【読書記録・エッセイ】めんどくさがり屋、本屋をめぐる。
こんにちは。長尾早苗です。
やっと晴れましたね。神奈川はあまりにも台風がひどくて、他のところに住んでいる詩人たちによくしてもらい、オンラインイベントに誘ってもらったりしました。
晴れているのを生かし、本屋めぐりに行ってきました!!
今週の読書記録も載せておきます!
*今週の読書
【テレビシリーズ】光る君へ 第33週 式部誕生
職場として藤壺は合わない……
執筆場所としての藤壺から、家で書いた方がはかどることで4日で紫式部は帰ってきました。忙しい女房社会、彰子に仕えて書くこと。物語を書くことが作家の使命とするなら、他の日常のことに構っていられないのが紫式部の本音だったのではないでしょうか。
【書籍】梁川梨里『蝶番』七月堂
喪うこと、おわりということ、生まれる、生ききったと思えること。
すべての物事にははじまりとおわりがあり、その二つはよく似ていて、地続きではなく一つの扉を結ぶ蝶番のようなものがあるのかもしれない。
その扉をつなぐ「あわい」を描いていてとてもよかった。
【書籍】梁川梨里『ら・ぶろんしぇvol.00』
物語を語る人、作る人、読む人、そして物語を世に送り出す人がいる。
究極の結論を言えば、生まれて死んでそれができてよかったね、となるけれど、その「もがき」がないと詩は生まれない。梁川さんの詩を書く・編む・まとめる過程には、いつだって「もがき」「産み」「苦しむ」ことがあるような気がしている。
なまなましさ、誰にもわからないひそやかな生。
【書籍】104hero『ニュースの時間』碧天社
朗読して声に出してみたいことばたち。秋のはじめ、重たくけぶったくもりの雨の朝に読むと、わたしもがんばろうと思える。
平易なことばで書かれているが、恋すること、非日常と日常、光と影を書いていてとてもよかった。
【書籍】杉本真維子『杉本真維子詩集』思潮社
誰にもほめられなくとも、誰にも拍手されなくても、淡々と詩に立ち返ればよい。
詩人が詩に立ち返る時とはこういうことではなかったか。2014年に『裾花』を読んで、その問責のすさまじさに、ああわたしと同じ人間が詩人として詩を書いているのだと思い、ひどく安心した。適切な倹約と自力で歩き、仕事をしていくことの冷静さと、落ち着き。詩を書くということは、自身が詩に何度も呼ばれるということを意識的に繰り返す営みにほかならないのだと思う。上手い詩、下手な詩は関係なく、自分の中にどれほど詩的言語がたまり、その内在していることばを詩として外にだせるか。それに至っては「待つ」という仕事がとても重要なことに感じた。
【書籍】カニエ・ナハ『馬引く男』
カニエさんの詩は、カニエさんに会うことで初めて成立する。普段着として何かに絶望し、詩を捉え、淡々と生きる営みを詩的言語として享受し、味わうこと。過去の詩人の詩を読み。解釈し、自分でことばにして辞書で引き、きちんと本にすること。カニエさんの詩は人に「会う」ことで成立している。交流のあたたかさと冷淡に貫く姿勢。
【Podcast】文学ラジオ空飛び猫たち 番外編第54回「どうして北欧言語の翻訳家へ?」(ゲスト:翻訳家 枇谷玲子さん)
北欧の国の文化、ことば、生き方について。
北欧の国のことばを学べる学校が東京にはないというのが新発見でした。
日本の学校で教わる北欧の福祉制度、歴史、文化、そういったものに生身で理解を示そうとすると、ことばを学ぶよりほかにないのだろうなとも思いました。魅力的な北欧の文化です。
【Podcast】真夜中の読書会~おしゃべりな図書室~「卒アルがなくなる日。アイドルだけじゃない「ディープフェイク犯罪」の脅威」
