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私の詩集1

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2024年1月の記事一覧

〔詩〕棘と毒

〔詩〕棘と毒

約束して
もう嘘はつかないと

嘘つきなあなたにそう迫るのは
罪悪感に棘と毒を仕込むため
いい人でいたいあなたの
アリバイのような罪悪感に

約束を破るのは簡単
チクチクとと胸を刺す痛みも
きっとあなたには適度な刺激
だけど
その先端の毒をあなたは知らない

その小さな傷口から
ゆっくりと毒はまわっていく

あなたはいつ気付くのだろう
自己満足の優しさでは覆いきれない
醜く腐敗した自分に
その時わ

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〔詩〕旅人

〔詩〕旅人

途方に暮れるのも悪くない
この美しい星で

壊れたタイムマシンは
もう時空を超えることはない
これも運命なら
受け入れて笑おう

吹き抜ける風は清らかで
流れる水は澄んでいる
この星がこんなにも美しく
こんなにも静かだなんて

現在でも過去でも未来でもない
時の狭間で揺れながら
この星の長い歩みを思い
深い深い息をした

〔詩〕雑草

〔詩〕雑草

雑草を抜く
深く固く伸びた根の
生への執着に辟易しながら
低くしゃがみ込んで
黙々と抜いていく

蕾をつけた雑草に
思わず手を止めるのは偽善
蕾は花となり種をつけるから
見逃せるはずがない
すうっと息を一つ吸い
頭を空っぽにして引き抜く

命の重さは同じ
それは綺麗事なのかも知れない

爪に入り込んだ土を
ゆっくり丁寧に洗い流しても
石鹸の香りがする掌には
まだ穢れが染み付いている

〔詩〕追憶

〔詩〕追憶

昔二人で見に行った映画を
今ごろテレビで放映だって
捨てられなかった写真を
不意に見付けてしまった気分

あの頃の私はもういない
粉々になった心は再生し
ずいぶん逞しくなったけど
バカみたいに彼を信じていた
真っ白だった心はもうない

並んで座った映画館
同じところで笑って
同じところで涙ぐんで
そんな二人なら大丈夫だなんて
根拠のないオマジナイ
そんなものに
縋っていける訳がなかった

今の私を

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〔詩〕お餅

〔詩〕お餅

白くて丸くて柔らかいお餅は
味噌汁でもお吸い物でも
上手に馴染んで絡み合って
お椀の中でゆうらりゆれる

甘いお汁粉だけじゃない
出汁でも醤油でも砂糖でも
ちゃんと美味しく出来るのは
相手を選ばない懐の深さ

ふうふうしながら
伸びるお餅をしっかり味わう
しっかりお餅の味もして
熱くて美味しくて泣きそうだよ

私の心も
こんな風なら良かった