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自分以外の命を守ることでどうにか道に迷わずにいられた
ダックスフント(ミニチュアでない)とふたりで暮らしていたとき、一緒のベットで寝ていたのだけど、ダックスは長いくせに縦にならず横になって寝るので寝返りをうつのに邪魔でした。おまけに布団の中に入っては出てを繰り返したり。
甘えるのが上手で、べたーっと身を寄せてきて重い。
ひとりで生きていたけど、ダックスがいた。
暗く孤独だったときに、ダックスの身体の重さと温かさに救われた。
必死で生きていたとき、自分以外の命を守ることでどうにか道に迷わずにいられたのかもしれない。
犬と過ごした日々があるから、この小説の主人公の気持ちがわかる。彼女も孤独で犬がいたから、守るものがあったから静かに耐えられたのだと思う。
リラの花咲くけものみち 藤岡陽子
幼い頃に⺟を亡くし、⽗が再婚した継⺟とうまくいかず不登校になった岸本聡⾥。愛⽝のパールだけが⼼の⽀えだった聡⾥は、祖⺟・チドリに引き取られペットたちと暮らすうちに獣医師を⽬指すように。
北農⼤学獣医学類に進学すると、慣れない寮⽣活が始まった。
⾯倒⾒のよい先輩、気難しいルームメイト、志をともにする同級⽣らに囲まれ、学業や動物病院でのアルバイトに奮闘する⽇々。
伴侶動物(ペット)の専⾨医を⽬指していた聡⾥だが、
⾺や⽜などの⼤動物・経済動物の医師のあり⽅を⽬の当たりにし、
「⽣きること」について考えさせられることに―。
ネガティブだった聡⾥が北海道で⼈に、⽣き物に、
⾃然に囲まれて⼤きく成⻑していく姿を描く感動作
冒頭の数ページの聡里が、頼りなくってこの子が主人公?と思うのだけど聡里がどうしてそんな感じになってしまったのかわかると、聡里が孤独に犬と過ごした日々に、わたしとダックスのそれが重なり惹き込まれていきました。
わたしの好きな動物系でお涙ちょうだい的な感動物語かな、と手にとった本書だったけど、全然違いました。甘くない。キラキラしていない。
命って厳しく、きれいなだけじゃない。1つの命を助けるために犠牲があるし、獣医は血や内臓、子宮、排泄物、動物の内部との格闘だ。それは凄まじくどぎつい描写もある。
動物はかわいいだけでない。
ペットとしての伴侶動物だけでなく牛や馬といった経済動物の命、食べることと人の生活、畜産業の苦境も描かれている。
聡里は、人付き合いの距離感もわからないのだけど抱えているものがあるのは聡里だけではありません。北海道で知り合う人々はそれぞれの想いを背負っていて。
なにもない人なんていない。
聡里が迷い悩み、立ち止まりながら変わっていくのが頼もしく清々しい。冒頭の聡里とラストの聡里は、別人のよう。
北海道の美しい自然、風景、花も楽しめてそのシーンに効果的な花言葉にどきりとします。
ナナカマド 私はあなたを守る
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ハリエンジュ 頼られる人
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ラベンダー 不信感 あなたを待っています
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マリーゴールド 勇者 健康 変わらぬ愛 生命の輝き
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クリスマスローズ 私を忘れないで
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ガーベラ(白) 希望
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白樺 あなたを待っています
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リラ(ライラック) 初恋 友情 青春の喜び 思い出
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花の言葉は聞こえないから美しい。
健気にそっと咲いて、それをその佇まいで伝える姿勢がいい。
無口な言葉があるから、明るく険しいけものみち。
最後の数行が潔く希望があります。
前に進んでいこう、と思えます。