今回はとっても重ためな話題。わたしたちが学生だった頃は卒アルがうれしかったし、今でも時々見返します。FacebookやInstagramでつながっていることは知っているけど、なんか懐かしくなってしまうんですね。その卒アルが犯罪に使われてしまう、、しんどいです。n番部屋のチャットルームは犯罪の温床になってしまうこと、大人たちの業がすべてそこに現れてしまっているのかなと思いました。
【テレビシリーズ】新宿野戦病院#10
コロナで参ってしまった時代がまたやってくるとしたなら。
ありえそうな話で、ありえない。でも、あるかもしれない。5日間で発症したのちタイムリミットが来てしまう。ヨウコ先生がまごころに帰ってきて、未知の感染症ウイルスと聖まごころはたたかうことになります。
新宿の赤ひげ親子として少しずつ名高くなっていくヨウコ先生と、パンデミックが再びやってくること。医療機関もまた大変な状況になってしまうことは考えたくない……。
【テレビシリーズ】三ツ矢先生の計画的な餌付け。最終話
若いっていいなあ。パートナー選びは、どうやって自分が長く乗れるジェットコースター選びだと思うんですが、この終わり方もパートナーとの暮らしは平和に続くということを予感させてくれてとてもよかった。
胃袋を掴むって古いことばだと思っていたんですが、そうかこういう形もあるんですね。
【書籍】ケイトウ夏子『水路 vol.3』
ぜいたくに詩人の日常を詩としてとらえるには「半夏」がいいかもしれない。
意図的に書かれたのか、三行ずつで一編の詩、というのも印象的だった。
【書籍】花潜幸 草野理恵子 青木由弥子 ゲスト:紫衣『Ririkarakusa 18』
手紙をほどくように詩を読み、詩にふれることのぜいたくさを一身に味わうことのできる詩誌。詩人が生きることは同時に、生き方として「詩」があるように思う。
【書籍】七月堂『七月堂の詩集1 やさしくてらす』
優しさは循環していく。すべてがめぐりめぐって、一人の身体におさまっていく。
七月堂から出版された詩集の詩のアンソロジーです。西尾勝彦さんの詩は忘れられないように思う。
*近況のようなもの
本屋めぐりに水曜日からでかけていました!お仕事!
まずは青葉区奈良町の「昭和書房」さん。
町の本屋さんとして根を下ろし、文房具や野菜まで、生活用品の多くを取り扱っています。
次の日は七月堂さん。
ゆったりとした和やかで穏やかな時間を過ごせたように思います。ゆったりのんびり、贅沢な時間でした。
ファミリー、ですね。
七月堂さんに行ってから、渋谷〇〇書店さんへ。
店員さんがみんな本を読んでいるのが印象的な書店さん。
最後に今週のしめくくり。半年ぶりに機械書房さんへ。
書店めぐりをしていて思ったことは、わたしはピルの誤った処方があった半年ほど、自分の体も心もいためていたのだということ。
わたしにとって本を読むこともドラマを見ることも感想文を意識的に書くことも、ラジオを聞くことも音楽を聞くことも、
自分が今日より明日、明日より明後日、ちょっとずつでも気分よくいられるためのおまじないだったんです。
半年、わたしは怒りっぽかったし、随分と友達に頼ってしまっていたし、何より自分のことが許せなかった。
病気になってしまうのは仕方ないよ、病気ってそういうもの。
だからこそ、回復する時間も回復するために選ぶ方法も、自分のためにあるものだったりする。
機械書房さんでfuzkueさんを知ることができたのも、fuzkueさんの音楽に夢中になることも、
ラジオを生活に取り入れることも、全部自分のために、自分の体が疎外されないと思ったこと全部だったんですね……しんみり。
わたしにとって書くことは生きることです。だからこそ、めんどくさがることも、休むことも、誰かに会いたいと思うことも、誰にもわからないことだけどわたしだけにはわかってあげられなくちゃいけないことだったんだなと今は思う。
半年間おつかれ、わたしと思いながら、明日も気分よくいられますように。