『夏の遠雷』
うだるような暑さだった。
この暑さによくそんなに体力が持つなという勢いでセミが鳴いている。
これ以上ないほど温められた空気が、
呼吸をするたびに肺に入っては出ていき息苦しさを感じる程だった。
わたしは網戸の近く、夏の初めに敷いたい草のラグに横になり、
少しでも熱を逃がそうと、肌の触れ合う面積をできるだけ少なくするように
横になっていた。
風はなかったが、蚊取り線香のけむりが網戸を通り、
拡散されて消えていった。
い草と蚊取り線香が混じった夏のにおいを感じながら
目を閉じていると、遠くから、乾いた地響きのような音がした。
雨のにおいとともに、網戸を湿った風が通り抜けた。