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ある夏の蒸し暑い夜、 コンビニからでるとやけに空が暗かった。 真夜中とはいえ今日は満月で、 夜道とはいえぼんやりと明るかったはずである。 見上げると月をさえぎるようにして クジラが空を泳いでいた。 ぼーっと見上げているとふとクジラと目が合った。 「アイスは買ったかい?」 クジラは言った。 そう言われアイスを買い忘れていることに気付き、 再びコンビニに戻った。
ある日の朝、普段通りにコーヒーを 淹れようとキッチンに立った。 カップに注ぎ終わったとき、 わたしはふと冷蔵庫に貼ってある小さな写真に目を留めた。 それは、別れたばかりの恋人との、 2人で撮った喫茶店での写真だった。 わたしは懐かしく思い出し、またその店に行きたくなった。 仕事が終わり、わたしはその喫茶店に足を運んだ。 店内には懐かしい雰囲気が漂い、 わたしは昔の他愛もないことを色々と思いだしていた。 注文したコーヒーが届き、いつもはいれない砂糖を、 スプーンでく
春の朝、小さな毛虫は草の上で目覚めました。 彼女は周りを見回して、 美しい色の花々と葉っぱたちに囲まれていました。彼女は幸せでした。 毛虫は何か新しいことを始めることを決めました。彼女はずっと前から夢見ていた翼を持つために、たくさんの葉っぱを食べ始めました。 彼女は一心不乱に食べ、成長していきました。 やがて毛虫は、彼女が心の底から望んでいた翼を手に入れました。 彼女は自由に空を飛び、花々の香りを楽しむことができました。しかし、彼女は大切なものを失ったことに気づきま
紙でできた世界に住む人々がいた。 彼らは紙でできた家や家具、衣服を身に着けて暮らしていた。 ある日、彼らの住む世界に異変が起こった。紙が薄くなり、 破れやすくなったのだ。 人々は困惑し、何が起こっているのかを探ろうとしたが、 答えは見つからなかった。 そんな中、ある人が 「紙を作る人たちがいるはずだ。彼らに聞いてみよう」 と提案した。 人々は協力して、紙を作る人たちの居場所を見つけ出し、話を聞いた。 すると、彼らは 「紙を作るためには、木が必要なのだ。しかし、 木
人々が寝静まったある夜、道路わきのカラーコーンたちが話をしていた。 ひとりのカラーコーンがいった。 「俺たちの存在理由とは何だろう?毎日車にぶつけられそうになりながら立っているだけじゃないか。」 するともうひとりのカラーコーンが 「俺たちはただの目印だと思われている。でも実は、俺たちには秘密がある」と他のカラーコーンたちに話し始めた。 「なに?秘密?」 「そうだ。じつは俺たちは宇宙からの侵略者を追い払うために設置された 防衛システムの一部なんだ」 他のカラーコーンた
ある博士が、自身の研究室で革新的な3Dプリンタを使って、新しいロケットの設計と製造を行っていた。 しかし、ある日、彼の助手の一人が研究室を裏切り、博士の設計図を盗み出してしまった。 博士は助手の裏切りにショックを受けたが、決意を固めて自分のロケットの完成を急ぐことにした。 一方、助手は博士の設計図を使って自分のロケットを急いで製造していた。彼は博士に先手を打たれないよう、あらゆる手を使って自分のロケットを完成させようとした。 競争は激化し、博士と助手はそれぞれのチーム
やたらと目がかすむなと思い、眼鏡をかけようとしたが カチカチとすべってかけられない。 どうにもあたまがくらくらする。 洗面所に行って鏡を見るとあたまが金魚鉢になっていた。 信じられないがどう見ても金魚鉢だった。 まあるい金魚鉢にいっぴき金魚が泳いでいた。 なんということだと思ったが出社時間が迫っていたのでそのまま 服を着替えて出社した。 周りの目が気になったが、電車の中でも職場でも、誰も特に気にする様子 はないようだった。 何とか一日の仕事を終え、 とりあえず家に
酔っぱらった男がマスターにグラスを要求した。 マスターが手渡すと男は千鳥足で戸口から出ていき、 路地に出ると乱暴に満月をひっつかみ グラスに入れた。 そのまま戻ってくると、マスターに 「これについでくれ」と言った。 マスターはウィスキーを注いで混ぜようとしたが マドラーが月に触れると、 「カチン」と音がして月は卵の殻のように割れてしまった。 「お客さん、駄目だよこれ。中が空っぽだ。」 酔っぱらいは言った。 「かまわんよ、そのままくれ。」 酔っぱらいはそのままくし
うだるような暑さだった。 この暑さによくそんなに体力が持つなという勢いでセミが鳴いている。 これ以上ないほど温められた空気が、 呼吸をするたびに肺に入っては出ていき息苦しさを感じる程だった。 わたしは網戸の近く、夏の初めに敷いたい草のラグに横になり、 少しでも熱を逃がそうと、肌の触れ合う面積をできるだけ少なくするように 横になっていた。 風はなかったが、蚊取り線香のけむりが網戸を通り、 拡散されて消えていった。 い草と蚊取り線香が混じった夏のにおいを感じながら 目を閉
まわりに誰か人がいるとき、わたしは決して彼女を見ることはない。 しかし、彼女はわたしをじっと見ている、 一瞬たりとも視線を逸らすことなくじっと見ているのだ。 すべてを見透かしたような虚ろな目で。 わたしは説明してやりたい、大した問題ではないのだと。 不安になる必要はない、このつかの間の行為はお前以外の誰とでも 出来るものではないのだと。 お前にとってはどうでも良い事でも、私にとってはすべてなのだと。 人は私を先生と呼び、敬意を払い、称賛する。 はじめは嬉しかった。
ある晩、彼は突然目が覚めた。時計を見ると、深夜の3時だった。 彼は何か不気味なものを感じ、寝室を出てリビングルームに向かった。 すると、そこには見知らぬ人物がいた。彼は怖がりながらも、 その人物に声をかけた。 「あなたは誰ですか?何をしているんですか?」 すると、その人物は微笑んで答えた。 「私はあなたの夢の中に現れた人物です。私たちは、あなたの潜在意識が具現化した存在です。」 彼は戸惑ったが、その人物は続けた。「私たちはあなたの内面に潜む問題や欲望を表現するために
ご主人がネコを借りてきた。 ただ、その家にはすでにネコがいたのである。 借りてきたネコは、それはもう大人しく、愛想がよく、 礼儀の正しい猫であった。 面白くないのは元からいたネコである。 その飼いネコはいたずらし放題、飼い主に呼ばれてもそっぽを向き、 好きなところで爪を研ぐとても手のかかるネコであった。 更に面白くないのは、飼い主がそのどちらのネコも同等に 可愛がったのである。 もちろん飼いネコは大変ショックであった。 あまりに悔しかった飼いネコは、借りてきたネコ