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風で揺れるカーテン

どうも西尾です。

今日の大阪の天気は晴時々曇・最高気温29℃(Yahoo!天気より)の予報で、暑くなりそうな一日です。

窓を開けていると風も入ってくるので未だ良いのですが、風が入ってこないと大変ですね。


風で揺れるカーテン。

自宅の窓を開けていると風が入る。

風でカーテンが揺れる。

カーテンはまるで呼吸をしているかのように、大きく膨らんでは萎み、そしてまた大きく膨らむ。

少し離れたところから私はその様子を見ている。

懐かしさが込み上げてくる。

中学校の教室を思い出した。

私が座っていたのはいつも窓際の席だった。

私の通っていた中学校は河川沿いの少し高い台地の上にあった。

毎朝の登校はちょっとした勾配を登らなければならず、今思うとそれが私の健脚を形作ったのかもしれない。

台地の上にある校舎からはすぐ下を流れる河川がよく見えた。

太平洋へと注ぎ込む一級河川だった。

河川と並行して電車の線路が走っていたり、国道も走っていた。

私は授業中もよく外を眺めていた。

授業の内容よりも、外を眺める方が楽しかった。

毎日表情の異なる川の流れに、時間通りに走る電車、時折聞こえてくるパトカーや消防車のサイレン音。

右翼の街宣車が走った時には教室中がざわめき出した。

外の景色を眺めるのが好きだった私。

教室の窓を開けると心地よい風が入ってくる。

黒板やチョークなどの教室の独特な匂いを風は打ち消してくれた。

午後からの授業が始まる。

風は絶え間なく吹いていた。

東の空から登った太陽も徐々に西の空へと傾き出した。

西日が眩しいからとカーテンを閉める。

外の景色が隠れて見えなくなった。

代わりに、カーテンが風に吹かれて揺れ出した。

カーテンの大きな呼吸で時折外を見ることが出来た。

嬉しかった。

その日の最後の授業になった。

先生が体調不良か何かで早退してしまったらしく、急遽自習時間となってしまった。

数学の教科書とノートを開いた。

シャーペンから芯を数ミリだけ出す。

右手で頬杖をつきながら、教科書のページをペラペラと意味もなくめくる。

私は二次関数のページで教科書をめくるのをやめた。

私の周りを見渡すと皆自習しているか、寝ているかのどっちかだった。

後の男友達を見てみると早速机にひれ伏して寝ていた。

私はと言うと、二次関数のページが開かれたままの教科書を他所に風で揺れるカーテンを見ていた。

カーテンが風に吹かれて呼吸をする度に私は外の景色を眺められるように、自分の机と椅子を少し窓際へ寄せた。

また風が吹く。

カーテンは呼吸をする。

強い風が吹いた。

カーテンは私を飲み込んだ。

私はすっかりカーテンに覆い被さってしまった。

でも、これで外の景色を独り占め出来ると思った。

右手で頬杖をつきながら外の景色を眺めた。

心地よかった。

自習時間になった教室は静寂に包まれており、他の教室から授業をする先生の声がかすかに聞こえてきた。

綺麗な景色を見ながら、心地よい風に吹かれて、他の教室から聞こえてくる先生の声が子守唄のようで次第に瞼が重くなってくる。

このまま眠ってしまうのも有りかもと思った。

右手で頬杖をつきながら瞼が自然と閉じようとした時だった。

誰かがカーテンをめくり上げた。

私はさっと後ろに振り返る。

そこにいたのは私の前の方に座る女子生徒だった。

彼女はニッコリと笑いながら何も言わずに自分の席に戻っていった。

私は彼女の後ろ姿を目で追った。

何のイタズラか分からないが彼女が自分の席に座った時に風が吹いた。

風で揺れる彼女の髪の毛を見て心がざわついた。

その彼女に恋をした瞬間だった。

中学生の時、確かにその女子生徒のことが好きだった。

告白も何もしていない。

誰にも打ち明けたこともない。

中学生活も残り僅かとなった中学3年の三学期。

その日は私立高校の受験日だった。

電車で試験会場のその高校まで向かい試験を受ける。

受験からの帰り、彼女と電車が一緒だった。

私は他の友人と一緒で、その彼女も他の友人と一緒だった。

帰りの電車の中では試験終わりということもあり皆眠っていた。

私の家の最寄り駅に到着するとその彼女も降りてきた。

どうも、彼女の最寄り駅は私と一緒だったらしい。

私と彼女は、そのまま電車に乗り出発する友人たちにホームから手を振り見送った。

電車が出発した後のホームには田舎の駅らしく静けさだけが戻ってきた。

駅の改札口に向かって二人で歩き出した。

先に口を開いたのは彼女の方からだ。

「好きな子おらんの?」

私は驚きと恥ずかしさで素直に答えることが出来なかった。

「うん、おれへんよ」

「そっか・・・」

また、静けさだけが戻ってきた。

改札を出て踏切前で別れた。

「私はあっちやから。また明日ね。バイバイ」

「うん、バイバイ」

彼女は踏切を渡り坂道を登っていった。

私は踏切とは反対方向へと歩いていく。

少し歩いて後ろを振り返ると、坂道を登る彼女の後ろ姿が見えた。

風が彼女を包み込むように吹いていた。

1月の風は寂しさを伴っていた。

私は直ぐにでも走り出したい気分だった。

でも、結局走り出せずに終わった。

翌日、教室の窓から入る風はいつもの風だった。

風で教室のカーテンが揺れる。

前の方に座る彼女もいつも通りだった。

そして、お互い数ヶ月後には中学を卒業してそれぞれの高校へと進学した。

あれから既に10年以上時が経った。

今日も風が吹く。

カーテンが揺れる。

呼吸をしているかのように大きく膨らみ萎んでを繰り返す。

その様子を見る私。

風で揺れるカーテンが好きだ。

淡い青春の思い出を胸に潜めながら。




以上になります。

お読みいただきありがとうございました。



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