が髪を揺らし、風の行き先を目で追えば、
遠くに走り書きのような高層ビルの輪郭が見える
暮れると夜は無機質じみていて、
かつてときめいた記憶の隙間から
美しさを思い出せば、グラフィックで飛び出してくる

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思い出せば、それ以上は砂上の楼閣
砂を握るように恋を見つけ、
独り言を言えば、より砂上の楼閣
掌にふと掴んだ永遠も
落とせば、跡を残さず砂に紛れる
昼間は物事の中間で、影だけの楼閣を期待させる

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ペンで憂鬱を描いてみるも
心にひそむ何を描こうか迷う
夢の中の川を辿ればすぐに行ける都会も
目覚めれば、砂漠を歩くようなもので、
時折、石を蹴る空想から
「現実」と言い切ってみれば、
砂漠の中から音だけの汽車が聞こえてきて、
踏切のような場所からひたすら待ってみる

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影だけを見せる人が、走り書きのビルの下で、
帰路の子供のように賑わっている
賑わう声が聞こえたようで見つめればどこにもいない
砂上の夢に足跡も無く、空想を膨らませばより見える楼閣

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閲覧ありがとうございます

今回は、いつもの詞とまた違った雰囲気の、ショートショート風の文章を作ってみました

作るにあたって、原型になる詞を最初に制作し、これを小説っぽくアレンジしたら良いのではないかと思い、作ってみることにしました

読み返してみて、抽象的な文章になったと思いました、文中に"・"で区切っている箇所があるので、各"・"ごとに4つのストーリーとして読んでみてもいいですし、読み方は自由です

「夢の中」というタイトル通り、文章は"夢"をテーマにしているので、急な場面転換や、非現実感も意識していたりします
原型になった詞はまた違うタイトルを付けています
そちらはまだnoteに投稿していないので、後日投稿しようと思います

原型の詞の一部です↓


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