『金魚鉢の男』
やたらと目がかすむなと思い、眼鏡をかけようとしたが
カチカチとすべってかけられない。
どうにもあたまがくらくらする。
洗面所に行って鏡を見るとあたまが金魚鉢になっていた。
信じられないがどう見ても金魚鉢だった。
まあるい金魚鉢にいっぴき金魚が泳いでいた。
なんということだと思ったが出社時間が迫っていたのでそのまま
服を着替えて出社した。
周りの目が気になったが、電車の中でも職場でも、誰も特に気にする様子
はないようだった。
何とか一日の仕事を終え、
とりあえず家に帰ってこの状況を整理したかった。
そんなことで頭がいっぱいで、速足で道を歩いていた男は
小石につまづいてしまった。
「あっ。」
と男が叫ぶと同時に、ガシャーンとガラスが割れる音が男の耳にも届いた。
と同時に視界がぽーんと飛んで
自分の体が遠くに横たわっているのが見えた。
男は意識を失った。