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【2024年版】なぞりのつぼ −140字の小説集−

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読めば読むほど、どんどんツボにハマってく!? ナゾリの140字小説特集! 2024年も笑い、足りてる? ※無断転載および転載は原則禁止です。
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2024年5月の記事一覧

140字小説【意味を知らずして】

140字小説【意味を知らずして】

「あっ、何か食べてる。一口ちょうだい」
「はいよ」
「センキュー……うん、美味しいっ!」
「でしょ? 同じお菓子でも、人に貰うとなぜかより美味しく感じたりするよね」
「わかる! チョコレートとか、キャラメルとかね!」
「……その例え、おじいちゃんおばあちゃんの前ではNGね」
「えっ、何で?」

140字小説【おいと様】

140字小説【おいと様】

「『通してください!』『通しませぬ!』『私は何としてもその先に行かねばならぬのです! だからお願い……今すぐここを通して!』『何と申されましても、先の割れた今のアナタをお通しするわけには断じて参りませぬゆえ!』」
「さっきから一人で何やってんだ?」
「針穴に糸が通らなくてっ……!!」

140字小説【いっそ最悪にしてくれ】

140字小説【いっそ最悪にしてくれ】

「今朝、テレビで占いコーナー見てたらさ、自分の星座が最下位から二番目だったんだよね」
「そりゃキツいね。でも最下位よりはマシじゃない?」
「いや、最下位の方がマシだって! だって最下位はラッキーアイテムとか教えてくれるけどさ、最下位から二番目はそういうのないじゃん? どうしろと!?」

140字小説【体がついていけない】

140字小説【体がついていけない】

「ママ弱すぎる! おじいちゃん、一緒にゲームやろ〜!」
「おじいちゃんには難しすぎるわよ」
「ワシをナメるな! これでも平成生まれ……ゲームと育った世代の実力をとくと見せてやろう!」
「大丈夫ですか? 最近のゲームは、意識を仮想空間に飛ばして遊ぶんですよ?」
「体がついていけんのか……」

140字小説【切り替えが大事】

140字小説【切り替えが大事】

 スマホのロック画面を彼女に覗かれて……

「誰この女?」
「どう見ても二次元だろ」
「そりゃ画面だからね」
「いや、そういう意味じゃなくて! どう見てもアニメのイラストだろって!」
「そんなこと聞いてないの。この女について聞いてんの!」
「だからぁ!」

 もう面倒くせぇから初期画像に変更した。

140字小説【中身あっての人間】

140字小説【中身あっての人間】

「やっぱり人間、見た目より中身が大事だよね」
「そうかな? 中身なんて案外分からないもんでしょ」
「レントゲン見れば分かるよ。タバコ吸って肺が汚れてないかとか、胃は正常かとか……中身を見るだけで、その人がいかに健康に気を遣っているかが分かるからね」
「医者ってみんなそういう感覚なの?」

140字小説【カクシツ専門医】

140字小説【カクシツ専門医】

「もうすぐ父さんが還暦を迎えるんだけど、今さらどうやってお祝いしたらいいのやら……」
「そういうときは、やっぱ旅行でしょ。こことかオススメだよ」
「何これ、ドクターフィッシュ体験?」
「水槽に足を入れるだけで、お魚さんたちが角質を食べてくれるんだって」
「それで父さんとの確執も取れる?」

140字小説【キング・オア・チキン】

140字小説【キング・オア・チキン】

「『牛丼《王様盛り》、挑戦者求厶!』……だってさ」
「よし、じゃあチャレンジするか!」
「じゃあ行こうか」
「えっ、マジ?」
「お前が言ったんじゃん」
「いやいやいや、冗談冗談冗談! 今はちょっと腹の調子が……っていうか、昨日テレビで見てから焼き鳥とか唐揚げの気分だから……」
「チキンかよ」

140字小説【魂が震えた瞬間】

140字小説【魂が震えた瞬間】

 ある朝目が覚めると、俺は魂の姿で自由に肉体を出入りできるようになっていた。
 なぜこうなったのかは分からない。だがそんなことは、この際どうでもいい。
 今の俺なら、大好きなアイドルの体に入って、あんなことやこんなことも……ウヒヒ――
 
 ――彼氏がいたので、俺はそっと抜け出してきた。

140字小説【中身がなければ詰めればいい】

140字小説【中身がなければ詰めればいい】

「いいか? 今のお前らは《役者の卵》なんて可愛らしいもんじゃない。ピーマンだ! レンコンだ! 要するに、まだまだ演技がスカスカだって言ってるんだよ! ……悔しいか? だったら中身を詰めろ! 肉詰めにでもカラシ蓮根にでもなって、皿の上でメインを張れ!」

 それが亡き監督の言葉だった。

140字小説【人ん家には人ん家のルールってもんが以下略】

140字小説【人ん家には人ん家のルールってもんが以下略】

 断れない性格のせいで、お隣に住む奥さんの仕事が終わるまでお子さんを預かることになった。あいにく子どもの相手は苦手なんだが……

「……何だ、お菓子か? だったらその箱から適当に取ればいい」

 ガサァッ!

「『掴み取れ』とは言ってないぞ」
「いつもママがやってる」
「ここはスーパーじゃない」

140字小説【今日に限った話じゃない】

140字小説【今日に限った話じゃない】

 息子との買い物中……

「よいしょっ……と」
「持つよ」
「いいわよ、これくらい。もう慣れっこだから」
「いいから。母の日くらい手伝わせてよ」

 いくつになっても我が子は我が子。私を気にかけてくれるのは嬉しい。
 あとは、せめて毎日お手伝いしてくれたらもっと嬉しいんだけどねぇ……三十路なら。

140字小説【コメント回収はほどほどに】

140字小説【コメント回収はほどほどに】

 食事するだけの生配信をしたら、一部の視聴者から『食事中くらい帽子を取れ』と言われ、帽子を撮ったら『髪の毛ボサボサ』と言われ、整えてきたら『長いから切ったらどうですか』と言われ、坊主にしたら『似合わない』とか『前の方がよかった』とか……お前らのせいで料理が冷めちまったじゃねえか!

140字小説【もう離さない】

140字小説【もう離さない】

 イチャイチャしようと私が不意打ちで背後から抱きついたら、旦那が思いっきりオナラした。
 急いで離脱を試みる私。だけど旦那は私の両手をガッチリ掴んで……

「なぁ、覚えてるか? 俺がプロポーズしたときに言ったこと」
「もう二度と離さない、でしょ? それは嬉しいけど、今だけは……オゥエッ」